紹介
山川健がNHK盛岡放送局大船渡通信部の記者になって一か月ばかりの1960年5月。地球の裏側チリで起きた津波は日本を襲い、この時全国で139人、大船渡では53人の死者を数え、大船渡市はこの時全国で最も大きな被害を被った。山川健にとって、奇しくもこの津波取材が仕事の第一歩になったのだった。
そして、記者生活51年を経てこのあたりが潮時かと考え引退準備に入ったその矢先に、あの「東日本大震災」の大津波が三陸沿岸を襲ってきたのだ。
思えばこの三陸の地は津波の常襲地帯だ。それでも山川はこの三陸の地が好きで離れられないという。とりわけ岩手県南部、古くから気仙地方と呼ばれてきた主な取材範囲が大のお気に入りだったという。この地は、世界三大漁場といわれる豊かな漁場を持ち、海・山・川・里の多彩な風土・文化を持った土地柄でもある。
この地での半世紀の取材メモから、今回つぶさに目撃した被災現場の姿や課題はもちろん、震災後改めて注目された「貞観の大津波」など過去の津波の歴史、そして三陸沿岸の魅力に抱かれて生きてきた人々の様々なエピソードを、思いつくままに書き綴ったのがこの本である。
目次
発刊に寄せて
はじめに
第Ⅰ章/私の三・一一
崩落した大船渡湾口防波堤
すさまじい被災地を駆けて
壊滅した陸前高田市
津波未経験地域も襲われていた
第Ⅱ章/被災地に生きる
むずかしい予測・予報の問題など
被災直後の避難所で
犠牲者・行方不明者捜索と追い討ち津波
耐乏生活と援助の手
取材は続行
ナラの木は強い
第Ⅲ章/過去の津波を振り返る( 一)
チリ地震津波が襲ってきた
ほかにも海外からの津波が
昭和三陸大津波の衝撃
明治三陸大津波の惨禍
第Ⅳ章/過去の津波を振り返る(二)
江戸時代の地震と津波
二つの巨大歴史津波
第Ⅴ章/さんりく発 かわら版
昔むかしの三陸の海
縄文時代も盛んだった三陸の漁業
三陸沿岸の定置網
漁民たちの目じるし 五葉山
三陸の漁師画家
ペンシル型ロケットと大気球
三陸に逃げてきた地震博士
自然環境を守った闘いも
第Ⅵ章/復興と警戒の長い道のり
復興元年の年明け
再びの海
動き出した春の漁
浜が良ければ陸も良い
復興計画のスタートライン
難問山積の復興現場
二度目の冬を越して
しかし明るい話題も
まだ終わらない地震と津波の危機
地震の予知・予測への挑戦
大震災を後世にどう伝えるか
おわりに