紹介
拉致問題を風化させてはいけない
故郷、家族、奪還、主権といった日本国内で強調される観念のみならず、アメリカ等の民主主義国家が敏感な「普遍的人権」という価値観も見据えながら日本外交最大級の難問の構造を考察するケーススタディ
「拉致」が問題として世界に知られるまでに、誰かの意図があり、事実の発生があり、その事実が認識されねばならず、誰かが立ち上がり、誰かがそれを重視し、あるいは軽視し、誰かが省かれ、運不運があり、誰かの策が実り、あるいは実らず、相手の戦略と戦術があり、どこかで膠着し、どこかで突破があり、実現されない目標が残り、他の目標との衝突があり、ドラマの登場人物と観客が変わっていく。
日本人がまだ十分その複雑さを意識できていない、この入り組んだ過程と、この「解決」の難しさと、この問題に世界が固執しなければならない理由を分析する。
目次
■ 目次
序
第一部 開始
I. 背景
II. 条件と意味
III. 安明進の証言
IV. 浮上
V. 模索
VI. ポーランドからの手紙と金丸訪朝
VII. 社会党の役割
VIII. 金丸信の諸問題
IX. 正常化交渉の開始と中絶
X. 核疑惑への対処と対米協調(1993〜94年)
XI. 米支援問題(1995〜96年)
XII. 拉致被害家族の連帯
第二部 風穴
I. 日本人妻里帰り
II. テポドンと村山訪朝
III. 官僚外交
IV. コンフィデンスマン
IV. 小泉訪朝
V. 第一歩
第三部 第二歩未満
I. Triage—被害者類型
II. 成果の防衛
III. 行く者・来る者
IV. 「死者」の安否
V. ミサイルと核
後記