紹介
◆被災者自ら綴った魂の記録◆
3・11さえなかったら、どんなに幸せだったか・・津波や原発の写真や映像が大量に流れる一方、被災地の人々は言葉を奪われ、沈黙を強いられているのではないでしょうか? 被災者の目がとらえた震災を文字記録に残そうと大学のプロジェクトチームが各地を回り、岩手、宮城、福島の被災地全域のあらゆる年齢、職業の男女71人の分厚い被災記が集まりました。家、車ごと津波に呑まれ・・目の前で赤ちゃんが・・電柱に遺体が・・行方不明の肉親は・・まさかの原発避難・・そして電灯がつき、家族と共にいる喜び。絶望の淵から再生を期した魂の記録であり、復興への深い祈りがこめられています。「東北魂」のサンドウィッチマンからも推薦の言葉をいただきました。
目次
3.11 慟哭の記録―目次
目 次
出版に寄せて 学校法人東北学院 学院長・大学長・同窓会長 星宮 望
まえがき 編者 金菱 清
TSUNAMI 大津波
大津波 ババのへそくり 泥の中─南三陸町志津川廻館 佐々木 米子
「あれ何の音」、我に返った時はよその家の上、星になったみんな、震災川柳は心のいやし
ここは津波常襲地─南三陸町戸倉字波伝谷 後藤 一磨
流れ去る我が家にさよなら、避難者名簿をもち救助要請に、瓦礫と遺体、おにぎりの美味しさと人の暖かみ
正座したままで逝った父、母、祖母─女川町桜ヶ丘 丹野 秀子
実家と連絡がとれない、屋根の上に家が、母をおいて帰る悔しさ、「仮土葬」に怒り、最後まで家族を守った父
大川小学校で愛する娘を亡くす─石巻市旧河北町 狩野 あけみ
夫の涙にわけがわからない、「愛!おかあさんだよ!迎えに来たよ」、懸命の捜索活動、やっと大好きなお家に
妻や孫を呼ぶ声だけが谷間に谺する─石巻市北上町十三浜大室 佐藤 清吾
橋から津波を目撃、街並みが海上に出現、親族15人安否不明、霊を弔う余生を、浜の生活史と反原発運動
大津波に何回も呑まれ意識を失う─石巻市北上町十三浜菖蒲田 千葉 五郎
泳いでガードレールに、橋の欄干で気を失う、妻と養母を亡くす、釣石神社を地域復興の核に
雄勝法印神楽をなくしてはならない─石巻市雄勝町水浜 伊藤 博夫
3時25分頃黒い山のような波が、125世帯中14世帯除き全壊、雄勝の宝、神楽復興で心を癒す
おじいさんは大好きな海に帰ったんだ─石巻市渡波 丹野 宏美
日光から車を飛ばす、母と祖父母を探しに雄勝へ、床上浸水2メートル、遺体に湯たんぽを、仲間とボランティア
目の前を家もトラックも人も……─石巻市渡波 平塚 将人
位牌を取りに…車が流される、真っ暗な自宅、サイレンとクラクションと叫び声、就活を辞めて大工に
水産会社廃業の選択─石巻市魚町 斎藤 廣
水と瓦礫が車のウィンドーに、足蹴りで脱出、ビスケット二枚、腐った魚の後片付けに二ヶ月、借入金に苦悩
泥に「かな無実です」と刻む─石巻市湊 阿部 果菜
水の中をザブザブ進む、双眼鏡で自宅を発見、父、母と抱き合い号泣、さよなら私の思い出たち
地獄のなかの救命小舟─石巻市南浜町 奥田 裕次
後ろから津波の第一波が、目の前で赤ちゃんが車と共に… 六時間漂流、震災の爪跡は深く残る
石巻は火と水と寒さ─石巻市日和が丘 遠藤 美千代
波の音がシャバシャバ、火柱と爆発音でパニック、園児の泣き声、救援も食料も情報もない、原爆の跡のよう
避難所から消えた中国人研修生─石巻市南光町 熊谷 亜美
日和山は孤立状態、火事の延焼で避難警告、溢れかえる避難者、「原発」が爆発、はぐれた研修生とおじいさん
「盗み」に入らざるをえない現実─石巻市貞山 成田 賢人
冷たい水、ストレスの溜まる避難所、スーパーの物がなくなっていく恐怖、助け合いに感謝、防災への心構え
