目次
第1章 リモートセンシングの基礎(阿部 信行) 13
1.リモートセンシングの概念 14
(1)人工衛星リモートセンシンング 14
(2)デジタル情報 14
2.電磁波の性質と波長帯域 16
(1)電磁波の性質 16
(2)電磁波の波長帯域 16
3.熱放射 18
(1)黒体放射 18
(2)プランクの放射法則 19
(3)熱赤外バンドの輝度値から地表温度に変換する方法 20
4.物体の分光反射特性 22
5.衛星画像を見る基礎 22
(1)白黒画像 22
(2)シュードカラー画像 22
(3)合成カラー表示 24
6.森林分野での利用 24
第2章 空中写真(加藤 正人) 29
1.演習作業の準備 30
(1)演習の組み立て 30
(2)演習作業の準備 30
(3)機材の配置 30
(4)空中写真の購入 30
2.空中写真の基礎知識 32
(1)空中写真とは 32
(2)空中写真の撮影間隔 32
(3)撮影注記と撮影記録証明書 34
(4)単写真の性質 34
(5)組写真の性質 34
3.空中写真の立体視(演習) 36
(1)立体視 36
(2)点の移写 36
(3)肉眼立体視 38
(4)現地の立体写真 38
4.地形と林相の判読 40
(1)地形判読 40
(2)林相判読 40
(3)樹種判読 42
(4)テンプレート 42
(5)オルソフォト(正射写真図) 42
(6)オルソフォト画像 44
第3章 人工衛星とセンサ(伊藤 恭一) 47
1.人工衛星 48
2.センサ 50
3.データの提供(入手方法) 52
(1)データの価格 52
(2)有効データ 52
(3)データ・デリバリー 52
第4章 森林の分光反射特性(加藤 正人) 57
1.地上観測 58
(1)樹木の分光反射特性の調べ方 58
(2)樹葉の分光反射 56
(3)生立木の測定 60
(4)針葉樹の測定 60
2.衛星観測 62
(1)森林の分光反射特性の調べ方 62
(2)衛星観測 62
(3)衛星データ利用の問題点と誤分類 66
第5章 グランドトゥルースと利用できるデータ(松英 恵吾) 69
1.グランドトゥルース 70
(1)GPS(Global Positioning System) 70
(2)GPSカメラ 71
2.森林調査 72
(1)森林計測法 72
(2)その他の調査法 73
3.利用できるデータ 74
(1)空中写真 74
(2)数値地図 74
(3)生物多様性情報システム(環境省生物多様性センター) 74
(4)国土数値情報(国土交通省) 75
(5)森林簿・森林調査簿 75
(6)クリアリングハウス 75
第6章 画像処理(Ⅰ)入力、補正(村上 拓彦) 77
1.入 力 78
2.大気補正 80
(1)放射伝達方程式を利用する方法 80
(2)画像データ自身を利用する方法 82
3.幾何補正 82
4.地形効果補正 86
第7章 画像処理(Ⅱ)変換、特徴抽出(松英 恵吾) 91
1.カラー合成92
(1)シュードカラー表示 92
(2)HSI変換・逆変換 92
2.画像強調 94
(1)濃度変換 94
(2)空間フィルタリング 96
3.主成分分析・テクスチャ解析 98
(1)主成分分析(Principal Component Analysis:PCA) 98
(2)テクスチャ解析 98
4.植生指数 102
(1)NDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指数) 102
(2)PVI(Perpendicular Vegetation Index) 102
(3)GVI(Green Vegetation Index) 102
(4)パターン展開法 104
(5)各指標と林分因子との関係 104
第8章 画像処理(Ⅲ)分 類(村上 拓彦) 107
1.分類の方法108
2.教師無し分類 108
3.教師付き分類 110
(1)多次元レベルスライス法(multi level slice method) 112
(2)最尤法(maximum likelihood method) 112
4.オブジェクトベースの分類 112
5.分類精度 116
第9章 応用(Ⅰ)画像判読 119
1.地形判読(竹島 喜芳) 120
(1)分解能と地形の見え方 120
(2)太陽方位と地形の見え方 120
(3)太陽高度と地形の見え方 120
2.林相判読(竹島 喜芳) 122
(1)林相判読のための画像合成 122
