目次
第1章 信仰と日常生活
タイ人にとっての仏教
①タイという国
②タイのしきたりと日本のしきたり
③タイ人の信仰
④タイの仏教とは
⑤すべてカルマのせい
⑥ブンを貯める
【ちょっと一息】
タイ人にとって大切なこととは
①「こだわり」はいいこと?
②タイ人はなぜ楽観的なのか
③正しいのは法か仏教か
④マイペンライ
⑤言葉の文化
【ちょっと一息】
⑥時間の概念
⑦相談にのる
【ちょっと一息】
第2章 マナー
日常生活におけるマナー
①挨拶
②微笑み
③日常の挨拶
④挨拶の言葉
⑤お年寄りとの接し方
⑥手土産
⑦車内で
⑧叱り方
⑨チップ
⑩たばこ
⑪お酒
⑫電話
【ちょっと一息】
食事のマナー
①音を立てて食べない
②行儀のいい食べ方
③大皿じか箸
④調味料
⑤食べ残し
⑥おごる
【ちょっと一息】
宗教行事でのマナー
①クラープ
②お祈り
③托鉢
④お坊さんと女性
⑤お寺で
⑥正しい座り方
⑦儀式に使う道具
⑧聖なる石
【ちょっと一息】
タブー
①寝ながら食べてはいけない
②夜は魔の時間
③しつけに関するタブー
④プレゼントに関するタブー
⑤冠婚葬祭に関するタブー
⑥夢を見たら
第3章 家庭行事
誕生から厄年まで
①産後の儀式
②剃髪式
③命名
④生まれた曜日
⑤あだ名
⑥厄年
出家
①お坊さんになるということ
②出家式
③お坊さんになると
④お坊さんの持ち物
⑤お坊さんが持ってはいけない物
⑥少年僧
⑦還俗
家
①タイの家
②家を建てる
③精霊の家
④新居に住む
⑤方角と配置
⑥縁起の悪い植物
⑦縁起の良い植物
結婚
①結婚の条件
②結婚式の準備
③結納式
④結婚式
⑤結婚披露宴
⑥初夜の儀式
病気
①お見舞い
②病院嫌い
③医者にかかる時の注意
④薬を買うには
死
①葬式
②納棺
③葬儀
④火葬
⑤いちじくと塩
⑥納骨
⑦供養
第4章 年間行事
①正月(祝日)(一月一日)
②子供の日(一月第二土曜日)
③先生の日(一月一六日)
④バレンタイン・デー(二月一四日)
⑤中国正月(中国旧暦一月一日)
⑥万仏節の日(祝日)(旧暦三月の上弦第一五夜)
⑦王朝記念日(祝日)(四月六日)
⑧タイ正月(祝日)(四月一三・一四・一五日)
⑨国王陛下即位記念日(祝日)(五月五日)
⑩仏誕節(祝日)(旧暦六月上弦第一五夜)
⑪三宝節(祝日)(旧暦八月上弦第一五夜)
⑫入安居(祝日)(旧暦八月下弦第一夜)
⑬母の日(祝日)(八月一二日)
⑭出安居(旧暦一一月上弦一五夜)
⑮チュラーロンコーン王記念日(祝日)(一〇月二三日)
⑯灯籠流しの日(旧暦一二月上弦一五夜)
⑰父の日(祝日)(一二月五日)
⑱憲法記念日(祝日)(一二月一〇日)
⑲クリスマス(一二月二五日)
⑳大晦日(一二月三一日)
前書きなど
まえがき
タイは今、観光地として大変人気を得ています。活気あふれるエキゾチックな街並み、きれいな海、歴史を感じさせる寺院、神秘的な遺跡がたたずむ古都、火を噴きそうな激辛の料理に、屈託のない人々の笑顔。さらに急成長する経済も大きな魅力で、ここ数年タイを訪れる日本人旅行者は、常時一〇〇万を超えています。この数はハワイ、台湾とほぼ同じで、日本人の旅行先人気度でタイは常にベスト5以内をキープしています。外務省の統計によると、平成二二年度に在タイ日本大使館に正式に届けた日本人在住者の数は四万五八〇五人。その中には、物価の安さなど、タイの暮らしよさに惹かれて移住した年金生活者も多数います。
タイは日本と同じアジアの国。住んでいる人々の目の色も髪の色も同じ黒か茶で、顔立ちもなんとなく日本人と似ています。信仰している宗教も日本と同じ仏教です。そんなこともあってか、日本人はタイ人が親しみやすく感じるようです。
ところが、いったんタイの社会へ入って生活してみると、なぜか最後の一歩のところでタイ人の中に入り込めないと言う日本人がよくいます。タイ語を一生懸命勉強して、言葉は通じるのに、深い部分で分かち合えないものがあるというのです。タイ人と結婚した日本人からも、長年一緒に暮らしてきたのに、連れあいが何を考えているのかわからなくなる時があるとこぼされることがあります。
しかし、日本人のほうだけがそう感じているわけではないのです。実はタイ人も日本人に対して同じようなことを感じる時があります。外見が似ていても、歴史や自然環境、社会の構造は違うのですから、両者の考え方や感じ方が微妙に異なるのは当然なのでしょう。いくら言葉が通じても、相手の考え方の背景にあるものを理解していないと、つらい思いをすることになったり、せっかく築いた関係にほころびができたりするのです。背景にあるものを全部知るのは不可能ですが、最低限の違いを知ること、そして尊重することで、おたがいの関係はずいぶんとスムースになるのではないでしょうか。「しきたり」を理解するのはその第一歩だと考えます。
私は中国系タイ人の父と日本人の母の間に生まれて、高校卒業までバンコクに育ちました。大学から日本で、卒業後は日本の企業に勤め、日本人と結婚しました。両親はバンコクに住んでいるため、ひんぱんにタイに戻ります――そうです、「戻る」という意識が強い、つまり「タイ人」というアイデンティティのほうがまだ強いのですが、日本での暮らしが長くなるにつれて、それが揺らぎはじめていることも自覚しています。私の中の「タイ人」が消えてしまわないうちに、タイ人のこと、タイのことをまとめておかなければとよく考えます。
日本人とタイ人がおたがいの「しきたり」を理解し、尊重して、お互いの関係がより良いものになりますように。