紹介
私にも妻の言う「ささやかな楽しみ」がわかってきました。
もう少し、生かしておいてください。
末期ガンの新聞記者が、最後に見つめたものとは──
末期がんを宣告された定年間近の新聞記者が、
自らの闘病生活と夫婦愛をモチーフに描いた
表題作はじめ、病に伏してなおジャーナリス
トの視線で人間とさまざまないのちを見つめ
続けた、珠玉の短編小説集。
文芸評論家・清水信氏が解説寄稿。
新聞記者の具備しなければならぬ客観性や正義感を、こういう未来形の中で掴まえたのは、彼の才能であり、それが遺作によって我々にもたらされる元気の源になることを信じたい。
実験作に挑戦した果敢な努力が、同乗者としての読者を、永く鼓舞し続けるだろう。
──文芸評論家・清水信 「解説 岡本隆明の仕事」より
【すいかずら】
スイカズラ科半ツル性常緑低木。忍冬、吸葛、などと書く。対で咲く花が夫婦愛の象徴とされ「夫婦草」とも。花言葉は「愛の絆・献身的な愛・友愛」。
目次
石売る店/心なき屍/轢死/炎の迹/光り輝くもの/蠱惑/バトル・ピッチャー/イエズ降誕前夜/川辺/黄昏 前編/黄昏 後編/一九九七年五月/空ろなる/夢のかげ/夏の日に/ノナトナの木/秋の日に/同乗者/破れた繭/すいかずら/牛黄/猫がいなくなった日