目次
第1章 ナマズはなぜ田んぼをめざすのか?
1 ナマズ採り名人
2 暗闇の超能力者
コラム1「地震ナマズ」は本当か?
3 私のフィールド─ナマズがのぼる田んぼ
4 ナマズよりわたしの方が忙しいわけ
5 長かった琵琶湖産ナマズの繁殖期
6 雨が降った後に産卵─琵琶湖のナマズ
7 危険がいっぱいの田んぼ
コラム2 陸を歩く魚
8 雨が降らなくても産卵─大堰川のナマズ
9 ナマズはオスよりもメスが多い?─琵琶湖のナマズ
コラム3 ナマズの雌雄の見分け方
10 地域によって異なるナマズの産卵行動
コラム4 琵琶湖産ナマズの産卵行動
11 止水型適応と流水型適応
12 ナマズが田んぼをめざすわけ─琵琶湖産ナマズの繁殖戦略
13 ナマズ卵にみられる環境適応
コラム5 ナマズ料理
第2章 岩場のヌシ・イワトコナマズ
1 ベンテンナマズと南湖の漁師・今枝さん
2 竹生島・弁財天の使者
3 イワトコナマズの形態的特徴
4 静かな産卵
5 イワトコナマズの繁殖戦略
コラム6 意外な副産物─ムギツクの托卵
コラム7 余呉湖のフナとイワトコナマズ
第3章 タニガワナマズと日本のナマズ類の系譜
1 タニガワナマズの発見
2 新種記載までの道のり
3 タニガワナマズとイワトコナマズ、ナマズの違い
4 DNAから考えるナマズたちの系譜
コラム8 タニガワナマズのお味は?
コラム9 タニガワナマズ展示の裏で起きていたこと
あとがき
引用・参考文献
前書きなど
本書では、琵琶湖博物館ブックレット『ビワコオオナマズの秘密を探る』(前畑政善著)の続編として、ビワコオオナマズ以外の日本産ナマズ属魚類3種(ナマズ、イワトコナマズ、およびタニガワナマズ)を扱った。なお、一般的なナマズは他の種と区別するためにマナマズとも呼ばれる。
〝タニガワナマズ〟は、一昨年(2018年)、田畑が記載に関わった新種である。この名前をはじめて聞かれる方も多いのではないかと思う。なお、当初は、前畑がナマズとイワトコナマズの2種を紹介する予定だったのだが、その執筆中にタニガワナマズが新種として認められたため、急遽、田畑がこの種を紹介することになった。本書の前半では、ひと昔前、田舎では多数のナマズたちがごく普通にみられた楽園のような状況を皮切りに、最近明らかにされた琵琶湖産ナマズ2種の暮らしぶりを前畑が紹介する。後半では、新種・タニガワナマズの発見から新種記載に至るまでの経緯と日本産ナマズ属魚類の起源・歴史を田畑が紹介する。