目次
まえがき(河口和也)
第1章 現実とは―社会学的に考える(中根光敏)
1 〝オルタナティブな現実〟を構成する試み
2 現実をめぐって
3 現実の構成
4 常識による現実の統制/相互主観的現実
5 リアルな現実―「現実のための現実」
6 ミステリーとしての現実
第2章 大卒者の就業について考える(仁井田典子)
1 近年の大学生は「仕事に困らない」?
2 氷河期世代の定職に就いていない若者たちの生活世界
3 氷河期世代の非正規雇用や無職の若者たちが抱えた生きにくさ
4 個人化の進行による生きにくさの変化
第3章 教育格差について考える(伊藤泰郎)
1 階層と教育達成
2 格差をとらえる
3 高等教育機関への進学率
4 出身家庭による格差
5 様々な格差
6 これからの学びに向けて
第4章 日本社会の「国際化」について考える(伊藤泰郎)
1 「日本人」とは誰なのか
2 日本の住む/働く外国人
3 外国人労働者の受け入れ
4 受け入れ政策の転換
5 外国にルーツを持つ子どもたち
6 これからの学びに向けて
第5章 「自己責任」を社会問題として考える―「女性ユニオンW」で活動を続ける女性たち(仁井田典子)
1 個人的なことは社会的なことでもある
2 個人化に抗うコミュニティ・ユニオン
3 序列づけができないよう配慮し合う組合員たち
4 女性ユニオンWにかかわり続ける女性たちの生活史
5 自己責任を社会問題へと転換する
第6章 現代日本のホームドラマからゲイの表象を考える―「きのう何食べた?」をめぐるメディアと消費の社会学(河口和也)
1 テレビが映し出す性的マイノリティの表象
2 「家庭性」とセクシュアリティ、クィア
3 ロウ・ランド・ホーガンによる『ゲイ・クックブック(The Gay Cook Book)』
4 『きのう何食べた?』
5 『隣の家族は青く見える』
6 オーディエンスからの反応―『きのう何食べた?』を中心として
7 消去されるセクシュアリティと表象の受容
あとがき(中根光敏)
前書きなど
本書「まえがき」より
日々変動する社会において、社会的現実の解明をめざす社会学は、こうした大きな社会の転換期に直面する現代社会のなかで、そして社会との関係をとおしてつねに自らを問い、更新し続けていく自己反省的な学問である。また社会学は、社会問題解決に向けた制度設計や社会の構想を示していく側面も含みこむようになった。
社会学の対象は、社会の変容に対応して、日々変化を遂げ、また多様な領域に拡大していっている。近代においては「人間によって構成される社会」が中心的な対象とされていたが、もしかするとその対象は、「人間以上のもの(more than human)を包含する/によって構成される社会」というものが構想のなかに入ってくる兆しさえある。
本書は、社会学の初学者を想定して書かれたものである。先に述べたように、多様化して拡大する社会学の領域を到底網羅できるわけではないが、現代社会において生起する比較的新しいトピックを選定し、初学者にとって、社会的な視点を得られるよう配慮した。