(2)高分解能衛星画像と林相 122
(3)IKONOSフォルスカラー画像で見る林相の季節変化 122
(4)林相判読 124
3.単木判読(加藤 正人) 126
(1)背景と目的 126
(2)調査地と使用したIKONOS画像 126
(3)判読の判定 126
(4)判読結果 126
第10章 応用(Ⅱ)樹種分類 131
1.針葉樹人工林(北海道)(加藤 正人) 132
(1)背景と目的 132
(2)調査地と衛星データ 132
(3)分類結果 132
2.スギ人工林(北陸)(阿部 信行) 136
(1)対象地域 136
(2)対象地域の森林概況 136
(3)分類手法 136
(4)分類結果 136
3.ブナ天然林(北陸)(阿部 信行) 138
(1)対象地域 138
(2)対象地域の森林概況 138
(3)分類の実行 138
(4)分類結果 138
4.スギ・ヒノキ人工林、広葉樹林、竹林(九州)(村上 拓彦) 140
(1)対象地および使用データ 140
(2)解析方法 140
(3)結果および考察 140
5.針広混交林(北海道)(加藤 正人) 142
(1)背景と目的 142
(2)調査地と使用したIKONOSデータ 142
(3)解析結果 144
(4)まとめ 146
第11章 応用(Ⅲ)林分情報の推定 149
1.単木樹冠(古家 直行) 150
(1)背景と目的 150
(2)単木樹冠抽出 150
(3)単木樹冠抽出手法 152
2.立木本数密度(スギ・ヒノキ人工林)(古家 直行) 154
(1)背景と目的 154
(2)調査地と使用した衛星データ 154
(3)立木密度推定手法 154
(4)推定結果および考察 154
3.樹冠疎密度(針葉樹人工林)(加藤 正人) 156
(1)背景と目的 156
(2)調査地と衛星データ 156
(3)空中写真から最小区画(30m×30m)ごとに疎密度を求める 156
(4)解析結果 158
4.材積(スギ人工林IKONOS、LANDSAT)(阿部 信行) 160
(1)背景と目的 160
(2)衛星データから材積の推定 160
(3)利用分野 160
5.材積(スギ・ヒノキ人工林、広葉樹林SPOT/HRVLANDSAT/TM)(村上 拓彦) 162
(1)対象地および使用データ 162
(2)方 法 162
(3)結果および考察 162
第12章 応用(Ⅳ)経年変化、災害モニタリング 165
1.伐採地抽出(インドネシア・カリマンタン)(露木 聡) 166
(1)インドネシア中カリマンタン100万ha水田開発計画 166
(2)植生変化の抽出 166
2.森林火災(インドネシア・カリマンタン)(露木 聡) 168
3.森林火災(北海道西興部村)(加藤 正人) 170
(1)背景と目的 170
(2)火災発生と経過 170
(3)使用した衛星画像 170
(4)衛星画像の解析 172
(5)実利用への課題と対応 172
4.風倒被害(北海道十勝地方)(菅野 正人) 174
(1)解析方法 174
(2)結果と考察 174
(3)課題とまとめ 174
5.噴火被害(北海道有珠山)(菅野 正人) 176
(1)使用したデータ 176
(2)解析手法 176
(3)結 果 176
(4)まとめ 176
6.マツくい虫被害(新潟県巻町)(阿部 信行) 178
(1)背景と目的 178
(2)被害率とNDVI値との関係 178
(3)PAN画像による目視 178
(4)被害面積の推定と分類結果の検証 178
7.経年変化(アジア東部地域)(和田 幸生) 180
(1)背景と目的 180
(2)SPOT/VEGETATION 180
(3)使用データ 180
(4)1年間合成データS365の作成 180
(5)タイムシリーズ画像による季節変化 182
(6)2時点のカラー合成による森林の変化 182
(7)まとめ 182
8.豪雨被害(北海道日高地方)(菅野 正人) 184
(1)使用したデータと解析方法 184
(2)結果と残されている課題 184
(3)まとめ 184
第13章 応用(Ⅴ)自治体利用例 187
1.岩手県(空中写真)(小原 修) 188
(1)導入経緯 188
(2)森林資源管理システム概要 188
(3)簡易デジタルオルソフォトの活用 188
(4)導入効果 190
(5)課 題 190
2.熊本県(中解像度)(松村 慎也) 192
(1)利用の経緯 192
