紹介
ライネフェルデの“まちづくり”は、ジャーナリストなら誰でもこのまちのサクセスストーリーを書きたい衝動に駆られる。
この“まち”の発信する情報は「ゼロ成長」でもやれる、と元気づけられるものばかりだ。“まち”が好ましい方向に発展し、ユニークで豊かな生活環境を創れるのは、人口増や産業の成長と共に進む時代だけとはかぎらない。“縮退するまちの時代”にもチャンスはあるのだ。
ライネフェルデの“実験“で分かったのは、人口減少による過疎化や成長の減速という回避できない現実がもたらす全ての問題も、毅然として計画的に立ち向かえば克服できるということなのだ。そこでは、都市経営の収益性が一時は低下したとしても、ネガティブ・ファクターは除去してポジティブ・ファクターをできるだけ伸ばそうという合意が成立していたのだ。
本書の著者たちは都市の専門家であり、旧東独の社会構造の破綻がもたらした一般的現象を熟知している。
各章では各自が自問しつつテ◯マの核心に迫ることを目指した。G. ツヴィッケルト担当のフォトエッセイは、我々が次第にテ◯マに近づくプロセスの記録である。優れたフォトグラファーの彼は現実の建築や都市の姿を記録したが、これは(略)完成した都市の美しいパノラマとし見てもらいたいと考えた。
このパノラマこそ、多くの関係者、協力者、参加者が高く掲げた目標に向かって粘り強く創りあげた、世界でも稀な新しい風景と言える。本書の読者には、これを手に“ライネフェルデの奇跡”の様々な側面を現地で確認することをお勧めしたい。
著者代表 W.キール
目次
はじめに-本書の構成、訳者解説
フォトエッセイ
ライネフェルデの歴史-村落から産業都市へ
フォトエッセイ
“まちの再生”という大冒険-再生のプロセスと15プロジェクトの解説
フォトエッセイ
ラインハルト市長は語る-これが私の人生
シュトレープ氏は語る-“東独の影”が残るよう計画した
シュミット氏は語る
-ライネフェルデという旗艦プロジェクトの州政府支援
住民の声-けして楽じゃなかった
フォトエッセイ
日本庭園をたずねて想う-“まちづくり”完成の日に
ライネフェルデに学ぶまちづくり
ブォルビスとの合併-リージョンシティの誕生
“減築とパネル”の生む“新建築”
著者紹介
前書きなど
旧東独のライネフェルデ市は、国連ハビタット賞も受賞するほどの団地再生事業で知られている。東西統合後すでに20年になるドイツにおいて、いまだに人口減・空き家に悩むまちづくり関係者にとっての“聖地”だと言われている。
そこには“サステナブル社会のまちづくり”の様々な方策が実施された。住宅地開発や人口の誘致を行わず、産業の成長が無い中で“美しいまち”に蘇えらせたのだ。
東西冷戦の終結による“都市の衰退”にあたり、市民と市長は“姿勢”を正し、様々な方策を実施して“発展”へと転換させたのである。
本書はこの“一大社会実験”の総合レポートであり、現在の先進諸国で進行する“都市の衰退”への対処策に溢れている。