紹介
◆「自殺の少ない国」のセーフティネット◆
古いしきたりを否定し、高福祉と家族や性の「自由化」を謳う北欧型の社会モデルが、いまや福祉の高額な負担、高い自殺率など、矛盾に突き当たって立ち往生しています。一方イタリアは少子高齢化やパラサイトシングル現象など日本社会との共通点が多い一方で、先進国中、自殺率がもっとも低い国です。そこには、北欧型とは逆を行く?しがらみ?ともいえる濃密な地域コミュニティが、政策に頼ることのないセーフティネットとして機能しています。それはどのように形成され、維持されているのでしょうか。日本の、とくに都会ではいまや消滅してしまったかにみえる「地域」の力の再生を考える上でも、示唆に富んだ一冊です。好評を頂いた『違和感のイタリア』(2008年刊)の続編です。
目次
しがらみ社会の人間力―目次
はじめに
第1章 非人間化時代の家族と心のセーフティネット
1 イタリアの家族の特徴
2 イタリア人が家族主義である理由
3 至近距離から見るイタリア家族の実態
4 社会福祉インフラを代替する心のネットワーク
第2章 社会のタイプとセーフティネット
―目指すべきモデルではなくなった北欧型社会福祉
1 前提となる西洋家族制度のルーツ
2 北欧型社会モデルの問題点
3 希薄化する家族の絆とその背景
4 妊娠出産をめぐる価値観の変化と少子化
5 人間は人間とどう向き合っていくのか
6 実現可能なファミリーフレンドリー政策
第3章 地域コミュニティとアイデンティティ形成
1 カトリック教が現代社会に提供するもの
2 カトリック教のルーツとイタリア半島の自然的制約
3 守護聖者とは何か
4 地中海信仰のモザイク
5 アイデンティティ形成の核となった地域リーダーたち
第4章 「あの世」イメージとコミュニティ感覚
―日本人には分かりにくいカトリック教
1 日本人の宗教観とカトリック教
2 現代人の信仰心と心の拠り所
3 内側から見たイタリアのカトリック教
4 肉体感覚的宗教
5 祟らない死者観
6 信仰としてのあの世とコミュニティイメージ
7 信仰の多様性はどこまで認められるか
8 天災と人災の世界観
インタビュー イタリア人にとって信仰とは
ピエラ・ペトリ(Piera Petri一九三五年ミラノ生まれ、女性)
イダ・ザイナ(Ida Zaina一九二九年サン・ジョルジョ・ディ・ノガーロ生まれ、女性)
ルチア・ボッチ(Lucia Bocci一九三一年ミラノ生まれ、女性)
ジャコモ・メルリーニ(Giacomo Merlini一九八七年ミラノ生まれ、男子学生)
第5章 茶の間の共産党と元祖社会主義者キリスト
1 ベストセラー小説にみる保守と左翼
2 茶の間の代弁者イタリア共産党
3 新たな切り口による共産党研究の登場
4 イタリア共産党の軌跡
5 共産党定着の土壌を作った社会主義
6 元祖社会主義者キリストとモラルサイエンス教育の普及
第6章 地域リーダーのモラル学校
1 共産党が遭遇した戦後のイタリア
2 戦後イタリアの共産党リーダー
3 地域リーダー育成工場―共産党学校の実態
4 個人主義の排除に努めた研修生たち
5 モラル教育のメソード
6 カトリック教と共産党
第7章 モラルとリーダーシップ
―現代版ユートピア“協同組合”
1 戦後イタリア共産党の強さの秘密
2 国家はマラリヤ?
3 戦後共産党はなぜ協同組合を戦略としたのか
4 協同組合はどんな経済システムか
5 『ユートピア』と理想社会の条件
6 伝統的同業者組合と近代協同組合
7 基本的経済システムとしての協同組合の提唱
8 プロセスの社会主義―協同組合
9 社会実験―何が地域事業を成功させるのか
10 民主主義を機能させる条件とは
あとがき
主要人名一覧
写真提供:ご好意により特別に写真掲載許可を頂いた機関
Archivio Parrocchia Sant?Ignazio di Loyola - Milano(ミラノ聖イグナチオ教会資料室記録写真資料)(7~9頁)
Comune di Reggio Emilia, Biblioteca Panizzi, Fototeca(レッジョ・エミリア市立パニッツィ図書館写真館):Camillo Prampolini(カミッロ・プランポリーニ)の写真(163頁)