紹介
世界の短篇・インディペンデントアニメーションの動向に精通し、理論と実践両面においてその最前線に立つ気鋭の論客による、渾身の現代アニメーション論かつ「アニメーション正史」への挑戦の書。
巨匠ユーリー・ノルシュテインの代表的作品『話の話』を糸口に、個人(インディペンデント)作家たちの創造性の系譜と達成を読み解き、初期アニメーション〜ディズニー、アニメーション・ドキュメンタリーや世界の長編アニメーション、デジタル時代の新たな原理、さらには宮崎駿・高畑勲など現代日本のアニメにまで射程は及ぶ、「アニメーション正史」への挑戦の書。
さまざまな潮流との接続のなかで新たな「アニメーション」の輪郭を引き直し、その現在と全貌、未来の道行きをも明らかにする独創的なアニメーション史、堂々の刊行!
目次
第0章 『話の話』という「謎」
『話の話』という謎めいた作品
本書のアプローチ──『話の話』を国際的な個人作家の文脈で考える
本書のねらい──「個人的な」作品をベースにアニメーションの歴史を再編する
第1章 「われわれのすべてが自分の木々をもっているのです」
「アニメーション映画」の想像力
「違ったふうに」世界を感じる
アニメーションの起源を探る──「アニメーション映画」の誕生と発展
「アニメーション映画」の堕落と忘却
フレームの「間」に生まれる「個人的な」時間
第2章 「すべての文明から離れた隠れ家へ…」
「アニメーション映画」の小さな革命
ノルシュテイン作品における取り残された場所
アニメーションの現実変革
「アニメーション映画」とディズニーのパラレル
「アニメーション映画」の社会性
世界の片隅に生まれる刹那の「永遠」
第3章 「私は現実から書き写すのだ…」
『話の話』とデジタル・アニメーションの不安定な現実
「書き写す」詩人
「原形質性」再考
デジタル・ロトスコーピングと不安定な現実
流動する記憶とアイデンティティ
第4章 「メタファーは世界の扉を開け放つ」
アニメーションの原形質的な可能性
フレームの「向こう側」
アニメーションを「芸術」とするために
他者に宇宙を見いだす
幽霊たちの視線を感じる
幻視者の瞳
結論
註
あとがき
フィルモグラフィー 参考文献 索引