紹介
本書は,5部13章から構成されている。第I部では,攪乱とは何かを整理し,ついで,攪乱後に始 まる侵入についての数理モデルを紹介する。第Ⅱ〜Ⅴ部までは,火山噴火初期,火山性荒原,湿原,高山 ・砂漠・極地における各執筆者の研究成果をもとに具体的事例を紹介する。各章は,大規模から中規模までの 攪乱と遷移過程の主要なタイプを網羅している。つまり,第Ⅱ部では火山噴火による遷移初期の植物群集の特 徴を,大陸・島,熱帯・温帯・冷温帯に区分し,解説する。第Ⅲ部では,火山噴火により形成された荒原にお ける植物群集構造にとって,種子植物のみならず地衣類や菌根菌の定着が重要である点について述べる。第Ⅳ 部では,湿原での遷移の特徴と,湿原における火山噴火や火災の影響について述べる。第Ⅴ部では,継続的に 攪乱を受けている高山・極地・砂漠における植物群集の構造について述べる。14人の研究者たちが魅力に充ち た研究の最前線を紹介する。地球と生命の相互作用」の視点から,地球進化と生物進化を連結させて自然界の 多様性と進化を包括的に理解する新しい自然観を構築する。 宇宙の誕生,地球の誕生,そして生命の誕生から 人類の進化、現在までを年代順に体系的にまとめた,地球史・生命史に関する教科書の決定版。
目次
第Ⅰ部 攪乱と遷移の論理
第1章 攪乱と植物群集(露崎史朗)
第2章 数理を通してみた攪乱と生物多様性(重定南奈子)
第Ⅱ部 火山噴火による攪乱と遷移
第3章 軽石・火山灰噴火後の植物群集遷移−軽石は軽くない(露崎史朗)
第4章 熱帯火山の遷移−クラカタウ諸島における120年(鈴木英治)
第5章 火山島の一次遷移−三宅島における攪乱と遷移(上條隆志)
第Ⅲ部 火山性荒原の攪乱と遷移
第6章 菌根菌による植生遷移促進機構(奈良一秀)
第7章 火山環境と地衣類群集の形成(志水顕)
第Ⅳ部 湿原の攪乱と遷移
第8章 湿地生態系の化学的攪乱と植物遷移(原口昭)
第9章 火山噴火降灰物が湿原に与える影響(Stefan Hotes)
第10章 野火跡の湿原植生回復−釧路湿原における攪乱と遷移(神田房行・佐藤千尋)
第Ⅴ部 極地と砂漠の攪乱と遷移
第11章 高山における埋土種子動態と発芽戦略(下野綾子・下野嘉子)
第12章 砂漠における一年生植物の生存戦略(成田憲二)
第13章 高緯度北極氷河後退域における遷移(中坪孝之)