目次
序文
1.関の求円周率術考
2.関の求円周率術考(続)
〔要旨〕関の求円周率術考(正・続)
3.関の角術の一解釈
4.関の角術の一解釈(続)
〔要旨〕関の角術の一解釈(正・続)
5.孫子の算法
6.関の零約術の再評価
〔要旨〕孫子の算法・関の零約術の再評価の
7.塵劫記の開立つ問題の考察
〔要旨〕塵劫記の開立つ問題の考察
8.塵劫記の日に一倍問題の解明
〔要旨〕塵劫記の日に一倍問題の解明
9.関の授時発明への注意
〔要旨〕関の授時発明への注意
10.関の授時発明への注意(続)
〔要旨〕関の授時発明への注意(続)
11.関の授時発明への注意(補)
〔要旨〕関の授時発明への注意(補)
12.関の授時発明の折衷性
〔要旨〕関の授時発明の折衷性
13.対授時暦的若干表格的訂正
〔日本語要旨〕
14.関于用于授時暦的沈括的逆正弦公式的精度
〔日本語要旨〕
15.関の求積問題の再構成(一)
16.関の求積問題の再構成(二)
17.関の求積問題の再構成(三)
18.関の求積問題の再構成(四)
19.関の求積問題の再構成(五)
20.関の求積問題の再構成(六)
21.関の求積問題の再構成(七)
22.関の求積問題の再構成(八) 新稿
23.眉の作図;関の求積問題への補説
24.円錐台に三角孔;関の求積問題への補説
25.球切片の定積分;関の求積問題への補説
26.西洋流の求積;関の求積問題への補説 新稿
27.円理とは何か;関の求積問題への補説 新稿
28.楕円の周の長さ;関の求積問題への補説 新稿
29. 関の求弧背術の限界 新稿
訂正と補足
初出一覧表
口頭発表一覧表
前書きなど
■私が和算に興味をもったきっかけは,関の求円周率術を復元した或る研究のなかに,関の計算に誤りがある旨の記述を見付け,疑問を抱いたことによる。さっそく『関孝和全集』を見て検算をしたところ,関が正しいことを確認した。これに動機づけられて,関の全集のなかの幾つかの論述を,徹底的に検討することになった。やがて批判は和算全般に拡げられた。
■私の方法論は,或る意味で単純である。後世の発達した数学の立場から評価すること,および西洋数学史の目で批判することは,第26論文を除き,避けることにした。もちろん,客観的に関の数学を西洋数学と比較することは妨げないが,後者の立場に立って評価するのは不適切であると考えた。その代わり,できるだけ原著の時代に身をおき,また当時の数学を取り巻く社会生活を背景として考えることにした。
■こうして残された計算や説明図の跡を追体験するつもりで丹念に辿れば,関の思考の流れが次第に理解できるようになる。私は数学が専攻でなく,心理学,特に発見の心理を研究する立場に立つので,他の数学専攻の方々にはない見方を提出できたのではないかと自負している。これが私の取り柄といえるかもしれない。総表題の『解読・関孝和』も、副題の「天才の思考過程」も私の立場の表明である。