目次
はしがき
凡 例
第一編 酒麹専売制と酒銭管轄
序/酒麹務/熙寧の酒坊/都市の基準と指標
第二編 銅銭区北部
序/四京・京東東路/京東西路/京西南路/京西 北路/河北東路/河北西路/永興軍路/秦鳳路/河東路
第三編 銅銭区南部
序/淮南東路/淮南西路/兩浙路/江南東路/江南西路/荊湖南路/荊湖北路
第四編 鉄銭区
序/成都府路/梓州路/利州路
第五編 総合
序/鉄銭区酒銭額/まとめ
附録 『北宋の商業活動』―商税活動統計史料一覧―
前書きなど
はしがき
酒が売れるのは人々が多く集まる都市の市街地や町中であるのは今も昔も変りはない。酒のある地を訪ねて探せば町や都市に行き着くことになる。
北宋最盛期における約1,800の都市や大きな町である州県鎮市における酒販売所が酒務であるが、その販域がわずか半径10~20里に規制され、町はその町域内に限定されるので、四京・19路の南北5,300里、東西4,100里にわたる国域の酒需要に、都市や大きな町の酒務では足りず、小規模の造り酒屋である酒坊を多くの小さな町に置いている。
その夕闇の地平を俯瞰したとしてイメージすると、酒務の灯火が蛍の如く疎らに浮かび、その間隙を埋めて星屑のように二万数千、或は三万余に及んだと言われている酒坊の明かりが明滅する。
都市エリアや大きな町エリアから遠く離れて在る無数の小さな町や村の人戸にとって、酒坊は欠くことのできない存在なのである。
酒を売っていたが滅び去って久しい都市や町を探訪しようと想い立ち、些か単純ではあるが諸記録を照らし合わせると歴史の底に埋もれていた夥しい都市や町の光が浮かび上がって来ると考え、はじめ気楽に統計を手蔓に四周二万里の地平の酒務・酒坊の地を訪ねて旅に出た。やがて探索が一筋縄ではいかないことに気づかされた。準備不足の付として多大な時間を払わされ、漢文を読み解くのとは異質の方法が求められ苦労させられた。今では、そうしたもろもろのことどもも、それはそれとしてよし、としている。酒客には後悔というものがない。