紹介
生誕百年記念決定版伝記!
富裕なワイン商の息子として音楽を志した幼・少年時代。カント哲学の影響下に哲学に開眼した青年時代。ヒトラー政権下でのアメリカ亡命。盟友ベンヤミンとの交友、ブロッホ、アーレント等との確執……。伝記的事実を丹念に辿りつつ批判理論の頂点=「否定弁証法」に至る精神の格闘の軌跡を描く。
【付】フォト・アルバム、年譜、文献目録ほか。
********
ミュラー=ドームの「アドルノ」は、何年も「ドイツ学術振興会」の補助を得て、オルデンブルク大学「アドルノ研究センター」を拠点に、共同研究者らと周到な資料収集とテキスト批判を重ね、「体系的な伝記」を目指したものであるだけに、本人が口頭で私にいったように「伝記の名に値するのはこれだけだ」と自負するのもうなずけるような気がする。ハーバーマスも数年前、……ほぼ同様の感想をもらしていた。――【「訳者あとがき」より】
目次
まえがき
第1部 源泉――家族と子ども時代と青春期。マイン河畔の町で過ごした勉学の年月
対照的な父母の家系
1 ジャン・フランソワ、またの名をジョバンニ・フランチェスコ――コルシカの祖父
2 ヴィーゼングルント――詩趣に富んだ父方の名前にこめられたユダヤの遺産
3 オーバーラートとアモールバッハの狭間で
4 感情教育
第2部 住所の移転―――フランクフルト、ウィーン、ベルリン。多様な知的関心
哲学と音楽の越境
1 流れに抗して――フランクフルトの街と大学
2 ウィーンの音楽的環境に暮らす哲学的人間――ドナウ河畔の首都での体験
3 職探し
4 音楽批評と作曲の実践
5 美学理論への接近
6 フランクフルトにおけるもう一つの例外現象――社会研究所
第3部 亡命時代――余所者の中での知的実存
二重の亡命――伝記的運命としての知的故郷喪失
1 民族共同体のための画一化とアドルノのためらいがちの亡命
2 アカデミックなことと個人的なこと。オックスフォードの「大学院学生」となった哲学講師
3 手紙を書くことは哲学的自己確認。ベンヤミン、ゾーン=レーテルやクラカウアーとの論争
4 行うことによって学ぶ。社会調査へとむかうアドルノの歩み
5 不幸中の幸い:アドルノのカリフォルニア時代
フォトアルバム
第4部 思考は無限だが、忍耐には限界がある
「ノー」という爆破力
1 転居。廃墟を視察する
2 批判理論に妥当性を与えること:五〇年代終わりから
3 パンを食べること。思想によって命を保つ理論について
4 窮地に立つ
エピローグ:自己自身に逆らって考える
原注
訳者あとがき
付録
家系図/フランクフルト市街図/年譜/アドルノの講義と演習/作曲作品リスト/文献目録/索引