目次
はじめに 3
第1章 シベリアと森林の概況 11
1.シベリアの概況 13
(1) シベリアの語源 13
(2)シベリア開発の歴史 14
(3)シベリアの区分 15
2.ロシア及びシベリアの森林概況 17
(1)森林フォンド 18
(2)森林グループ 19
(3)シベリア全体の森林概況 20
1)各シベリアの森林資源 21
2)シベリアに分布する主な樹種 23
3)シベリアの森林の蓄積量 24
4)年間伐採許容量と最終伐期 25
5)潜在成長量 28
6)丸太収穫 28
7)林分の中間的な取り扱い 29
8)更 新 29
9)木材以外の収穫 30
10)シベリアの森林の主な撹乱 31
11)森林火災対策 32
12)害虫と病気の予防 33
13)結 論 34
3.ロシアにおける森林管理組織の変遷 36
第2章 中央シベリアの森林と管理 45
1.中央シベリアの定義 47
2.クラスノヤルスク地方における森林資源管理 52
(1)森林フォンドの特徴 52
(2)森林地域の研究組織 55
(3)クラスノヤルスクの森林状況 61
<中央シベリアの森林フォンドの特徴>
1)エニセイ川流域の暗針葉樹林と暗針葉樹林—カラマツ林 61
2)エニセイ川流域付近の暗針葉樹林とモミの森林 61
3)南エニセイ川流域付近における南タイガのスコッチパインの森林と暗針葉樹林 63
3.トゥヴァ共和国における森林の概況 66
(1)トゥヴァ共和国の位置と調査箇所 67
(2)トゥヴァ共和国の概略 67
1)歴 史 67
2)面積、人口、産業 70
3)森林の概況 71
4.トジャ地域における森林の概況 74
第3章 シベリアの森林の成長区分 81
1.地域区分 85
2.収穫表における地位区分—ロシア側の考え方— 87
3.地位指数による地位区分 90
4.トゥヴァ共和国における林分調査 95
(1)シベリアマツとカラマツの樹齢分布 96
(2)樹齢と胸高直径(DBH)との相関 98
(3)樹齢と成長量 98
(4)直径分布 100
(5)地形要因と林分構造 102
1)標高による森林タイプの分類 102
2)地形要因と成長量との相関 103
(6)日本の森林との比較 103
1)材 積 103
2)直径成長量と密度 104
3)樹種別の特徴 106
5.セーヴェルナヤ川調査 108
6.トゥヴァ共和国及びシュシェンスコエ調査等 110
第4章 ロシアにおける森林解析 115
1.森林の発達の歴史 117
2.人間と森林のかかわり合い 119
3.ロシアの森林分布 120
(1)森林分布の特徴 120
(2)人間がロシアの森林に与える影響 122
4.伐採と森林再生 123
(1)伐採年齢 124
(2)主伐と森林再生 135
1)主 伐 135
2)山火事後の森林再生 141
5.シベリアの森林の年齢構造 152
(1)直径分布 153
(2)森林構成樹木の年齢構造と森林形成プロセス 154
6.シベリアの森林の現存量 167
第5章 狩猟と森林 183
1.森林経営に際しての狩猟資源の評価 186
2.狩猟用地における個数確認の方法論 188
3.計画の算定部分 189
4.森林コルホーズにおける狩猟経営の組織化 194
5.タイガ圏の農場経営 198
6.禁猟区における最適な利用 202
(1)アルガ禁猟区の保護活動の特徴 202
(2)森林経営活動の分析 205
(3)針葉樹下層木損傷の森林育成上の結果 207
(4)禁猟区における狩猟経営の組織化に関する提案 208
7.狩猟経営の組織化に関する提案 209
引用・参考文献(ロシア語) 219
引用・参考図書(ロシア語) 228
引用・参考文献・図書(主に英語) 232
引用・参考文献・図書(日本語) 235
あとがき 239
謝 辞 241
コラム一覧
世界第5位の大河・エニセイ川 48
上流・中流・下流エニセイの違い 49
豊富な雪解け水とダムの影響 50
少ない雨量と植生の違い 51
公害都市・ノリリスク 55
エルマーコフスキー育種・種子生産センター 58
日本とよく似た採取園、しかし機械類は古い 59
日本側の中央シベリア森林調査 64
森林調査で利用した客船 66
ヘリ、カヌー、衛星データでシベリアの森林を探る 68
上空から見た森林の姿 75
シベリア鉄道の思い出 79
クラスノヤルスクに行くルート 83
ロシア入国で悩まされる交通料金と荷物制限 84
永久凍土地帯は客船で移動 94
トゥヴァ共和国に至る道 95
歓迎会で振る舞われた貴重な羊料理 97
トゥヴァ人とアジアの中心・キジール市 100
有名な観光地だったシュシェンスコエ 110
足のけがとロシアの病院事情 112
最大の敵は「蚊」 181
ローシ(ヘラジカ)はなかなかの美味 196
ロシア人の好物は魚、生で食べる 197
何十年ぶりに飲んだ小川の水 200
永久凍土地帯への旅 213
前書きなど
シベリアは広い。そして大森林に覆われている。このシベリアとのかかわりを持つようになったのは、1993年にさかのぼる。この年、新潟大学農学部の小林正吾農学部教授を団長に4名の教授がロシア科学アカデミーシベリア森林研究所を訪れ、共同研究の門戸が開かれた。同年、筆者(阿部信行)は、北海道立林業試験場から新潟大学農学部に異動になり、1995年に初めてシベリア森林研究所を訪れてから毎年訪ロするようになった。
シベリア森林研究所は、旧ソ連時代、森林関係の研究費が十分に確保され、各地に試験地を持ち、定期的な測定、観察を続けていた。しかし、旧ソ連の解体、その後の経済混乱により、ロシア全体の研究機関が混乱する中で、シベリア森林研究所も研究費どころか賃金すら支給されないことがたびたび生じるようになった。
筆者がロシアを訪れたのは、まさにこのような時であった。ロシア側は、調査どころではなかったはずである。ロシアでは多くの優秀な研究員が生活のため、ビジネスの分野に転出したと言われている。しかし、シベリア森林研究所では、ごく一部が転出したのみで、多くの研究者はとどまり、研究を続けている。彼らは、シベリアの大森林が心から好きだからである。一緒に調査をしてみると、彼らがいかに森林に慣れ親しんでいるかがよくわかる。
シベリアの森林には、現地で森林に慣れ親しんでいるロシア人にしか見えない部分がある。一方、日本人の方が見えやすい部分もあろう。本書は、ロシア側と何度も共同調査を続け、共同研究をしていくうちに見えてきた互いの課題や、彼らの研究業績の一部、またシベリアの森林の現状を日本に紹介するものである。日本のみならず、全地球上に重大な影響を与えるシベリアの森林に関心を持っていただけるのなら、これ以上の喜びはない。
2004年7月 編著者を代表して 阿部 信行