紹介
●人生100年時代の到来を前に大切な「足腰の健康」
日本の65歳以上の人口割合は30%に迫るなか、自立した生活と社会参加を続けるためには、足腰が健康であることが大切です。高齢者に多くみられる腰部脊柱管狭窄症は、腰や脚の痛み・しびれのために日常生活が大きく制限されてしまう腰の病気です。旅行やスポーツはおろか、駅やスーパーに行くのも困難になるため、老化を理由にやりたいことをあきらめてしまう人が少なくありません。
●治療法は、近年劇的に進歩しています
腰部脊柱管狭窄症の診断や治療の技術は、非常に進歩しています。さまざまな薬や運動療法、ブロック療法などによる保存療法を第一選択として行い、効果がみられなければ患者さんへの負担を極力軽減する低侵襲手術を検討します。足腰の痛みやしびれが軽くなり、多くの人が従来の日常生活を取り戻しています。
●慶應義塾大学病院での長年の取り組みをもとに解説
本書では腰部脊柱管狭窄症がどのような病気かということから始まり、診断までの過程、具体的な治療方法、期待される結果やリスクなどについて、慶應義塾大学病院整形外科での取り組みをもとにわかりやすく解説します。
●患者さんから多く寄せられる質問をQ&A形式で掲載
腰部脊柱管狭窄症の患者さんから寄せられるさまざまな質問に対して、具体的かつわかりやすく回答しています。適切な診察・治療によって足腰の健康を取り戻し、再び有意義で楽しい生活を送るために、本書をお役立てください。
目次
はじめに/図解・背骨(脊柱)の構造/図解・脊椎と神経/図解・椎骨と椎間板/図解・脊柱管・馬尾神経
●第1章 こんな症状はありませんか?
580万人! 「腰部脊柱管狭窄症」が増えています/主な原因は老化、進行すると介護のリスクが高くなる
○「坐骨神経痛」は症状名/しばらく歩くと症状が出るが休むと回復○腰や背を後ろに反らすとしびれが走る○脚や腰部の脱力感がある○動くと腰痛が強くなる○臀部から脚のしびれ感や知覚異常○歩行時に尿や便をもらす
●第2章 「腰部脊柱管狭窄症」の原因・メカニズム
脊柱管と呼ばれる神経の通り道が狭くなる/背骨(脊柱)の役割は上体を支え、脊髄神経を守ること/脊柱管が狭くなる原因/神経の構造/症状の違いによって3タイプに分類される○神経根型○馬尾型○混合型/腰部脊柱管狭窄症の主な原因と関連する病気○腰椎椎間板ヘルニア○腰椎分離症・腰椎分離すべり症○腰椎変性すべり症○変性側弯症/動脈やほかの神経の病気でも症状があらわれる/○末梢動脈疾患○多発性神経炎○糖尿病性神経障害○こんな病気も痛みの原因に
●第3章 「腰部脊柱管狭窄症」の受診から検査まで
「腰部脊柱管狭窄症」で整形外科を受診したときの診察、検査/症状をできるだけ正確に医師に伝える/具体的に伝えるためのポイント/診察で行われること○問診○視診○触診○打診○神経学的検査(腱反射検査・知覚検査・筋力検査・疼痛誘発テスト)/検査で行われること○単純X線検査○単純CT検査(コンピューター断層撮影)○MRI検査(核磁気共鳴映像法)○脊髄造影検査(ミエログラフィー)○画像検査以外の検査
●第4章 「腰部脊柱管狭窄症」の診断基準
「腰部脊柱管狭窄症」の診断基準/どのようなケースが腰部脊柱管狭窄症なのか○腰痛の有無は問わない○診断サポートツール/老化は止められないが症状の改善は可能○インフォームド・コンセント
●第5章 「腰部脊柱管狭窄症」の保存療法
保存療法が第一選択。悪化を防ぎ障害を緩和することが目的/スタートは保存療法から/薬物療法―症状の緩和と血液の増加を目的に○非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)○アセトアミノフェン(非ピリン系解熱鎮痛薬○プロスタグランジンE1製剤(リマプロストアルファデクス)○神経障害性疼痛治療薬○筋弛緩薬○ビタミンB12製剤○セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)○オピオイド系鎮痛薬/神経ブロック療法―局所麻酔薬で痛みを取る○硬膜外ブロック○神経根ブロック○神経ブロック療法の効果とリスク/物理療法―物理的な方法で痛みをやわらげ運動機能の回復を図る○温熱療法○牽引療法○低周波電気刺激療法/運動療法―症状の改善や運動機能の回復を目指す/装具療法―腰椎の安定、痛みの緩和、姿勢の保持/コラム:腰部脊柱管狭窄症をもたらす疾患のひとつ腰椎椎間板ヘルニアの最新治療―椎間板髄核融解術
●第6章 「腰部脊柱管狭窄症」の手術療法
手術で痛みやしびれなどの症状を改善/手術が検討されるとき/手術の基本は「後方除圧術」/椎体間固定術が必要になることも○腰部脊柱管狭窄症の固定術/背骨周囲の筋肉を傷めない手術法 ――腰椎棘突起縦割式後方除圧術(縦割術)○この治療法の利点は?/術前・術後に行われることは?○入院についての説明○手術後のベッド上のリハビリ/手術後のリハビリの役目と目的/退院後に注意すること○症状に応じたリハビリを○手術の効果と限界を知っておこう
●第7章 日常生活の注意点
安心して暮らすための日常生活の注意点/ウオーキングなどの適度な運動を習慣に○杖やカートを上手に活用/腰痛体操で症状改善・悪化防止/痛みをやわらげる生活動作の工夫○腰を痛めない物の持ち上げ方、持ち方/腰への負担が少ない姿勢で就寝○就寝時の楽な姿勢
●第8章 「腰部脊柱管狭窄症」「坐骨神経痛」Q&A
Q1坐骨神経痛の原因は何ですか?/Q2長く歩くと脚が痛くて立ち止まらなくてはならないのですが、腰部脊柱管狭窄症ですか? ほかの病気の可能性もありますか?/Q3脚がしびれるのですが、腰部脊柱管狭窄症ですか?/Q4尿に勢いがないのですが、腰部脊柱管狭窄症と関係ありますか?/夜寝ているときに脚がよくつるのですが、腰部脊柱管狭窄症と関係ありますか?/Q6予防のために日常生活で気をつけたほうがよいことは何ですか?/Q7ゴルフやテニスはしてよいですか?/Q8お酒を飲んだり、たばこを吸ってもよいですか?/Q9体重は落としたほうがよいですか?/Q10脚のつりやしびれは手術をしたら治りますか?/Q11歩くときに杖や歩行カートを使うのはどうですか?/Q12重い物を持ち上げてもよいですか?/Q13腰を温めたほうがよいですか? 冷やしたほうがよいですか?/Q14スポーツジムなどで運動するのはどうですか?/Q15特効薬はありますか?/Q16神経ブロック注射で完全に治りますか?/Q17コルセットをしたほうがよいですか?/Q18腰部脊柱管狭窄症は手術をしないと治りませんか?/Q19どのようにどのようになったら手術を受けたらよいですか?/Q20脚やおしりの痛み・しびれで長い距離が歩けないのですが、手術をしたら歩けるようになりますか?/Q21手術にはどのようなものがありますか?/Q22どのような病院で手術を受けるのがよいですか?/Q23腰部脊柱管狭窄症の手術は痛いですか?/Q24手術にはどんな危険がありますか?/Q25金属を入れる手術をしてはと医師にすすめられたのですが必要ですか?
付録:受診前にまとめるメモ