目次
はじめに=土屋昌明
中国全図と王兵監督作品の撮影地
『鳳鳴 中国の記憶』に関連する中国現代史年表
第1部 王兵監督が/を語る
王兵監督インタビュー1 聞き手・文責=土屋昌明
『鳳鳴』『無言歌』から『死霊魂』への思いと映画の可能性
ドキュメンタリー撮影ノート ー 王兵監督との対話から=文平
王兵監督インタビュー2 聞き手・構成=樋口裕子
歴史の空白を描くことから、今、激変する中国を撮る
第2部 『鳳鳴 中国の記憶』を読み解く
映画『鳳鳴 中国の記憶』と中国現代史=山根貞男、土屋昌明、鈴木一誌
第3部 作品の核心に向かって
王兵という〈試し〉ーー『鉄西区』から『収容病棟』まで=藤井仁子
ワン・ビン作品における視線のポリティクスーー見る/見られるの非対称性を巡って=劉文兵
中国のインディペンデント・ドキュメンタリー=中山大樹
記憶の居場所ーー鈴木一誌
第4部 創作の軌跡ーーフィルモグラフィ=山口俊洋、土屋昌明
前書きなど
王兵の大作『死霊魂』が姿をあらわした現在、『鳳鳴 中国の記憶』が王兵の映画創作の核心にあったことが理解できた。いままで『鳳鳴』は、『無言歌』を作るための副産物と考えられていたが、むしろこの三部作の背骨となっていたのだ。この三部作は有機的に関連し合っていて、登場する群像はあちこちに顔を出し、そのたびに各作品のイマージュが観客の脳裏に想起される。北京電影学院の張献民が司馬遷『史記』の群像表現に喩えたが、確かにあれと同じ効果である。鳳鳴の語りに中国現代史が保存されているのと似て、映画『鳳鳴』には王兵の創作のすべてが保存されていると言えるのではなかろうか。本書によって、「中国の記憶」への理解が進むとともに、王兵作品の全貌とまでは言えないにしても、中心像は見えてくるだろう(「はじめに」より)