目次
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はじめに
第一部 生い立ち
一、比企郡高坂村
末っ子/戦争の影/兄の死/高坂国民学校/精米機を供出
二、成長
敗戦の日/小島五郎先生/西田哲学/マルクス主義/川越工業高校
三、国鉄
臨時雇用員/民青埼玉県委員/日本共産党/機関車労働組合/新潟闘争
第二部 進撃
一、スターリン主義からの決別
決別宣言/黒田寛一/労働者大学/トロツキスト諸グループ/組織内の軋轢/荒波
二、『ケルン』の発行
創刊/発行停止/背景/再刊/安保・三池/総括/動労青年部
三、運転保安の闘い
輸送力の増強/動労の「体質改善」/二つの判決/三河島事故/運転保安闘争/党と労働組合/黒田の松崎批判
四 尾久・田端統廃合反対闘争
一九六三年一二月一三日/「炎の中の労働者」/列車を止める/逮捕
五、「同志会」「政研」の誕生と賃金論争
「4・8声明」/「同志会」/津山会談から青森大会へ/「政策研究会(政研)」/「同志会」の春闘方針/「本格的な賃金論争を」/賃金闘争論
六、革マル派との対立
ソ連訪問/内部対立/「カチカチ山」/何が問題だったのか
七、門司港事件
議長不信任案/門司港事件/動労第18回大会/退場、そして流会/何が問題だったのか/決着
八、「五万人合理化」との闘い
合理化計画/「共闘」体制/助士廃止問題/空前の規模/集約へ/敗北の中の前進
九、マル生攻撃との闘い
一九七〇年代/反安保ストライキ/報復弾圧/マル生攻撃/合理化推進・組織破壊攻撃/マル生中止/ 二五日間の順法闘争/なお続く動労攻撃/春闘の転換
第三部 模索
一、時代の曲がり角
目黒選挙/「スタグフレーション」/賃上げの抑え込み/「賃金自粛」の動き/75春闘の総括/スト権 奪還スト/DL分散配置
二、「貨物安定輸送宣言」
動労型労働運動/貨物輸送の削減/政研での議論/「貨物安定輸送宣言」/続く政研の議論
三、七〇年代から八〇年代へ
千葉地本の分裂/分裂の背景/労働戦線の統一/8・15集会/決着
四、逆包囲網の形成
国鉄経営の見直し/逆風/反撃/「オルグ」とは/「闘いの道みえぬまま」/逆包囲網/三本柱
五、最後の動労委員長
経営形態/陣頭指揮/民営化後を目指して
六、国鉄の分割・民営化
「緊急避難」/「労使共同宣言」/臨時全国大会/JR発足/直訴状/カルガモ騒動
七、労働組合づくり
「ルンペン出動」/「ニアリー・イコール」論/「責任追及から原因究明へ」/「抵抗とヒューマニズム」 /「松崎をこのままにしていいとは思わない」
八、分裂・裏切り・弾圧
グリーンユニオン/繰り返された襲撃事件/背後で動くJR東日本経営者/『JRの妖怪』の正体/討論 のしかた/裏切り/松崎逮捕を狙った公安警察
九、最後の日々
『われらのインター』/二〇一〇年
あとがき
註
年譜
前書きなど
「松崎明が世を去ってから間もなく一〇年が経とうとしている。この本は、その松崎の評伝である。
私が松崎明と最初に話をしたのは一九七七年の春、動労本部に就職した頃のことだった。そこで松崎が私に求めたのは、「職場闘争論」の深化と、「職種別個別賃金論」という右派の賃金闘争論への批判だった。その後、動労本部やJR東労組本部、JR総連での私の活動について、数えきれないほどの批判や指摘を松崎から受けた。それらは厳しいものだったが、納得のいくものだったので、こだわらず私は受け入れてきた。その意味で松崎は私の師であった。
私の手元に一冊の本がある。著者は東京大学名誉教授の故戸塚秀夫。標題は『試論 動力車労働組合運動の軌跡について』で、「『JR総連聞き取り研究会』中間報告」の副題がついている。B5版136頁の冊子で、国際労働総研という、私が最後の事務局長を務めた小さな調査研究機関が二〇〇九年七月一五日に発行した。内容は動労時代末期の松崎の歩みを、直接本人の口から何人かで聞き取り、それを戸塚がまとめたものだった。
その原稿を私に手渡す時、戸塚は私にこう言った――「ボクが書くのはここまでだ。後は君に任せる」。そしてこう付け加えた。「『評伝』を英語で言えば『クリティカル・バイオグラフィー』だ、批判を内に含んでいなくてはいけない」。
松崎明の評伝を、批判的な視点をもって書くよう私に求めた言葉だった。翌年の暮、二〇一〇年一二月九日に松崎は間質性肺炎が悪化して亡くなった。その時以来、戸塚の言葉が絶えず私の頭に響いてきた。
〔……〕中略
二〇一七年一月に戸塚秀夫が亡くなった。その頃から私は、松崎の著作全体を改めて整理する作業に取りかかった。その結果、一六〇〇点に近い著作や録音がいま手元にある。そこには『著作集』から漏れた多くの重要な著作があり、二〇一九年二月にその中の一〇点を『松崎明著作選』という本にし、身近な人に配布した。その後もさらに残された著作を読み、録音を聞き続けた。
そうする中でふと気づいたのが、わが身の老化だった。きちんとした評伝を残すのに、それほど時間が残されていないことを強く自覚させられた。そこで新たな評伝の執筆に取りかかり、書き上げたのがこの本である。
〔……〕中略
この評伝は、あくまでも今の私の目から見た松崎明である。戸塚の要請にどこまで応えているかは、お読みいただく皆様に判断をお願いしたい」