紹介
●本書の特徴
①全道をくまなく調査した北海道高山植生の第一人者による,35年にわたる研究の集大成
②北海道の高山植生を網羅的に概観できるモノグラフ
③植物相と植生に関する基礎資料は筆者自身のものに限り,同時に,既存研究を網羅的に引用し、山系・地域ごとの自然概況をとりまとめた
④北海道の高山植生の成立について、植物相と植生の両者を植物地理学的に分析する手法によって、地史的背景と生態的特性の両面から総合的に考察
⑤生物の絶滅が世界的な問題とされる現在,北海道希少植物の大半を含む高山植生の実態を明らかにすることは,希少植物保護の基礎資料としてもきわめて重要
⑥植物群落とその立地ならびに群落構成種に関する、著者自身の撮影による400枚を超える植生写真をカラーで132頁にわたって収録。学術的に貴重であるばかりではなく,研究書を超えて花と山の美しさを楽しむことができる
●リーフレット謹呈
河野昭一(京都大学名誉教授),鮫島惇一郎(自然環境研究室),中越信和(広島大学大学院国際協力研究科教授),三氏の推薦の言葉を収録したカラー・リーフレットが出来ました。ご希望の方はご連絡ください。
目次
はじめに
第Ⅰ部 植生写真編
大雪・知床・日高・夕張の北海道主要4山系+阿寒山系と離島,および北海道を 特徴づける山地の植物群落とその代表種の写真をカラーで紹介
1. 大雪山系
風衝地と雪田の配列/風衝地矮低木群落/風衝荒原・火山荒原草本群落/雪田/季節的湿性の雪田:矮低木群落/持続的湿性の雪田:雪田短茎草原/その他の雪田植物/雪田底砂礫地草本群落/雪崩地高茎草原/積雪地低木群落/ハイマツ低木林/風衝草原①/風衝草原②/高山湿原/大雪山風景
2. 知床山系
知床中部/季節的湿性の雪田:矮低木群落/持続的湿性の雪田:短茎草原/雪田底砂礫地草本群落/雪田流水沿いおよび雪崩地の高茎草原/高山湿原/火山荒原草本群落/風衝地矮低木群落/知床南部
3. 日高山系
北部−圏谷(カール)の発達/北部−雪崩地と雪田の植物群落/北部−風衝草原/北部−荒原草本群落/北部−超塩基性岩地/中部−雪崩地高茎草原/中部−山岳景観/風衝草原の植物/南部−山岳景観/南部−山岳景観/風衝草原の植物/南部−荒原草本植物
4. 夕張山系
夕張岳の蛇紋岩地−風衝地/夕張岳の蛇紋岩地−雪田/夕張岳の輝緑岩地−岩隙と崩壊地/夕張岳の輝緑岩地−輝緑岩地の植物/芦別岳の輝緑岩地−岩隙と崩壊地/芦別岳の輝緑岩地−輝緑岩地の植物/芦別岳の輝緑岩地−雪崩地
5. 阿寒山系
雌阿寒岳/雄阿寒岳/藻琴山/斜里岳
6. 利尻岳
利尻岳−雪崩地/利尻岳−低木林と風衝草原/利尻岳−崩壊荒原
7. 日本海側多雪山地
狩場山/ニセコ山系/積丹山系/暑寒別岳
8. 支笏洞爺の山地
羊蹄山/余市岳/無意根山/オロフレ山
9. 北見・天塩山地
ポロヌプリ山/ウェンシリ岳/函岳/天塩岳/ピッシリ山
10. ハイマツ低木林を欠く山地
大千軒岳−風衝草原/大千軒岳−高茎草原/風不死岳
11. 礼文島
礼文島①/礼文島②/礼文島③/礼文島④
12. アポイ岳・幌満岳
アポイ岳・幌満岳/アポイ岳・幌満岳の超塩基性岩植物①/アポイ岳・幌満岳の超塩基性岩植物②
13. 低標高の蛇紋岩地
天塩・中川地域/幌加内・和寒地域/日高・胆振地域/日高・胆振地域
14. 崕 山
崕山−全景/崕山−岩隙・岩棚の植物/崕山−岩礫地・雪崩地の植物
15. 大平山
大平山−全景/岩隙・岩棚の植物/大平山−岩礫地の植物/大平山−草原の植物/低標高石灰岩地の植物
16. 安山岩質集塊岩地
ニセコ山系熊野山/定山渓天狗岳と札幌市神威岳/羅臼岳オホーツク展望
17. その他の岩隙・岩礫地
手稲山/観音岩山
18. 火山荒原
渡島大島/駒ヶ岳/樽前山/十勝岳望岳台
19. 硫気孔原
恵山/ニセコ山系五色温泉/川湯硫黄山
20. 海岸風衝地
襟裳岬/大樹町晩成/知床岬
第Ⅱ部 総論
第1章 はじめに
植物相と植生の両者を扱う地植物学/本書の目的/生物多様性
第2章 高山植物と高山植生に関する概説
高山植物と高山帯/高山植生
第3章 北海道の高山植物相に関する植物地理学
はじめに/北海道の高山植物相/主要4山系とそれらの地域区分における高山植物相の分布型組成
第4章 分布上重要な種とその植物地理学的意味
キリギシソウ/コヌマスゲ/北海道新産として報告した高山植物
第Ⅲ部 各論
第1章 高山植生
以下の山系ごとに,位置・地質・地形などを概説する。植物研究史,成立する高山植物群落の種類組成,立地などの特徴についても言及
大雪山系/知床山系/日高山系/夕張山系/阿寒山系と斜里岳/利尻岳/礼文島/日本海側多雪山地の亜高山・高山植生/支笏洞爺の高山植生/道北の亜高山・高山植生
第2章 低標高地の特殊な立地に成立する高山性植物群落
以下の特殊な立地と山岳ごとに,それぞれの特徴をまとめる
超塩基性岩地(1):アポイ山塊と幌満岳/超塩基性岩地(2):天塩・中川地域,雨竜・和寒地域および日高胆振北部地域/石灰岩地(1):崕山/石灰岩地(2):大平山/安山岩質集塊岩地の岩隙・岩礫地植生(定山渓天狗岳,札幌神威岳など)/その他の地質の岩隙・岩礫地植生/火山荒/硫気孔原の植生/ハイマツ低木林を欠く山岳における亜高山・高山植生/海岸風衝地の植生
第Ⅳ部 考察と結論
第1章 高山植物の分布に関する研究アプローチ
植物相と植生/高山植物相研究/高山植生研究/植物学的研究
第2章 高山植物相の分布型組成分析
高山植物種の分布/日本における北海道の高山植物相の位置づけ/分布型カテゴリーについて/北海道主要4山系とそれらの地域区分における高山植物相の分布型組成
第3章 主要4山系における高山植生,立地環境および分布型組成
高山植物群落の認識方法とその結果/高山植物群落の立地環境/山系・地域ごとの高山植生における分布型組成/高山植物群落の分布型組成
第4章 主要4山系以外の山系における高山植生,立地環境および分布型組成
高山植物群落/高山植物群落の分布型組成
第5章 高山植物群落に特有な分布型組成
日本における高山植物群落の分布型組成/植生変遷史を中心とした地史的背景/高山植物群落の成立
第6章 結 語