目次
公有水面埋立法とは、どんな法律でしょうか
なぜ辺野古なのでしょうか?
辺野古埋立は、国土利用上「適正かつ合理的」なのでしょうか
環境保護は適正でしょうか
アセス法、公有水面埋立法の観点から
前書きなど
はじめに
「沖縄の陸も、沖縄の空も海も、国のものかー」。かつて沖縄県読谷村長、参議院議員をつとめた山内徳信さんが、那覇防衛施設局(現沖縄防衛局)で、テーブルをたたきながら叫んだ言葉です。この時のようすが、三上智恵さんの「海にすわる──辺野古600日の闘い」(琉球朝日放送、2006年)に収録されています。この言葉には「辺野古の海は国のものではない、私たちのものだ、だから私たちが守る」という強い決意が込められています。
2015年10月13日、翁長雄志沖縄県知事は「法的な瑕疵がある」として、前知事による米軍新基地建設(普天間飛行場移設)を目的とした辺野古・大浦湾海域の「公有水面埋立承認」を取り消しました。その理由は次のとおりです。
まず、辺野古移設の必要性の実質的な根拠に乏しく埋立ての必要性が認められないこと、沖縄県の過重な基地負担とその格差が固定化されることです。次いで、自然環境や野生生物への影響が的確に把握されておらず保全措置も適正でないこと、オスプレイ等の米軍航空機運用による騒音や低周波音に対して実効性のある環境保全措置が明らかでないことです。
これらの指摘は、知事が設置した専門家による「第三者委員会」の「検証結果報告書」(7月16日)にもとづいています。この報告書は本文が131ページ、添付資料が15点、約1000ページの膨大なものです。また、13回分で約700ページにおよぶ委員会議事録があります。この報告書は、法律や科学の専門家が、おそらくは、沖縄県と政府との法的な対決をも予測して、入念に検証し慎重に執筆したものと思われます。そのため、文章表現は、裁判で用いられる準備書面のような印象を与え、私たちが理解するにはそれなりの努力が必要です。
そこで、本書は、この報告書を読み解きわかりやすく解説すること、そしてそのなかで、安倍政権がいかに沖縄を差別し、いじめているのかを明らかにし、「差別に負けない、辺野古に新基地をつくらせない」という沖縄の人々の民意を広く伝えることを目的に作成されました。
沖縄の民意をまったく理解しない安倍首相、菅官房長官など日本政府との長い闘いに打ち勝つためには、私たちが、自ら情報を収集して解析し、意見交換して闘い方を身につけていく必要があります。SACO(沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会)合意の時も、そして環境アセス手続き、オスプレイ配備の時も、沖縄の人々とともに、私たちは情報を集めて学習し、集会を開き声明を出し、辺野古や普天間そして東村高江で連日座り込み抗議行動を続ける人々と連帯してきました。
2013年1月の「建白書」以降、「島ぐるみ会議」そして「辺野古基金」が設立され、普天間基地閉鎖、オスプレイ配備撤回、辺野古新基地建設断念を求める運動は大きく展開してきました。沖縄の人々の「自分たちのことは自分たちが決める」という自己決定権、そして民主主義を求める活動は、沖縄から日本全体へ、世界へと広がっています。2015年9月には、スイスのジュネーブで開かれた国連人権理事会で、翁長知事が「米軍基地の集中により沖縄の人々の人権と自己決定権がないがしろにされている」ことを世界に訴えました。
このような闘いの中で、第三者委員会の検証報告書と翁長知事による埋立承認取り消しは、公有水面埋立法の歴史と水辺環境の保全、また、地方自治においても大きな意義のある画期的な事件と言えます。
しかしながら、政府は、知事の埋立承認取消に対して、一方では、私人になりすました沖縄防衛局が行政不服審査法を悪用して審査請求を行い、国土交通大臣がそれを受けて知事の承認取消を執行停止させて工事を再開したのです。さらに他方では、国家権力をふりかざして、知事の承認取消の取り消しを求めて福岡高裁に提訴し、地方自治法による代執行を画策するなど、法治国家としてあるまじき振る舞いにおよんでいます。このような政府の横暴を止めさせるためにも、私たちは情報を広め、知恵を身につけて行動する必要があります。
本書の第1章では、公有水面埋立の手続きや環境アセスメント、第三者委員会の検証方法などについて、花輪伸一と真喜志好一が解説します。第2章では、真喜志が、普天間返還合意と辺野古新基地計画の経過について、また、なぜ辺野古なのかという「埋立の必要性」についての検証結果を説明し、第3章では、花輪が、公有水面埋立法4条1項1号にかかわる埋立の適正性・合理性について検証結果を説明します。第4章では、同法4条1項2号の環境保全措置が十分かどうかについて安部真理子が分析し、第5章では、三宅俊司が環境アセスメント法および公有水面埋立法の法的観点から、国の主張の問題点を指摘しています。
私たちは、この解説書が、第三者委員会の検証報告書を理解する助けになること、翁長沖縄県知事による埋立承認取り消しを多くの方々が支持すること、そして、辺野古・大浦湾海域を埋め立てさせない、新基地をつくらせない、また東村高江にもオスプレイ用ヘリパッドをつくらせないという沖縄の人々の強い意志の実現とその闘いの役に立つことを願っています。
12月1日で、辺野古テント村の座り込み抗議行動は4244日、シュワブゲート前は513日になりました。非暴力・無抵抗の住民、市民に対して、日本政府は沖縄県警と警視庁機動隊による暴力的な排除と拘束を行っています。海上では海上保安庁のゴムボートが、力ずくでカヌーや小型船を転覆させるなど、危険で違法な暴力行為が続いています。
一方、東村高江でも座り込みは8年5カ月におよび、明日にも大勢の機動隊が来るのではないか、ヘリパッド工事が再開されるのではないかと、住民たちは緊張を強いられています。
読者の皆さまも「安倍政権は、どうして沖縄をいじめるのか!」と強く抗議の声を上げ、現地の座り込み抗議行動に多くの方々がご参加下さるよう、心からお願い致します。
2015年12月1日 執筆者を代表して 花輪伸一