紹介
大学進学率の高まりと大学数の増加とともに、少子化による18歳人口の減少と相まって、誰もが希望すれば大学に進学できる全入時代となった昨今、さまざまな家庭事情や生活問題を抱え大学に進学・在籍する学生も多い。基本的に大学は、学生の主体性と自主性を重んじ、自ら学びを深めることを求められる。したがって大学が学生の生活問題や家庭事情に深く関わることはなかったが、学生の抱える問題や課題が深刻化すると自己責任として見過ごすわけにもいかなくなってきている。本書は、大学において、学生の生活上の問題や課題を専門に支援するキャンパスソーシャルワーカー(CSWr)の概要や役割と、CSWrを置く大学の実践事例とともに、その有用性の調査結果や設置の必要性を解説する。
目次
はじめに
第1章 社会に役立つ大学であるために
第2章 高等教育機関での学生支援
第3章 大学における配置の実態とキャンパスソーシャルワーカー組織化のプロセス
第4章 大学の管理者から見たキャンパスソーシャルワーカーの有用性の評価に関する調査結果
第5章 事例に見る学生の困りごと 1
1.ニーズからサービス創出
事例1 目が見えないが大学で勉強したい【視覚障害学生への支援】
事例2 車いすでの大学生活【重度肢体障害学生への支援】
事例3 勉強ができないから退学したい【アカデミックハラスメントへの対応】
事例4 ふらっとやってくる学生たち【フリースペースの管理運営】
2.命や生活の危機に介入する
事例5 アパートから出ることができません“確認強迫の苦しみ”【訪問支援】
事例6 こんな人生なら終わればいい“自殺の危機”【家族機能回復への支援】
事例7 皆から嫌われているから……“幻聴の影響”【精神科受診への葛藤に対する支援】
3.ソーシャルスキルトレーニング/グループワークの導入
事例8 攻撃的な態度で周囲が困った【付き合い方やマナーの学習】
事例9 ひきこもりからの脱却【自己肯定感を高める支援】
事例10 悩みを分かち合える友だちが欲しい【LGBT サークル参加への後押し】
第6章 事例に見る学生の困りごと 2
4.相談体制の組織づくりやマネジメント
事例11 学費が払えない、どうしよう【社会福祉協議会の貸付制度】
事例12 個別性を尊重する合理的配慮【高次脳機能障害への支援】
事例13 セックスのことで頭がいっぱい【性の研究会の立ち上げ】
5.多様な価値観を大切にする大学づくり
事例14 留学生をめぐる支援【留学生に対する社会福祉制度の利用促進】
事例15 障がい者が働きたい大学を目指す【 障がい者の労働機会の充実】
6.社会に踏み出す後押し
事例16 大学は辞めるけど、就職もしたくない【就労支援】
事例17 必ず儲かる、と言われて【消費者トラブル救済】
7.大学運営への参画
事例18 ハラスメントの相談をばらさないで【ハラスメント防止出前研修の発案】
事例19 問題をひとりで抱え込ませない【交際相手のDVからの救出】
事例20 研究室にゼミ生が来なくなった【教職員への支援】
第7章 キャンパスソーシャルワークの働きと大学における有用性
第8章 学生支援の向かう道
おわりに