紹介
本書では、1928年から2013年までのディズニーのアニメ映画(ピクサー制作含む)で使われている音楽を徹底的に分析。論文ではなく、誰にでも読みやすく書かれており、ディズニー映画の歴史を知る読み物としても楽しめる。ウォルト・ディズニーが制作した初のトーキー・アニメ映画『蒸気船ウィリー』から『アナと雪の女王』、ピクサー制作の『モンスターズ・ユニバーシティ』まで、70作以上の映画音楽について詳細に解説。ウォルトがどのように音楽と出会い、いかに音楽を重要視していたかがよくわかる。その音楽がそのシーンで使われるに至ったエピソードなども紹介。軽い裏話から、音楽形式からの分析や和声進行からの専門的な分析、当時の情勢なども分かりやすく紹介されている。さらには、ディズニー映画で使われた革新的な技術の数々も解説。例えば、音楽に合わせて歩くシーンなどはどうやって作っていたのか。キャラクターの動きに合わせて音が出るという手法を考え出したのは何がきっかけだったのかといったことも解説されている。本書を読むことで、ディズニー映画にとって音楽がどれほど大切でどれほど重要視されているかがわかる。豊富な参考文献や、詳細な索引も付した。カバー装画は、三越が発行する『GINZA STYLE』の表紙画や、『シンデレラの告白』(角川春樹事務所)、『美食倶楽部』(文藝春秋社)等のカバー装画で知られる、長谷川洋子氏。
目次
もくじ
第1章 短編映画の音楽
はじめに
短編アニメの音楽
トーキー映画とトーキー・アニメ
音と映像のシンクロ
ウォルト・ディズニーと音楽
音と絵がシンクロした初のトーキー・アニメ
初期短編に使われた音楽ジャンル
初期短編における音楽の使われ方
シリー・シンフォニー
まとめ
初期短編映画における音楽監督・作曲家たち
《コラム》もっと短編映画を楽しみたい
第2章 クラシックディズニー(1)
『白雪姫』
『ピノキオ』
『ファンタジア』
『ダンボ』
『バンビ』
『ラテン・アメリカの旅』
『三人の騎士』
《コラム》第二次世界大戦中の短編映画
第3章 クラシックディズニー(2)
『メイク・マイン・ミュージック』
『こぐま物語』『ミッキーのジャックと豆の木』
『メロディ・タイム』
『イカボードとトード氏』
『シンデレラ』
『ふしぎの国のアリス』
『ピーター・パン』
『わんわん物語』
『眠れる森の美女』
『101匹わんちゃん』
『王様の剣』
『ジャングル・ブック』
作曲家紹介
《コラム》『南部の歌』と『メリー・ポピンズ』
第4章 ウォルトの意志を引き継いだ時代
『おしゃれキャット』
『ロビン・フッド』
『ビアンカの大冒険』
『くまのプーさん』
『きつねと猟犬』
『コルドロン』
『オリビアちゃんの大冒険』
『オリバー:ニューヨーク子猫ものがたり』
作曲家紹介
《コラム》80・90年代アメリカの長編アニメの音楽
第5章 新生ディズニー映画の旗手たち
アシュマン=メンケンのコンビ
『リトル・マーメイド』
『ビアンカの大冒険:ゴールデン・イーグルを救え』
『美女と野獣』
『アラジン』
『ライオン・キング』
『ポカホンタス』
『ノートルダムの鐘』
『ヘラクレス』
『ムーラン』
『ターザン』
『ラマになった王様』
『アトランティス:失われた帝国』
『リロ&スティッチ』
『トレジャー・プラネット』
『ブラザー・ベア』
『ホーム・オン・ザ・レンジ』
まとめ
《コラム》『ファンタジア2000』
第6章 3D時代のディズニー
『チキン・リトル』
『ルイスと未来泥棒』
『ボルト』
『プリンセスと魔法のキス』
『塔の上のラプンツェル』
『くまのプーさん』
『シュガー・ラッシュ』
『アナと雪の女王』
第7章 ピクサー映画の音楽
『トイ・ストーリー』
『バグズ・ライフ』
『トイ・ストーリー2』
『モンスターズ・インク』
『ファインディング・ニモ』
『Mr.インクレディブル』
『カーズ』
『レミーのおいしいレストラン』
『WALL・E/ウォーリー』
『カールじいさんの空飛ぶ家』
『トイ・ストーリー3』
『カーズ2』
『メリダとおそろしの森』
『モンスターズ・ユニバーシティ』
おわりに
人物索引
曲名索引
前書きなど
本書は2006年に出版した『ディズニー映画音楽徹底分析』をもとに大幅な修正を加え、その後に公開された映画を含め、大幅に加筆したものです。また本書には『徹底分析』にはなかった人物索引と曲名索引が付けられています。
修正・加筆を行った結果、『徹底分析』が256ページだったのに対し、本書は400ページにもなりました。新しく扱った作品には、まず2005年の『チキン・リトル』以降のディズニー作品があります。そして年代的にはもっと前に遡るのですが、『モンスターズ・ユニバーシティ』に至るピクサーの作品も加えました。特にピクサー作品に関しては、前書を刊行した後「ピクサーは入っていないのか」と尋ねられたこともあり、ディズニーとピクサーの関係が非常に近い現在、この声に答え、両方を含めるべきだと考えました。ただピクサーは歌の使い方がディズニーとは違いますし、作品によっては歌を全く使わずスコアのみで進めていくというものもあります。そのため執筆内容も、ディズニー作品のものとは若干違っています。
人物索引と曲名索引についてですが、今回作成したこの2つの索引によって、ディズニーに関わった、あるいは影響を与えた人たちの存在が見えてくるでしょう。また、「あの曲はどの映画の曲だったかな」ということが調べられるようになりました。これらの索引を眺めますと、本当に幅広い音楽スタイルの音楽が、いろんな人によって作られ、そこに至るには、多種多様な音楽の影響を作曲家たちが受けていたことが見えてくるのではないかと思います。
前作『徹底分析』と共通した特徴には、できるだけ音楽に焦点を絞って書くという方針があります。ディズニーに関しては、ビジネス関係の本や、ウォルトの人となり、あるいはディズニー・ランドを含めたパークについてなど、様々な本がありますが、この本では、できるだけ個々の映画作品と音楽について書かれた資料に触れるように心がけました。映画のあらすじなどが書かれていないことが不親切だと感じられるかもしれませんが、そこはあえて省略し、その分いろいろな文献を調べたり、DVD等で繰り返し作品を観て探求することに注力しました。その執筆過程において、筆者はディズニー映画のクリエーターたちの豊かな創造性、そして映画の知識に圧倒されました。もちろん成功作品の背後には論理的には説明できない「魔法」のような作用があることは否定できません。しかし、そういうことが起こる素地として、スタジオに所属する一人ひとりがたゆまない努力をし、建設的な議論をしていることが分かってきます。すべての映画が順風満帆に制作された訳ではありませんが、やはり一定のレベルを保つことができるクリエーターたちに対する信頼が老舗の映画制作会社にはあるものです。