紹介
鈴木吾郎は北海道・小樽を拠点にする彫刻家。具象による人体表現を追求し、子どもやムーブマンを経て、1980年以降はテラコッタを技法の中心に女性像を数多く手がけ、独自の表現と技法を編み出している。
今回、本郷新記念札幌彫刻美術館での企画展を契機に、大学卒業を出発点に60年を超える彫刻家としての歩みを辿る作品集を制作。展示作品以外の代表的な彫刻と素描、公共彫刻も収録した集大成の一つとなった。
掲載作品には鈴木吾郎自らによるコメント付き。テラコッタ作品の制作過程の紹介もあり、作品世界がより楽しめる。
※本作品集は、本郷新記念札幌彫刻美術館で2023年4月29日~8月27日開催の企画展「彫刻60年 鈴木吾郎 悠久を舞う」展に合わせて刊行されたものです。
〔鈴木吾郎(すずき・ごろう)略歴〕
1939年北海道芦別市生まれ、月形村(現・月形町)にて14歳まで育つ。北海道学芸大学札幌分校(現・北海道教育大学札幌校)入学後に彫刻をはじめ、卒業後は中学校・高校で教職を務めながら道展、日彫展などに出品。
教職定年後の現在はすべての美術団体を退き、小樽市にて制作を続けている。
目次
はじめに
「鈴木吾郎の彫刻と活動」 吉崎元章
図版
第一章 初期作品―具象彫刻を志して
第二章 子どもへのまなざし
第三章 頭像―精神性の造形
第四章 ムーブマンの探求
第五章 テラコッタ─温もりと軽やかさ
第六章 公共彫刻のつくり手として
資料編
「私の彫刻と人生」 鈴木吾郎
テラコッタ作品制作過程
年譜
主要参考文献
掲載作品リスト
前書きなど
はじめに
この作品集は、本郷新記念札幌彫刻美術館での「彫刻60年 鈴木吾郎展 悠久を舞う」に合わせ、刊行するものです。
展覧会出品作品だけにとどまらず、初期から現在に至るまでの代表的な彫刻と素描90点を掲載するとともに、北海道内を中心に設置した公共彫刻63点も収録しました。また、作家本人に各作品に対するコメントやこれまでの歩みを振り返った文章を新たにご執筆いただくなど、鈴木吾郎芸術をより深く理解し、味わっていただける内容になるよう努めました。
鈴木吾郎は、1939年に北海道芦別で生まれ、少年期を月形で過ごしました。教師として赴任した恵庭、栗山を経て、1981年からは小樽を拠点に制作活動を続けています。北海道学芸大学札幌分校(現・北海道教育大学札幌校)卒業を自らの出発点とする彼の彫刻家としての歩みは60年を超えます。子どもをモデルにした愛くるしい作品や、内面性がにじみ出た頭像、動きと空間の関係に興味をもち試みたさまざまなポーズの全身像など、一貫して具象による人体表現を追求してきました。
特に1980年以降はテラコッタによる女性像を数多く手掛けています。そこには、温もりさえ感じられる焼き土の色と肌合とともに、柔らかに屈曲した姿態や交差する腕や脚、端麗に伸びる指先など、繊細で軽やかな比類なき表現を見ることができます。それは、西洋的な具象表現を取り入れつつ、土器や埴輪にも通じる素朴な技法のなかに凛とした東洋的精神の発露を求め、生まれてきたものなのです。
そうした鈴木吾郎が生み出した作品が、正しく評価され、末永く愛され続けるために、この作品集が重要な資料として活用されていくことを祈っています。
最後になりましたが、多大なるご協力をいただいた鈴木吾郎氏、作品所蔵美術館をはじめ関係各位に厚く御礼申し上げます。特に中西出版には、展覧会の会期後も広く流通する一般書籍として出版いただきましたことに感謝いたします。
2023年4月
編集者として 本郷新記念札幌彫刻美術館