目次
はじめに
第1部 サイモン&ガーファンクルの時代
水曜の朝、午前3時 Wednesday Morning 3, a.m.
サウンド・オヴ・サイレンス Sounds of Silence
パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム Parsley Sage Rosemary and Thyme
ブックエンド Bookends
明日に架ける橋 Bridge Over Troubled Water
第2部 ソロ活動、その他
ポール・サイモンのソロ活動
ポール・サイモン Paul Simon
ひとりごと There Goes Rhymin' Simon
時の流れに Still Crazy After All These Years
ワン・トリック・ポニー One Trick Pony
ハーツ・アンド・ボーンズ Hearts and Bones
ポール・サイモンのソロ活動
グレイスランド Graceland
リズム・オヴ・ザ・セインツ The Rhythm of the Saints
ザ・ケープマン Songs from the Capeman
ユー・アー・ザ・ワン You're the One
サプライズ Surprise
アート・ガーファンクルのソロ活動
天使の歌声/エンジェル・クレア Angel Clare
愛への旅立ち Break Away
ウォーターマーク Watermark
フェイト・フォア・ブレックファスト Fate for Breakfast
シザーズ・カット Scissors Cut
レフティ Lefty
心の詩 Songs from a Parent to a Child
心の散歩道 Art Garfunkel with Maia Sharp & Buddy Mondlock
魅惑の宵 Some Enchanted Evening
ベスト・アルバム、ライヴ・アルバム、映像作品など
付録
年譜(1941−2009)
参考資料について
あとがき
索引(人名・グループ名/楽曲・アルバムなど)
前書きなど
はじめに
1960年代半ばから70年頃まで、ビートルズやストーンズ、あるいはボブ・ディランなどとならんで世界的人気を誇ったヴォーカル・デュオ──それが、サイモン&ガーファンクルである(以下、適宜「S&G」と略す)。しかし彼らが発表したオリジナル・アルバムは、1964年のデビュー・アルバム『水曜の朝、午前3時』から70年の『明日に架ける橋』までの計5枚にすぎない。この数はビッグ・スリーともいうべき冒頭の三者にくらべると、圧倒的な少なさである。日本でも話題となったアメリカン・ニュー・シネマの傑作『卒業』のサウンドトラック(1968)や50万人の聴衆を動員したライヴ・アルバム『セントラル・パーク・コンサート』(1982)、そして数年前公式アルバムとしてCBSソニーからリリースされた『サイモン&ガーファンクル ライヴ・フロム・ニューヨーク・シティ 1967』(2002)、さらには2003−04年におこなわれた再結成ライヴ・ツアーを記念して発売されたCD2枚組『サイモン&ガーファンクル オールド・フレンズ ライヴ・オン・ステージ』(2005)などを含めても、その数はせいぜい10枚にも満たないのである。
彼らがデュオ活動中に制作した5枚の公式オリジナル・アルバムは、具体的には次のようなものだ──
1964年デビュー・アルバム『水曜の朝、午前3時』
1966年シングル〈サウンド・オヴ・サイレンス〉に火がついて急遽制作された『サウンド・オヴ・サイレンス』。S&Gがはじめて制作の主導権をにぎったとされる『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』
1968年アナログ盤A面においてコンセプト・アルバムを意図した『ブックエンド』
1970年当時レコード史上空前の売り上げ枚数を記録した『明日に架ける橋』
このデータをみるとほぼ1年半に1枚というペースである。S&Gというデュオは作品の量こそ少なかったが、音楽の質は高かった。私のS&G体験は、解散後のポール・サイモンのソロ作品に感銘をうけ、そこから逆にポールの作品をS&G時代へとたどりなおして聴くというものだった。『ポール・サイモン』(1972)から『ユー・アー・ザ・ワン』(2000)、そして最新作『サプライズ』(2006)まで、ポール・サイモンの70年代以降のソロ活動が素晴らしかったのはいうまでもないのだが、S&G時代のポールとアートのコラボレーションにもまた別種の魅力があると気づき、いつしかS&Gの作品の1枚1枚に身をいれて聴くようになり、それらを詳しく吟味してみたいと思うようになったのである。
そんな動機にうながされて書かれた本書のおもな内容は、サイモン&ガーファンクルの全作品の解説であり、同時にポール・サイモンのミュージシャンとしての成長の軌跡を、S&G時代を軸にすえて検証したものである。構成はごく一般的に年代順とし、ポールの創作の原点であり柱でもあるS&Gの作品をまずとりあげ、その結果をふまえつつポール、アートの順に個々のソロ作品を顧みるという手順をふんでいる。全体としてはS&Gとポールのソロにかんする内容が大半を占め、実質的にポール・サイモンの音楽の全体像の考察に重点がおかれる結果になった。それはデュオにおけるポールの役割、ソロのあり方からしてごく自然のなりゆきだった。(以下略)