紹介
1.日本と世界をカバーした初の環境年表 1945年~2005年
2.三種類の年表を収録
重要事項統合年表: 日本と世界の環境に関する重要事項の記事を1945年~1975年までは日本と世界それぞれ1欄ずつで記述。1976年~2005年はそれぞれ3欄ずつで記載。
トピック別年表:大気や水質、土壌汚染・鉱害など大きく分類したテーマごとに163の個別トピックでそれぞれ詳細な年表を作成 1976年~2005年
世界各国・地域別年表:73カ国の国・地域別の詳細な年表を作成。収録時期は原則1945年~2005年だ が、イギリスなどは17世紀から収録している。
3.多角的な情報収集による、多種多様な項目の掲載。
4.全記事項目に典拠資料を明示。
5.専門の研究者約200人の協力により、4年の歳月をかけた智の結晶。
6.詳細な地名、人名、事項索引を作成、付加。
7.事実の正確で簡潔な記載。
目次
序論
凡例
第一部 重要事項統合年表
1945—1975
1976—2005 各年4頁
第二部 日本国内トピック別年表
<大気>
大気汚染一般
四日市公害
自動車による大気汚染
大阪市西淀川の大気汚染
川崎市の大気汚染
倉敷市水島地区の大気汚染
東京の大気汚染
地球温暖化
ヒートアイランド
オゾン層問題とフロン規制
<水質>
水質汚染一般
熊本水俣病
新潟水俣病
琵琶湖
霞ヶ浦
瀬戸内海
地下水汚染
大野盆地の地下水保全
神栖市の有機ヒ素水汚染
<土壌汚染・鉱害>
土壌汚染一般
イタイイタイ病
安中カドミウム公害
各地のカドミウム汚染
六価クロム公害一般
日本化学工業の六価クロム汚染
足尾鉱毒問題
土呂久・松尾鉱毒
<諸公害>
騒音一般
新幹線による騒音・振動・渇水
名古屋新幹線公害
自動車公害
国道43号線公害
環状7号線公害
空港公害一般
大阪国際空港公害
基地公害一般
沖縄の基地公害
厚木基地公害
岩国基地公害
地盤沈下
悪臭
<経済・産業・公共事業>
経済政策一般
企業と環境対策
科学技術
公共事業と環境破壊一般
成田空港
新石垣島空港建設問題
辺野古海上基地建設問題
石油備蓄基地
八郎潟干拓
諫早湾干拓と有明海異変
中海干拓問題
長良川河口堰
吉野川可動堰建設問題
千歳川放水路建設問題
八ッ場ダム問題
川辺川ダム問題
徳島県木頭村ダム問題
芦生ダム問題
二風谷ダム
山岳道路
圏央道建設問題
小田急線高架建設
<自然保護・景観保存>
自然保護一般
森林問題
知床の保全
逗子池子の森
気仙沼の植林活動
愛知万博問題
沖縄やんばるの開発と環境保全
矢作川
織田が浜
藤前干潟埋立て問題
三番瀬埋立て問題
棚田保全
里山保全
グリーンツーリズム・エコツーリズム
千葉県行徳の野鳥保護区
但馬のコウノトリ
沖縄のジュゴン
鳥獣害・移入動物
「自然の権利」訴訟
漁業権問題
町並みと景観の保全・地域再生
妻籠
川越一番街の町並み保存
国立市景観問題
福山市鞆港保存問題
小樽運河保存問題
<廃棄物>
廃棄物問題一般
豊島事件
青森・岩手県境産廃不法投棄
問題
東京日の出町処分場問題
栃木県葛生町産業廃棄物問題
岐阜県御嵩町産廃処分場建設
問題
長野県阿智村処分場建設問題
長野県中信地区の廃棄物処分場
建設問題
ダイオキシン一般
大阪府豊能郡ダイオキシン問題
所沢のダイオキシン問題
武蔵野市クリーンセンター建設
問題
廃棄物管理とリサイクル一般
徳島県上勝町廃棄物政策
牛乳パックのリサイクル
長井市レインボープラン
菜の花プロジェクト
<原子力>
原子力一般
伊方原発
柏崎刈羽原発
新潟県巻町原発建設問題
上関原発建設問題
青森県核燃料リサイクル施設
問題
高レベル放射性廃棄物問題
