前書きなど
まえがき(抜粋)
これは江戸時代初期の土木技術者砂村新左衛門の生涯を綴る最初の書になるはずである。
徳川家康が天下統一を完成させようとしていたちょうどその頃越前に生まれ、日本各地を駆け巡って新地開拓に情熱を注ぎ、武蔵の地でその生涯を終えた砂村新左衛門・・・その名を知る人は多くない。
前半では比較的分かりやすい形で新左衛門の生涯を物語風に書いてみることにする。新左衛門に関する史料は多く残っていない。そこで私は可能な限り合理的な推理によって「点」を結んで「線」にし、若干の時代背景を加えることで「面」にすることを試みた。
そして後半では、ある程度のまとまりを持ったエピソードについて、立証しながら論文風に書いてみる。
「物的証拠から確かに言えること」、「状況証拠からほぼ言えること」、「証拠がなく想像に過ぎないこと」に区分して説明するようにした。いずれもこれまでの説よりは確かな新説が展開できていると自負している。
なお、主な古文書についてはその翻刻(活字への変換)および原典コピー(写真)を末尾の資料編に関係する部分をできるだけすべて示した。結果的に資料の紹介に多くのページを割いたが、これらは限られた場所に行かないと閲覧できないものも多く、「是非自分でも読んでみたい」という読者の要望にも応えるべきと考えたからである。
溝手 正儀