目次
本物のニセモノがやってきた
安倍さん、右翼の「趣味」は封印したほうがいい
教育で「危険な現実」は変えられない
愛国心を押しつける「ストーカー安倍晋三」
憲法を潰すものは誰だ!
歴史の針を一時止めよう
言わないで後悔することが一番よくない
"無能"外交で日本は世界の孤児となる
菅さん、あなたの「真情」はどこに?
人間と自然が共に生きるモデルを滋賀につくる
21世紀の石橋湛山を
伝統的欠陥と新しい堕落
最近はロクな顔のヤツがいなくなった
経済小説の暴くタブー
ブラック国家ニッポン
「検察=正義の使者」だと思ってました
ミサワホームはこうしてトヨタに乗っ取られた!
でたらめな航空行政、JALの破綻
高額納税者番付は「正直者のリスト」
節を曲げない東北人・自由民権の心
幸福の科学、まずは霊言、そして政治進出について
もっともっとひどくなる、安倍晋三
前書きなど
はじめに
社員を過労死に追い込むような、いわゆるブラック企業だけがブラック企業なのではない。たとえば、「安全」を喧伝しながら、あれだけの災害を惹き起こし、でも、なお、責任逃れに汲々としている東京電力こそがブラック企業なのである。東電は原子力発電推進と国策の下にその体質を醸成してきたから、日本という国がブラック国家だということになる。
ブラック国家の政府と企業は一体の関係にあり、最近では日本ユニシスの元社長、籾井勝人がNHKの会長になって、その非常識ぶりを天下にさらした。
籾井のような社長はこの国では珍しくなく、まともなトップをさがす方がよほど難しいが、私は籾井の姿に、ゼネコン・スキャンダルで逮捕され、被告席にすわった鹿島(建設)の元副社長、清山信二の姿が重なって見えて仕方がなかった。
あるテレビ局に頼まれて、私はその裁判を傍聴したのだが、清山と一緒に被告席にいた元建設大臣の中村喜四郎は悪びれもせず、いわば堂々としていた。取調べに対して中村は左翼の闘士でもなかなかできない完全黙秘を貫いたと後で聞いた。
ところが、隣の清山は空気を抜かれた風船のようにへなへなしている。
たしか、成田空港でマイクを突きつけられた時、邪険にそれを払いのける場面が何度も放映されたが、別人のようにしょぼんとしているのである。青菜に塩とはこのことかと思った。
〝社畜〟というコトバをつくったサミットの元社長、荒井伸也(安土敏というペンネームで小説も書く)と対談した時、
「頼むから、もうちょっとちゃんとしてくれよ」
と声をかけたいくらいだったと言ったら、荒井は、
「まさにそうです。そういうのがたくさんいて、ヒルのように会社だけではなく、日本の社会にまとわりついている。本人たちは私は別に悪いことをする気はないと言って、みんなの血を吸っている」
と断罪していた。
副社長でさえも、会社の権威と権力という空気を抜かれれば、ぺしゃんこになってしまうのである。
作家の高杉良は、三井物産をオルガナイザーとしたイラン石油化学プロジェクト、いわゆるIJPCを描いた『バンダルの塔』(講談社文庫)という小説の中で、ある中堅社員に次のような言葉を吐かせている。
「僕は、長谷川社長(三井物産の社長だった池田芳蔵がモデル)が首を吊るんじゃないかと心配です。罪の深さを考えたら、夜も眠れないでしょう。たとえ革命であれオイルショックであれ、経営者は結果が問われるわけですから、責任をとるのは当然です。それに、IJPCの歴史をふりかえったら間違いだらけで、べからず集をまとめたら、優に一冊の本ができるんじゃないですか。徹頭徹尾、失敗の繰り返しです」
これは、実際に三井物産の社員が高杉に語った言葉だという。この社員の心配をよそに、池田は首を吊ることもなく、NHK経営委員長としての磯田一郎(元住友銀行会長)の強力な推薦によってNHKの会長となり、おそまつぶりをさらけだして、辞任せざるをえなくなった。いままた、三井物産OBの籾井が会長となって、醜態を見せている。物産は〝前科三犯〟なのだが、別の企業から持って来ても違いはないだろう。
オウム真理教の麻原彰光という〝狂祖〟が捕まった時、私はこう書いた。
「サラリーマンという名の日本の企業教の信者たちは、麻原逮捕でホッとするのではなく、オウム真理教と、自分が染まっている企業教の間にどれだけの距離があるか、改めて考えてみるべきである」
残念ながら、この警告はそのまま現在も有効である。ブラック国家とブラック企業に対して、それをさまざまな角度から撃つために、この対論集を編んだ。お相手してくれた人たちに改めて感謝したい。
二〇一四年三月二八日 佐高 信