目次
1本丸大手筋を歩く
2水の手を歩く
3搦め手を歩く
4二の丸界隈を歩く
5後楽園を歩く
6川東を歩く
7西国街道に沿って町人町を歩く
8津山往来に沿って歩く
9外堀に沿って寺町を歩く
10城下町の南部を歩く
11西川に沿って歩く
前書きなど
編集を終えて
JR岡山駅東口広場に、角帽にマント、学生服に下駄履きの六高(第六高等学校)生の像が建っている。岡山駅からは路面電車やバスで、この本で紹介した各コースの出発点に行くことができる。この像を城下町歩きの始点にしていただいてもいい。
もともと岡山地域は、古代以来大陸との交流が盛んで、文化や学問を重んじる土地柄であった。江戸時代には岡山藩が早くから藩学校を整備し、同じころ庶民教育のための閑谷学校も設けられた。そうした伝統から、教育を尊重する気風が強い。
岡山大学は、第六高等学校や岡山医科大学などを母体とした新制大学として、昭和24年(1949)に創立された。これも地域の熱い支援に支えられて実現したものであった。
池田家文庫は、これにあわせて岡山大学に寄贈された。大学での教育・研究活動に役立ててほしいという、地元の熱意の賜物であった。
池田家文庫は、江戸時代の岡山藩政史料約八万点、絵図類約三千点などからなる、全国有数の藩政資料であり、国内外の研究者によって広く利用されている。これを所蔵する岡山大学附属図書館では、資料の保存や利用の便宜を図るために藩政史料のマイクロフィルム化や絵図のデジタル化を進めるとともに、資料を活用した地域貢献の事業も長年にわたって行ってきた。最近では、毎年秋に岡山市デジタルミュージアムと共催で「池田家文庫絵図展」を開催し、「子ども向け岡山後楽園発見ワークショップ」や市民向け公開講座「池田家文庫絵図をもって岡山を歩こう」も実施している。こうした地域貢献の取組によって、附属図書館は平成二一年度国立大学図書館協会賞を受賞した。
本書の企画を吉備人出版の金澤健吾さんから相談されたのは、城下町を歩く公開講座を企画しているときであった。講座の講師をお願いしていた乗岡さん・猪原さん・万城さんに相談し、岡山大学附属図書館にも打診して、講座の内容を基礎に本を作ることにした。昨年の講座修了後、何回か打ち合わせを重ねて、内容の検討を行った。本書では講座の際には回れないところも見るようになっているし、講座ではコースとして立てられていないところもある。城下町全体を歩いていただきたいという思いによるものである。
絵図図版の作成では、附属図書館の参考調査係の皆さんにお世話になった。本書の魅力をなんと言っても絵図なので、職員の皆さんの協力によるところが大きい。あらためて感謝します。図版・写真などを提供してくださった各機関にもお礼を申しあげます。
多くの皆さんがこの本を片手に実際に町を歩いてくださるよう願います。皆さんなりの発見が必ずあるはずです。
2009年7月17日 執筆者を代表して
倉 地 克 直