目次
序 章 新たな「もの」の人類学のための序章
—脱人間中心主義の可能性と課題 [床呂郁哉・河合香吏]
1 「もの」からの出発
2 「もの」をめぐる逆説的状況
3 関連諸分野における「もの」への回帰
4 人類学における「もの」研究の系譜
5 新たな「もの」概念へ
6 本書の扱う問題群—脱人間中心主義的な人類学へ向かって
7 本書の構成と各章の概要
8 結びに代えて—脱人間中心主義的人類学の可能性と課題
第Ⅰ部 ひとともののエンタングルメント
第1章 ものが生まれ出ずる制作の現場
—鉄と道具と私の共同作業 [黒田末寿]
KEY WORDS:農鍛冶,手仕事,道具の循環,共成長,制作の対話モデル,ものの主体化,未完の思想
1 鍛冶見習い
2 技術者松浦清さん
3 鍛冶の基本作業
4 鉄を打つ感覚
5 ものが私を呼んでいる
6 制作者・道具・使用者の共なる成長
7 ものが生まれ出ずる文化
8 ものが生まれ出ずる文化の広がりと制作の両義性
9 成長する制作物,未完の思想
第2章 「もの」が創発するとき
—真珠養殖の現場における「もの」,環境,人間の複雑系的なエンタングルメント [床呂郁哉]
KEY WORDS:真珠養殖,流体的なテクノロジー,エンタングルメント,創発
1 「ひと」と「もの」のエンタングルメントの人類学へ
2 真珠とは何か
3 真珠養殖の民族誌—近代的真珠養殖技術の概要
4 流体的なテクノロジーと「もの」・環境・人間のエンタングルメント
5 「もの」の創発と複雑系—設計主義を越えて
6 結語—新たなマテリアリティ研究へ向けて
第3章 存在論的相対化
—現代将棋における機械と人間 [久保明教]
KEY WORDS:将棋,コンピュータ,存在論的転回,比較,可塑性
1 怖がらないコンピュータ
2 それはいかなる転回か
3 比較の可塑性
4 相対化の実定性
Column 1 人工物を食べる—遺伝子組み換えバナナの開発 [小松かおり]
EYWORDS:遺伝子組み換え,ゲノム編集,バナナ
第Ⅱ部 もののひと化
第4章 絡まりあう生命の森の新参者
—ボルネオ島の熱帯雨林とプナン [奥野克巳]
KEY WORDS:諸自己の生態学,意思疎通,狩猟民プナン,複数種の絡まりあい,マルチスピーシーズ人類学
1 諸自己の生態学にみられる意思疎通
2 エクアドル・アヴィラの森のハキリアリをめぐる複数種の絡まりあい
3 ボルネオ島の熱帯雨林の生態学
4 ブラガの森の一斉開花・一斉結実期における複数種の絡まりあい
5 森の新参者たちの過去,現在,未来
第5章 サヴァンナの存在論
—東アフリカ遊牧社会における避難の物質文化 [湖中真哉]
KEY WORDS:存在論的比較,国内避難民,遊牧,レジリアンス,最低限のもののセット
1 東アフリカ遊牧社会における存在論
2 紛争と国内避難民
3 遊牧民の国内避難民の物質文化悉皆調査
4 避難の物質文化—民族集団B,C,D の比較分析
5 最低限のもののセット
6 サヴァンナの存在論へ向けて
第6章 石について
—非人工物にして非生き物をどう語るか [内堀基光]
KEY WORDS:自然物,人工物,岩田慶治,五来重,アニミズム
1 「ひと」の手にならない「もの」
2 「ひと」の痕とその連鎖
3 「もの」に「ひと」を見る—岩田アニミズム
4 「もの」に「ひと」を見る—石の宗教
5 より「即物的」に
Column 2 観察するサル,観察される人間
—非人間であるとはどのようなことか [伊藤詞子]
KEY WORDS:人間と非人間,フマニタスとアントロポス,自己と他者,区別と関係
第Ⅲ部 ひとのもの化
第7章 「もの人間」のエスノグラフィ
