目次
「揺さぶる絵」展への誘い(土岐美由紀)
Ⅰ. 生を見つめて
“生”の証としての人体表現 三上誠、星野眞吾を中心に(丸地加奈子)
Ⅱ. 素材と造形の探求
〈パンリアル美術協会〉の実験性 物質との関わり(丸地加奈子)
Ⅲ. 自然との孤高の対話
丸木位里 前衛日本画の先駆者(永井明生)
岩橋英遠 孤高の眼ざし(土岐美由紀)
Ⅳ. 反骨の画家─中村正義と片岡球子
中村正義 突風の如く駆け抜けて(大野俊治)
中村正義《源平海戦絵巻》 異例づくめの代表作(鶴見香織)
片岡球子 自己流に彩る日本画(土岐美由紀)
Ⅴ. 逸脱する日本画
トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展 明日の日本画を求めて 次代へつなぐ、星野眞吾と高畑郁子からの贈りもの(岡田亘世)
戦後日本画関連年表
出品リスト
前書きなど
ごあいさつ
戦後、日本画第二芸術論さえ唱えられ、社会や価値観の変革の波にさらされながら、日本画家たちはリアルで強靭さをそなえた絵画表現を求めて、赤裸々な生のあり様や深遠な自然の相貌を凝視したり、現代美術に刺激を受けつつ素材や技法を見直したりしてきました。とりわけ独自の革新的なアプローチで生み出された作品は、旧来の繊細優美なイメージの日本画とは一線を画する表現で、見るものの心ばかりか、日本画の枠組みそのものさえ揺さぶるインパクトを放っています。
本展では、そうした表現の数々を、戦後、個性的な画境を切りひらいた岩橋英遠(1903-1999)や片岡球子(1905-2008)をはじめとする北海道立美術館・芸術館のコレクションと豊橋市美術博物館のコレクションに、東京国立近代美術館が所蔵する中村正義(1924-1977)の代表作《源平海戦絵巻 第二図(海戦)》《源平海戦絵巻 第三図(玉楼炎上)》を加えてご紹介します。
豊橋市美術博物館は、反骨の画家・中村正義をはじめ、三上誠(1919-1972)や星野眞吾(1923-1997)、下村良之介(1923-1998)などの日本画革新の流れに棹さす画家の作品や、既成概念にとらわれない“明日の日本画”を公募する「トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞」(1999~)の受賞作を数多く所蔵しています。
出品作家は、いずれも日常的・常識的な意識を超えて、自らの生や直面する現実と切り結び、それぞれの回路でひらいた世界を絵画としてどのように表現するか、真摯に探っており、時代や個性を映じて押し広げられた戦後日本画の世界は、今も色褪せることなく輝きを放っています。本展では、1960年代から今日までつづく日本画をめぐる創造の歩み─その展開から優れて鮮烈な一端を、迫力あふれる大作の数々によりご紹介します。
本展の開催にあたり、貴重な作品や資料をご出品、ご提供賜りました豊橋市美術博物館、東京国立近代美術館、中村正義の美術館をはじめ、多大なご協力をいただきました関係各位に心より厚くお礼申し上げます。
2023年9月
北海道立近代美術館