数少ない病院の役割─石巻市山下町 亀山 富二江
町は水没、病院大混雑、患者は保険証も診察券もお金も薬もない、満床でも受入れ、看護師として明るく
海水と泥と闘う毎日─東松島市赤井 佐々木 和子
児童クラブで避難誘導、食パン一枚を四人で、二週間後自宅に入り呆然、堤防決壊で台風でも避難勧告
生きたまま焼かれる!─気仙沼市鹿折地区 加藤 弘美
ヘルパー先で家ごと津波に、ガス爆発で次々と火が、重油とヘドロまみれの体、九人で励まし合う
海を生き抜く信用取引─気仙沼市魚町 齋藤 欣也
「屋号通り」が消えた、気仙沼は大火災、九割の漁船は遠洋で無傷、静岡へ搬入、待ちに待った鰹水揚
民間ハローワーク─気仙沼市階上地区 守屋 守武
千八百人の避難者を守る、民間主体で緊急雇用創出、「ありったけの想像力を働かせ、被災者を救う事」
陸の孤島と化した半島での消防団活動─気仙沼市唐桑町宿浦 三浦 清一
バリバリゴゴ…轟音と土煙、石碑に「地震がなったら津波の用心」、まさに火の海、救助捜索と遺体収容
ヘッドライトの下で綴った震災日誌─気仙沼市唐桑町宿浦 熊谷 眞由美
メモ用紙の裏に日記、「火垂るの墓」の光景、避難所から自宅片付けに通う、4・16電気水道復旧、今回の教訓
開店休業に追い込まれた海産物加工業─塩竈市藤倉 下舘 準也
スクーターで迂回、家族は無事避難、喘息で苦しい、桂島の津波被害、店の復興と原料確保の難しさ
島の海苔養殖協業─塩竈市浦戸諸島桂島 内海 茂夫
チリ地震津波に続いて筏流出、海苔の養殖しかない、皆の思いをひとつに
祖母の手を放してしまった─七ヶ浜町菖蒲田浜 渡邊 英莉
幸せな笑顔が、必死で木につかまる、助けを求めた人の目が忘れられない、ばあちゃんのご祝儀袋
決死の介護利用者の救助─多賀城市大代 榊原 由美
川が溢れる(なんなのこれ)、肩まで浸かりながら救出、手を強く握り返す、「助かりたいの?」ひどい言葉
遊園地のコーヒーカップのように回る車─産業道路 多賀城市 川嶋 由子
なだれ込む津波、ここで死ぬわけにはいかない、一瞬のチャンス、見つかった車は傷だらけ
コンビニの屋根に避難する─仙台新港 黒瀬 英文
搬入の箱と台車で階段を作る、石油コンビナート炎上で空が赤色に、みんなで手をつなぐ、二度の窃盗事件
夢半ばで逝った息子を想う─名取市閖上 小原 武久
愛犬を抱いた息子は、「外は寒いのに、パパたちだけがお風呂に入ってごめんね」、一六日ぶりの悲しい対面
仙台空港での三日間─仙台空港 中澤 輝博
運命の別れ道、空港の「自治組織」、仙台名物が非常食、「ここの救出優先順位は低い」、最終救出バスに
自衛隊ヘリによる脱出─亘理町荒浜 森 健輔
自転車で写真撮影に、津波なんか来ないだろう、荒浜の惨状を記録し続ける、友と火葬だけのお別れ
代々続いた海苔養殖業の復興へ─亘理町荒浜 菊地 萬右衛門
神様がお話を聞いてくれれば、懸命の筏片付け、皇室献上の海苔が復興の原動力、霊を慰める切子提灯
黒いものがモジャモジャ向かってきた─山元町八手庭 阿部 行男
津波と気づかず向かう車、一面海のように、連絡手段がない、テレビ映像に心折られる、復興へ何ができるか
究極の遺体身元照合ボランティア─宮古市磯鶏地区 千葉 胤嗣
「千葉さんでなければできない仕事」、遺体安置所と避難所を往復、毎日御遺体を拭く
万里の長城を越える大津波─宮古市田老大平地区 山崎 智水
明治三陸大津波の演劇、寝るだけの避難所生活、公務員は被災者じゃないの? 防災・減災の研究をしたい
町全体が精霊流しのよう─大槌町本町 臼澤 良一