—ラスタからダッワ実践者へ [西井凉子]
KEY WORDS:もの人間,ラスタ,ダッワ,髪,声,水
1 「もの人間」という事態
2 ファイサーンとポーンの住むパーイという町
3 ラスタの世界
4 ラスタからダッワへの移行
5 ダッワ実践者になる
6 結論にかえて—もの人間,生成する出来事
第8章 中国黄土高原に潜勢する〈人ならぬ—もの〉の力
[丹羽朋子]
KEY WORDS:中国黄土高原,儀礼行為,イメージ=力,変異する出来事としての「もの」,
陰陽の境界域,剪紙が描く生の力線
1 〈人ならぬ—もの〉とはなにか
2 黄土高原の〈天地〉に生動する非人格的な力の捉え方
3 徴候的な力に触れる—災いへの対処儀礼
4 鬼への変化と孝子への変身—陝北の葬送儀礼
5 生生不息の剪紙—老女たちが描く生々流転する世界
6 まとめに代えて
第9章 〈ひとでなし〉と〈ものでなし〉の世界を生きる
—回教徒とフェティシストをめぐって [田中雅一]
KEY WORDS:アウシュヴィッツ,ホロコースト,フェティシズム,商品カタログ,ゾンビ
1 人とものとの否定的な関係
2 アウシュヴィッツの回教徒〈ひとでなし〉の出現
3 複製技術とフェティシズム—〈ものでなし〉の出現
4 ゾンビ・回教徒・フェティシスト
Column 3 音となったコトバ—インドネシア,ワヤン・ポテヒの出場詩 [伏木香織]
KEY WORDS:音,言葉,文字,ワヤン,ポテヒ,布袋戯,su liam pek,suluk,インドネシア,東ジャワ
第Ⅳ部 新たなもの概念
第10章 数からものを考える
—『無限の感知』を参照しつつ [春日直樹]
KEY WORDS:数,無限,神話,支払い,リズム
1 なぜ数をもちだすのか
2 パプアニューギニア,イクワィエ人の数え方
3 数の構造とイクワィエ人の再生産
4 神と人間,男と女
5 1,2,1,2,……の反復と無限
6 数とものの結びつき
7 「項目と数」によるアナロジー
8 リズムを含めて考える
9 ものを数で考えること
第11章 五感によって把握される「もの」
—知覚と環境をめぐる人類学的方法試論 [河合香吏]
KEY WORDS:環境,五感,生態的参与観察,経験の共有,共感
1 「身の回り世界」と知覚
2 背景—「音」のもの性についての試論
3 五感をめぐる二つの視点—五感の統合性と五感の共鳴
4 知覚を扱う方法論—生態的参与観察
5 「五感」に基づく知覚世界とその社会的共同性(五感の共鳴)の普遍性に向けて
6 結びにかえて
Column 4 使い終えた授業ノートをめぐって—ゴミとして識別されていく過程を人—「もの」関係としてとらえる試み [金子守恵]
KEY WORDS:授業ノート,ゴミ,人—「もの」関係
第Ⅴ部 ものの人類学を超えて
—動物研究と哲学からの視線
第12章 「人間」と「もの」のはざまで
—「動物」から人類学への視点 [中村美知夫]
KEY WORDS:動物の視点,存在論的転回,非人間,「自然」と「文化」,「普遍」と「特殊」
1 動物は「もの」を超える?
2 動物から人類学を見る
3 人間と非人間のはざまで—サル学者の「捻れ」た立場
4 「転回」と人類学
5 「非人間」について
6 動物の主体性なるもの
7 「自然」と「文化」
8 人類学者という「われわれ」?
9 人類学のゆくえ
第13章 〈もの自体〉を巡る哲学と人類学 [檜垣立哉]
KEY WORDS:思弁的実在論,もの自体,メイヤスー,大森荘蔵
1 〈「もの自体」の形而上学〉
2 思弁的実在論ともの
3 祖先以前的な「もの」
4 類似の問い—大森荘蔵
5 非相関主義の射程
6 課題の総覧
索引
執筆者紹介