岡山県人形峠ウラン残土問題
原子力船むつ
高速増殖炉もんじゅ
JCO臨界事故
原発被爆労災岩佐訴訟
自然エネルギー
<化学物質>
有害化学物質問題一般
森永ヒ素ミルク事件
カネミ油症
PCB
杉並病
化学物質過敏症・シックハウス
症候群
農薬問題
有機農業
遺伝子操作農作物問題
<薬害>
サリドマイド
薬害スモン
薬害HIV問題
クロロキン
筋短縮症
予防接種後肝炎(B型肝炎)
ダニロン事件と大鵬薬品労組
薬害ヤコブ病
MMRワクチン
ソリブジン
フィブリノゲン製剤と第Ⅸ因子
による薬害C型肝炎
薬害イレッサ
タミフル
<災害・労災・職業病>
事故・災害一般
自然災害
労災・職業病一般
三井三池炭塵爆発
石炭塵肺
トンネル塵肺
アスベスト問題
大阪府植田マンガン中毒事件
過労死
<制度・政策・運動>
環境法制
政府の環境行政組織
環境自治体
環境基本計画
環境影響評価
公害・環境関連訴訟
環境運動と環境NPO
<その他>
その他の環境関連事項
国際交流
環境教育
研究史
第三部 世界各国・地域年表
<国際>
地球環境の動向
国際機関
国際環境法・条約等
<アジア諸国>
韓国
北朝鮮
中国
台湾
モンゴル
フィリピン
インドネシア
シンガポール
マレーシア
ベトナム
ラオスおよびメコン河
タイ
インド
パキスタン
バングラデシュ
スリランカ
ネパール
その他アジア諸国
<中東諸国>
トルコ
イスラエル
ヨルダン
パレスチナ
その他の中東諸国
<アフリカ>
エジプト
チュニジア
アルジェリア
エチオピア
ケニア
タンザニア
ナイジェリア
カメルーン
ナミビア
ザンビア
マラウィ
レソト
ガンビア
南アフリカ共和国
アフリカ諸国
<ヨーロッパ>
EU環境政策
イギリス
フランス
ドイツ
イタリア
オランダ
デンマーク
スウェーデン
フィンランド
ポーランド
チェコ・スロバキア
ハンガリー
旧ユーゴスラビア
その他ヨーロッパ諸国
<旧ソ連諸国>
旧ソ連諸国
<北米>
アメリカ合衆国
カナダ
<中南米>
メキシコ
グアテマラ
ベネズエラ
ブラジル
ペルー
ボリビア
パラグアイ
ウルグアイ
アルゼンチン
チリ
その他中南米諸国
<オセアニア>
オーストラリア
ニュージーランド
オセアニア諸国
<北極圏・南極圏>
北極圏・南極圏
出典一覧
索引
編集委員・協力者一覧
あとがき
前書きなど
<序論>
(1)環境問題の歴史的動向と環境問題研究における総合的な年表の必要性
21世紀の世界にとって、また、日本社会にとって、環境問題への取り組みはきわめて重要かつ緊急の課題となっている。環境問題は、それに隣接する諸問題ともからみあいつつ、現代の社会問題の核心に位置すること、また、その解決の成否が、人類社会の今後のあり方に大きく影響するであろうことは、多くの論者の指摘するところである。
歴史的に回顧するのであれば人間社会の活動による環境破壊は、さまざまに変化してきている。日本においては近代以前の社会においても鉱山業による環境汚染が、各地で生起していた。明治期以降の産業化とともに、多数の公害問題が発生した。明治期には足尾鉱毒事件が社会問題となり、富山県でのイタイイタイ病の患者発生は大正期には始まっている。第二次大戦後の戦後復興にともない、各種の産業公害がひろがっていったが、さらに1955年以降の高度経済成長は、経済規模の拡大と共に、急激に各地に公害を続発させた。1960年代になると公害は空前の激化を示した。民間企業のみならず、道路、鉄道、空港などを建設する各種の公共事業も環境を破壊するという帰結を招いた。第二次大戦後、日本においても世界的にも経済成長の過程と共に、公害問題は次第に悪化するようになったが、環境問題に対する社会的認識や政策的対応において、最初の大きな転換が起こったのは、1970年前後と言えよう。日本においては1960年代後半期以後の公害反対運動の高揚を背景に、1970年12月の公害国会における公害関係14法案の成立や、1971年7月の環境庁の設置を画期として一定の政策的転換が起こる。世界的には1972年にストックホルムで開催された国連人間環境会議は、環境問題に対する世界的な関心の高まりと取り組みの積極化を示すものであった。