家が将棋倒しのように、タロ絶対助けるぞ、水と炎が迫り叫ぶ、家族っていいな、まごころ広場うすざわ
不安と恐怖に包まれた孤独な一晩─釜石市鈴子町 菊池 真智子
車が沈む、プールの底にいる感覚、周りは海、大型タンカーがぶつかる音、店の再開、釜石の水産業復興を
重油まみれの衣類を毎日洗う─釜石市浜町 佐々木 要
家族との連絡に四日間、引き波で海の底が見えたと知る、遺体と瓦礫だらけ、生簀が家の中に散乱
普段着やジャージ姿の卒園式─釜石市上中島町 佐々木 幸江
子供たちの午睡中、嘔吐する子や夜泣きのゼロ歳児、卒園式をしてあげたい、「げんきでほいくえん」
間一髪の小学生の避難誘導─陸前高田市小友町 渡邉 淳
二転三転する避難、小友小学校一階全壊、たくさんの温かい支援に感謝、生かされた命を大切に
港湾都市・大船渡やっぺし─大船渡市盛町中道下 浦島 康弘
静かに海水があふれ激流と化す、7メートルの丸太が突き刺さる、工具回収、ヘドロかき出し…目が回る
供養碑の下の石を拾い集める日々─大船渡市三陸町越喜来 及川 彌
浮いた冷蔵庫に乗る、迫る天井、屋根から松の木へ飛び移る、ローソクを火の玉と間違える母
FUKUSHIMA 原発
福島第一原発に立ち向かう─福島第一原子力発電所 山下 幹夫
東通村は津波被害なし、福島第一へ乗り込む、防護服と防護マスク、ドンキホーテと建屋、内部被曝に注意
生まれた時から原発があった─大熊町 大川 順子
原発で働く父を心配、翌日母と新潟へ、言葉になまりがなく原発関係者の多い町、原発全部を否定しないで
避難先も避難区域─大熊町熊三地区 佐久間 和也
原発から4キロ、全戸避難指示、大熊→福島経由→南相馬→相馬→前橋→いわき、収まらない気持ち
故郷はサバンナの大草原─大熊町大野地区 橘 慶子
三ヶ月半ぶりの一時帰宅、袋いっぱいに詰める、冷蔵庫の中の卵が… 肝心の妹の制服がない
果てなき流浪へ─浪江町川添 新田 泰彦
10キロ圏内町民二万人の一斉避難、12日15時36分の衝撃波、県外避難、故郷・職場・学校はどうなる
障害者として転々と避難し続ける─浪江町権現堂 新谷 師子
原発が爆発、浪江→南相馬→福島→上山→南陽→山形→いわき、不安やストレスは消えない
きずなファーム─浪江町牛渡 亀田 和行
透析の病院もガソリンもない、原発事故による棄民に、気分転換と癒しの農業、生きていく原点づくり
飯舘のトルコキキョウは人生そのもの─飯舘村比曽 佐藤 照子
気持ちを鬼にして可愛い牛を売る、飯舘への恋しい気持ちは富士山を越える、誰をも責めず何をも非難せず
我が家を支えてくれた牛と最後の別れ─飯舘村深谷 斉藤 次男
人生の真逆の坂、44・7マイクロシーベルトを後で知った、日本で最も美しい村が一瞬に、哀しみに終わりを
原発避難・捜索・警戒区域─南相馬市小高区 山本 祐一
水素爆発で頭は真っ白、避難所生活の長所、原発がなかったら救えた命、当たり前の生活が最高の幸せ
真実は避難者には知らされない─南相馬市原町区 池田 弘一
大渋滞でパニック、避難所でヨウ素剤配布、「イチ・ゼロ・ハチ、イチ・イチ・ハチ」、アパート二軒分に一七人
脱・ニート─南相馬市原町区 大石 貴之
最悪のニュース、原発は原爆? カーテンを閉め閃光に怯える、一人で東京へ、親が倒れたら生きていけるか
母子自主避難を決意するまで─南相馬市鹿島区 明石 美加子
南相馬→福島→南相馬→宮城県加美町、子どもの健康を守るために、悩んだ末の母子疎開
大学を中退して群馬へ─南相馬市鹿島区 三浦 育子
水平線の白いモヤモヤ、「お願い助かってー」、液状化現象、友にさよならも言えず、大好きな″日本の田舎?
