目次
刊行にあたって
序言・収録凡例・目次
全図
二分図
詳細図
〔南千住/橋場/今戸/浅草〕
〔三ノ輪/日本堤/上野〕
〔駒形/蔵前/本所〕
〔上野/鳥越/浅草橋〕
〔深川/石川島/佃島〕
〔日本橋/京橋/八丁堀〕
〔佃 島〕
〔築地/新橋/浜松町〕
〔 芝 〕
〔谷中/駒込〕
〔千石/大塚〕
〔本郷/駿河台〕
〔小石川/牛込/飯田橋〕
〔千代田/永田町/大手町/丸の内〕
〔市ヶ谷/四ツ谷/麹町/赤坂〕
〔霞ヶ関/虎ノ門/芝公園〕
〔赤坂/六本木/麻布〕
〔芝/三田/高輪〕
〔麻布/白金/大崎〕
〔品 川〕
〔五反田〕
〔大 塚〕
〔早稲田/牛込〕
〔西早稲田/大久保〕
〔市ヶ谷/四ツ谷/新宿〕
〔大久保/新宿追分〕
〔千駄ヶ谷/青山/渋谷〕
〔代々木/渋谷〕
〔広尾/恵比寿/目黒〕
〔目 黒〕
総解説・総索引
前書きなど
江戸は近世都市として世界にも稀な巨大都市で、鎖国体制にありながらきわめて高度な密度と文化をもって栄えていたことはよく言われることである。その姿を描いたもっともポピュラーな「江戸切絵図」は、尾張屋板や近吾堂板など幾種類かがあり、木版色刷の美麗かつ利用に便なることによって人気を博し、今日でもよく目にすることができる。また一枚ものの絵図(地図)も数多く作成され、刊行もされたのである。浮世絵や暦などとともに、華麗な江戸のヴィジュアル文化はわれわれの目を楽しませ、またこの時代の調査研究のベースとしても重要なものである。しかしながらこうして遺された文物の多くは、同代二六十余年のうちでも後半期以降とりわけ幕末期に産み出されたものであって、初めの四半期すなわち明暦三(一六五七)年の大火以前については、この火事が都市構造と景観を一変させた画期であると言われるにもかかわらず、江戸のフィジカルな様相を直接物語る資料はまことに数少ない。
本書『明暦江戸大絵図』は、『古板江戸図集成』(全五巻)の版行を主唱し、芦田伊人とともに同シリーズの監修にあたった真山青果(作家・西鶴研究家)をして「三井文庫秘蔵の写本」と言わしめ、論考「神田のくづれ橋」の末尾に自論の最終典拠として示した大絵図であって、かつて部分的な掲載紹介はあったものの、このたびはじめて完全かつ利用に便なる形式で上梓されるものである。いずれも現在の山手線の内側をほぼ網羅する、初期江戸図としては類例のない広範囲の地を収め、とりわけ後者の図においては町名・河岸名の記載が他図に例なく詳細であり、また描図・彩色・墨跡、周域に添えられた樹木や家屋などの秀麗な仕上がりは幕府上呈本と見紛うものがあって、まさに《江戸図の至宝》と言うに相応しい。また、両図併せて明暦大火前とその後を検証しうる内容をもち、本資料は政治史・建築史・都市史上極めて重要な資料と言って過言ではない。地図資料出版を主力とする小社創業三周年にあたり、この大図をはじめて高精度デジタル撮影し、フルカラー高精細印刷に付し、最大限の可読性を保障し、索引・解説を添えた大判書冊としたものが本書である。江戸東京のオリジンな「地形」にも江湖の視線が向けはじめられたいま、江戸の黎明期に遡るミッシング・リンクのひとつである本資料の価値をご理解いただき、諸方の備用を念じる次第である。今回財団法人三井文庫のご理解を頂き完全刊行できるたことは小社のよろこびとするところである。