目次
一 白馬岳の雪女伝説の誕生
「データベース」のなかの「雪女」/白馬岳の雪女伝説はハーンの「雪女」に由来する/民俗学の流行、山の伝説さがし/引き写された本邦初訳の『怪談』/バレット文庫の「雪女」草稿では/いたずら者の青木記者/「雪女」、アイヌ伝説になる/物語は地名をもとめ、地名は物語に魔力を与える/阿寒湖、疑惑のマリモ伝説の作者は? /巌谷小波にひろわれた「白馬岳の雪女」/北安曇に出た「雪女郎」の正体
二 松谷みよ子と童話「雪女」
民話を「書きたい」「読みたい」という情熱/都市芸術としての「民話」/『夕鶴』との、まわりくどい因縁話/民話「雪女」をハーンに「戻し交配」する/情話から童話への変換/増殖する「雪女」と消された足跡/禁じられた『怪談』と小さな崇拝/『怪談』の児童文学化/一九五〇年代の「幽霊・妖怪ルネッサンス」/『怪談』、国語教科書へ
三 民話「雪女」からハーンを逆照射する
レヴィ=ストロースの構造主義と日本の異類婚姻譚/巳之吉の奪われた視線/母と子の魔法圏/母子神話と父子神話/「雪女」、その悲しみの正体
四 「雪女」、遠野の物語になる1 鈴木サッと失われた方言世界の復元
「雪女」、方言を獲得する/町の雪女、村の雪女(福島)/雪女の恩返し(栃木)/山姥になった雪女(山梨)/「銀山平の雪女」(新潟)―戦時体制への順応/「雪女(ゆきおなご)の話」(遠野)/父、力松の膝の上で/遠野の「雪女」の来歴/失われた言語空間への遡行―愛する人の物語を追って
五 木下順二とハーンの消えた関係l 歌舞伎『雪女』の世界
木下順二の沈黙/「雪女」と『夕鶴』、三つの類似点/歌舞伎『雪女』執筆の経緯/『雪女―歌舞伎俳優のために—』のあらすじ/原拠と失敗原因/先師、同志そしてライバルとして
六 辺見じゅんの「富山十六人谷伝説」
「人に息を吹きかけ殺す」モチーフと「雪女」/「まんが日本昔ばなし」の「十六人谷伝説」/「黒部山中のこと」(『肯搆泉達録』より)/青木純二「十六人谷」(黒部渓谷)/『山への味到』と『ある山男の話』/「十二組の坂」(富山県宮崎村)/秋田の「三十人小屋場」伝説/「雪女」の白い姉妹/アンデルセンの『雪の女王』/C・S・ルイスの「白い魔女」そしてギリシア神話/鎮魂と慰霊の語り手、辺見じゅん/辺見じゅんの「十六人谷」/子供たちの記憶に刻印されたこと/民話と創造/「十六人谷」に「雪女」を接ぎ木する/東京都檜原村の「大きな柳の木」―マルチメディアの時代の民話の伝承/民話化する「雪女」/「雪女」化する民話/創出される伝統
七 「雪女」はなぜ越境するのか 補遣 テキストと注解
取り上げるテキスト/誤訳の源流―高濱長江訳「雪女」/青木純二「雪女(白馬岳)」/巖谷小波「白馬岳の雪女」/小柴直矩「煙と消えた雪女」/村沢武夫「雪女郎の正体」/なぜ「雪女」は越境するのか