前書きなど
はしがき
アメリカの低所得者用の住宅ローン(サブプライム・ローン)の破綻から起こった金融危機は、ヨーロッパや日本だけでなく、中国やロシアなども巻き込んで全世界に波及し、世界的な金融恐慌にまで発展した。
2007年から08年にかけてアメリカの株価が暴落し(ニューヨーク証券取引所)、日本の株価はそれ以上に下げた。その後、株価は一時戻すこともあったが、すぐにまた暴落するという不安定な動きを続けている。
そこでポール・サムエルソンをはじめ、多くの経済学者が、これは1929年の世界大恐慌以来のことであると指摘している。1929年(昭和4年)10月 24日、ニューヨーク株式が暴落し、それがすぐにヨーロッパや日本にも波及して世界恐慌にまで発展していったことはよく知られている。
そこで、今回のサブプライム危機もそのようなことになるのではないか、と人びとは脅えているのである。
なぜ、こんなことになったのか、これまでにもこんなことはあったのか、そして、この問題を解決するにはどうしたらよいのか。
人びとはいま真剣に考えているのだが、もちろん解決策はそれほど簡単にはでてこない。これから経済学者はもちろん、政治家や経営者、労働組合員たちがいろいろ考えていくだろうが、それに少しでも役立てば、と思ってこの本を書いた。
「かくも大きな金融恐慌が自分が生きている間に起きたことには驚いた。だが、起こること自体には驚いていない。私は資本主義というものが本質的にこういう不安定さを持っていると常に考えてきたので、理論的には予測されたことだったからだ。」
岩井克人東大教授はこういっている(「朝日新聞」2008年10月17日)が、資本主義は本質的に不安定だから、こういう事も起こる、といったのでは、人びとはあきらめるしかない。
そうではなく、なぜこんなことが起こったのか、ということを事実の上に立って解明し、そして過去の歴史と比べてどこが似ており、どこが違うのか、ということを検討することが必要なのではないか。
これまで株式会社についてほぼ半世紀にわたって研究してきた成果を元に、急いで書き上げたので、誤りもあるかもしれない。なにより事態は目下進行中なので、予想もしなかったような事が起こるかもしれないが、読者がこの問題について考える際に役立てば、と願っている。
2008年11月15日 奥村 宏