1970年代になると、日本においては公害防止投資が急増し、公害防止技術の進展とあいまって、次第に公害問題の改善が見られるようになる。しかし、そのことは、環境問題の全面的な解決を意味するものではなかった。経済界からは、公害規制の強化への抵抗や、さらには緩和への働きかけが繰り返されたし、1980年代には、産業構造の変化と成長政策の力点の変化により、ハイテク汚染、リゾート開発による環境破壊などが問題化した。
さらに、1980年代後半には、地球環境問題と総称される新たな環境問題の深刻化が、全世界的に意識されるようになった。すなわち、地球温暖化問題、フロンによるオゾン層破壊問題、森林の減少と砂漠化の問題などのように、従来の公害問題の枠に収まらないような新たな環境問題が顕在化してきた。これらの問題の発生は、一国単位で論ずることができるものではなく、世界的な規模の環境負荷の累積が問題化するという新たな特質を示すものであった。同時に、その発生の社会的メカニズムという点で見るならば、あらゆる生産と消費のあり方が環境負荷の発生という視点から問い直される必要が生じているという意味で、「環境問題の普遍化期」ともいうべき状況が現れてきた。
このような時代の変化を反映して、1990年代以降、環境運動、環境政策、環境問題研究について、新たな、また広範な取り組みが見られるようになった。1992年にリオデジャネイロで開催された「地球サミット」における「持続可能な開発」sustainable developmentの提唱や、日本における環境基本法の制定(1993年)は、環境問題に対する政策的対応の新しい展開を示すものである。
日本における学問的取り組みも進展し、1990年代には、環境社会学会、環境・経済政策学会、環境法政策学会が次々と設立された。しかし、21世紀に入り、環境問題への関心は高まりつつあるが、日本においても世界的にも、環境問題に対処するために必要な社会と経済の変革は、十分に有効な形でなされるには至っていない。温暖化問題一つをとってみても、京都議定書(1997年)は政策的対処の進展の一里塚ではあるが、その後の各国の政策的達成度にはばらつきが存在するとともに、先進国と発展途上国の立場の違いや各国の国益志向に規定されて、世界的に見た包括的で有効な政策枠組みの欠如という限界を示している。
このような全世界的な環境問題の深刻化と対処の立ち後れに対して、あらゆる分野での取り組みの積極化の必要がある。広汎な学問分野において、環境問題の解明と解決のための研究を深化させることは、その不可欠の一環である。人文・社会科学分野においては、社会や文化との関係において、個別の環境問題の研究を掘り下げるとともに、現代の人類社会との関係における環境問題の総体的把握、両者の相互連関の把握が必要である。そのような課題を果たすためには、環境問題の歴史的な経過についての基本情報を総合的な年表というかたちで体系的、包括的に整理し、広く共有することが必須の基盤的条件となる。この『環境総合年表-日本と世界』は、以上のような問題文脈と課題意識に基づいて、企画されたものである。