九九日間の避難所運営─相馬市小泉 只野 裕一
戦場の様相、相馬を離れられない、社協職員のみの「はまなす館」、ピークは千百人、避難所の主人公
漁業の復興を阻む原発問題─相馬市尾浜 池田 精一
富士山を横に伸ばしたように迫る津波、油まみれで逃げる、浜全体が一変、魚を食べるか食べさせないか
心に燻る「政府も誰も信用できない」─福島市飯野町 鴫原 玲子
原子力緊急事態宣言、見えない、感じない物質の恐ろしさ、子どもを一時避難、諦めにも似た感情
福島との県境で放牧場を復旧─伊具郡丸森町 大槻 謙喜
地割れの被害、飼料がなければ死活問題、生乳を廃棄、一時牧草給与と放牧禁止、生活環境と食糧問題
原発見学中に地震に遭う─女川原子力発電所 藤村 魁
原発内で震度7? 「ここは安全です」、原発を避難所に開放、津波の誤報で高台へ、一歩早ければ命を…
MEGA EARTHQUAKE 巨大地震
ダム決壊、もうひとつの津波─藤沼湖 須賀川市滝 松川 美智夫
山津波で死者七名、濁流が地区を呑み込む、連日の捜索活動、「人災ではないか」怒りの声
青少年自然の家で再び震度7─栗原市花山字本沢沼山 佐藤 敏幸
再出発から一年経たず、中国研修生の協力、修学旅行生を受入れ、利用者との絆・よりどころ・自然を伝える
新幹線のトンネルに一四時間閉じ込められる─秋田新幹線 仙岩トンネル 佐々木 透
トンネル内で停車、不運な大学受験、盛岡で避難所泊、人生初のヒッチハイク、栗原は地震の爪跡
老朽化が危惧された仙台駅にて─仙台駅 佐藤 恵
デッキで恐怖に泣く、友人の目の前で天井看板が、北斗七星に感動、買い出しに並ぶ毎日
高層マンションで震度6の揺れ─仙台市青葉区国分町 金菱 清
阪神・淡路大震災に続く二度の経験、長周期地震動と制震、屋上から見た水と煙と炎、123階分の階段
エコノミークラス症候群による心肺停止─仙台市宮城野区 佐藤 美怜
まさかの避難所、階段にしゃがみ込む母、トリアージは最悪の黒、一人ぼっちの静寂、家族の大切さ
在宅酸素療法患者のいのちを守る─松島、石巻、女川、三陸地域 岩渕 茂利
津波回避のルートは、翌日から患者さんに対応、ヘドロ臭のボンベ配送、まるで野戦病院
避難所を横断して聞き取りを続ける─宮城県全域 木村 彩香
つなプロに参加、ニーズを探し出すアセスメント、避難所の個性、大島での濃い一週間
脱・就活─大崎市古川 小山 悠
宮城の誇りと悔しさ、内陸部古川の被害、ガソリンがない、熱がさめた就活、現実に向き合い復興を
テーマパークのなかの非日常─東京ディズニーリゾート 伊藤 智裕
Twitter で情報収集、液状化で泥水、ホテルのロビーで仮眠、腕がちぎれそうな満員電車、震災でリセット
プロジェクトを終えて 東北学院大学 震災の記録プロジェクト
大内千春・亀山武史・佐藤航太・小山悠・佐藤恵・植野雄太・遠藤裕太・伊藤智裕・齋藤宇成・渡邊英莉
あとがき 金菱 清
装幀・地図制作 谷崎文子