目次
複雑な岡山の地質 能美洋介
岡山市の植生 太田 謙・波田善夫
岡山市の夏の気温と不快指数 大橋唯太
家計調査から見た岡山市 柳 貴久男
大学生のリスク認知能力 中村克之・三原裕子
前書きなど
岡山理科大学『岡山学』研究会が刊行する、シリーズ『岡山学』がこの『データからみる岡山』で一三冊目になります。
岡山理科大学『岡山学』研究会は、一九九九年に岡山理科大学の総合情報学部(二〇一二年に新設された生物地球学部に移動したメンバーを含む)の教員が中心になって、「岡山」という地域を対象に、自然科学、人文科学、社会科学、情報科学などいろいろな方向から検討して、明らかにしていこうという目的で作られた研究会です。
これまで「岡山市朝寝鼻貝塚」「備前焼」「吉井川」「旭川」「鬼ノ城と吉備津神社」「高梁川」「岡山の災害」「瀬戸内海」などをテーマに、シンポジウムを開催してきました。そしてシリーズ『岡山学』1として『備前焼を科学する』、同2として『吉井川を科学する』、同3~6として『旭川を科学するPart1』~『同Part4』、同7として『鬼ノ城と吉備津神社─「桃太郎の舞台」を科学する』、同8として『高梁川を科学するPart1』、同9として『岡山の災害を科学する』、同10として『高梁川を科学するPart2』、同11・12として『瀬戸内海を科学するPart1』、『同Part2』を刊行してきました
今年は昨年一二月に開催した第一六回『岡山学』シンポジウム「データからみる岡山」を一冊にまとめることにしました。これまでの岡山県内の特定地域を対象としたものではなく、いろいろなデータを用いて、いろいろな方向から岡山を検討したものです。
まず、情報地質学が専門の能美洋介さんに、「複雑な岡山の地質」というテーマで、(独)産業技術総合研究所地質調査総合センターがインターネット上に公開している「二〇万分の一日本シームレス地質図」を使って、古生代から現代に至るまでの地学的な営みの結果できあがった岡山県内の多様な地質について述べていただきました。
次に、植物生態学が専門の太田謙さんに、「岡山市の植生」というテーマで、現在と過去の植生データを用いて、岡山市の操山と龍ノ口山の戦後六〇年間の植生の移り変わりについて述べてもらいました。
三番目に、気象学・大気環境学が専門の大橋唯太さんに、「岡山市における夏の気温と不快指数」というテーマで、気象庁によって観測された気象データを用いて、瀬戸内地域の夏の蒸し暑さの理由について、気温、湿度、風を中心に述べてもらいました。
四番目に、統計学が専門の柳貴久男さんに、「家計調査から見た岡山市」というテーマで、平成二四年度の総務省統計局全国家計調査データをもとに、収支、食費、その中の肉類の消費などについて統計処理を行い、岡山市の家計の特徴について、実際のデータのみから述べてもらいました。
五番目に、マクロ経済学・経済政策が専門の三原裕子さんに、「大学生のすがたから見る岡山県」というテーマで、岡山県下を含む中国・近畿地方を中心とする全国二〇大学の学生さんを対象に行ったアンケート調査のデータをもとに、岡山県出身者、岡山県下の大学に通う学生さんたちのアルバイト状況、資格取得に関する意識などについて述べてもらいました。
以上のように、本書は、情報地質学、植物生態学、気象学・大気環境学、統計学、マクロ経済学・経済政策の専門家たちがそれぞれの分野に関わるそれぞれのデータを用いて、岡山という地域を明らかにしようとしたものです。いろいろな方向から検討することで、岡山の多様性が見えてきたも
のと思います。
これまでの地域を中心としたテーマと違って、いろいろな岡山が見えてきたのではないでしょうか。本書が岡山という地域を少しでも知り、考える冊子としてお楽しみいただければ幸いです。
二〇一五年一二月三日
岡山理科大学『岡山学』研究会代表 亀田 修一