(2)作業の流れ 192
(3)データの精度 194
(4)まとめ 194
3.岐阜県(高解像度)(平井 實) 196
(1)はじめに 196
(2)課題とその解決方法 196
(3)森林地域とその他地域の分類 196
(4)森林地域内の樹種分類(スギ・ヒノキ・広葉樹) 198
第14章 森林GIS201
1.民有林(北海道一般民有林)(菅野 正人) 202
(1)概要と特徴 202
(2)課題と今後の展望 202
2.国有林(堀江 文雄) 204
(1)システムおよびデータ 204
(2)国有林野事業でのGISの試験的運用 204
(3)今後の課題等 206
(4)国有林GISの今後 207
3.都道府県有林(望月 貫一郎) 208
(1)都道府県有林管理の現状 208
(2)今後の都道府県有林管理 208
(3)都道府県有林管理システムの機能 208
(4)都道府県有林の環境保全対策 210
4.北海道有林(加藤 正人) 212
(1)背景と目的 212
(2)システム開発の経緯と導入 212
(3)衛星データ利用森林GISの開発 214
(4)システム導入の評価 214
5.市町村有林(北海道北広島市)(対馬 俊之) 216
(1)市町村の森林GIS 216
(2)北広島市の概況とGIS導入目的 216
(3)GISの概要 216
(4)導入効果と課題 218
6.森林組合(福岡県浮羽森林組合)(坂本 勝司) 220
(1)背景と目的 220
(2)GISの導入経緯 220
(3)GISの概要 220
(4)導入効果と課題 222
第15章 これからの観測 225
1.航空機搭載型センサ(望月 貫一郎) 226
(1)航空機搭載型センサの現状 226
(2)航空機搭載型デジタルマルチラインセンサ 226
(3)航空機搭載熱赤外センサ 226
(4)ハイパースペクトルセンサ 228
(5)航空機搭載型センサデータの利用 228
2.ライダー(秋山 幸秀) 230
(1)レーザー計測の歴史 230
(2)ライダーシステムの構成と計測方法 232
(3)データの加工と調査事例 232
3.GPS(露木 聡) 234
(1)GPSとは 234
(2)GPSによる測位法 234
(3)森林におけるGPS利用 236
4.ハイパー(加藤 正人) 238
(1)背景と目的 238
(2)ハイペリオン 238
5.利用分野の拡大と展望(村上 拓彦) 240
付 録243
1.引用・参考文献 244
2.リモートセンシング衛星一覧、販売価格 (伊藤 恭一) 255
3.世界のウェブサイト(データ検索サイト)(伊藤 恭一) 255
4.衛星リモートセンシング推進委員会林業ワーキンググループ 256
5.大学で開講している森林リモートセンシングのシラバス258
6.索 引 267
前書きなど
森林を観測すること、すなわち計測は、森林科学の基本である。地球表面の様子をマクロに捉えるリモートセンシング技術は、こうした地球環境の監視のツールとして発展してきた。コンピュータをはじめとするIT技術の進展は、多様な人工衛星の出現と地上分解能力の向上を進め、ノートパソコンで解析が行えるまでに利用範囲を広げた。
一方、リモートセンシングの教本はあるものの、自然環境と森林科学を対象にしたものはなく、森林リモートセンシングの教本作成の必要性が生じていた。 そこで、宇宙開発事業団宇宙航空研究開発機構とリモート・センシング技術センターが組織運営する衛星リモートセンシング推進委員会の林業ワーキング委員会が中心となり、リモートセンシングに関する技術普及の教科書を作成することとした。その成果が、この1冊である。執筆者は、林業ワーキング委員会のメンバーが中心となり、それぞれの分野で活躍している方20名にお願いした。
本書の内容は、リモートセンシングの基礎から応用までの範囲とし、特に森林分野の利用事例を多くして、現状とその可能性と限界を明らかにすることにした。
森林計測の先端技術の1つであるリモートセンシングは、新センサの開発や他技術との統合利用など技術発展が著しい。今後も取り組まなければならない課題が多い。森林リモートセンシングの基本は、研究室だけで結果を出すのではなく、森林観察や調査を行いながらセンサに撮像された観測値や色調の違いをもとに、謎を解き明かす姿勢である。分類結果については、現地検証を通じて、利用の限界を示す必要がある。本書を通じて、森林リモートセンシングの理解が促進されれば、筆者らの喜びである。