紹介
◆盛岡中学は北国版「坂の上の雲」だった!◆
啄木と賢治は同じ岩手・盛岡中学出身の文学者・詩人であり、ともに優れた教師でもありました。教育が国家をつくるという理念のもとに国家主義的な教育が強力に推し進められた時代に、啄木は「日本一の代用教員」という自負をもって、賢治もまた国定教科書や「教授細目」によらず、生徒たちの自主性を重んじた「人間をつくる」教育を実践しました。本書は、教師・啄木と賢治を軸に、江戸時代からの寺子屋や私塾から、自由民権運動の学塾、大正期の自由教育運動、生活綴方運動など、「もう一つの教育」を視野に入れつつ、近代の教育史をたどり直し、岐路に立つ現在の教育を考え直そうとするものです。
目次
はじめに
第一章 教育の明治維新―「学制」から「学校令」へ
1 江戸時代の教育―基本は人間教育
2 「学制」による学校の設立―人材教育へ
3 「教育令」と「学校令」の制定
4 各種学校の誕生
5 徴兵令と軍の教育体制
第二章 自由民権運動の教育
1 民権結社と学塾
2 仏学塾と大江義塾
第三章 大日本帝国憲法と教育勅語
1 大日本帝国憲法
2 教育勅語―天皇と国家のための教育
第四章 日清・日露戦争の時代
1 日清戦争
2 浄土真宗と日蓮宗の再興
3 キリスト教の日本化
4 社会主義の台頭
5 日露戦争
6 幸徳秋水と「大逆事件」
7 孫文と魯迅と辛亥革命
8 学校の拡大と整備
第五章 教師・石川啄木
1 啄木の受けた教育
2 詩集『あこがれ』の出版
3 「日本一の代用教員」
4 北海道の「漂泊」
5 啄木の教育論
6 朝日新聞校正係
7 啄木と「大逆事件」―社会主義・無政府主義へ
8 啄木最後の仕事
第六章 大正デモクラシーの時代
1 大正デモクラシー
2 沢柳政太郎の自由教育
3 自由教育の広がり
4 高等教育の拡大
5 社会主義と教育運動にたいする弾圧
第七章 教師・宮沢賢治
1 賢治の受けた教育
2 花巻農学校での教育と文学活動
3 賢治の教育論
4 農民教育
5 自己犠牲の精神
6 法華経に生きた農民の教師
第八章 満州事変―十五年戦争へ
1 満州事変
2 北一輝の国家改造論
3 「国家改造」―テロとクーデターの時代へ
4 教育も研究も「暗黒時代」に
5 東北農村の疲弊と青年将校たち
6 生活綴方運動―教師・啄木と賢治の後継者たち
第九章 太平洋戦争
1 板垣征四郎・米内光政・及川古志郎
2 対米英開戦
3 優勢だったのは緒戦だけ
4 学校も戦場に
5 敗戦へ
第十章 戦後の「新教育」―教師・啄木と賢治への回帰
1 戦争責任と反省
2 土岐善麿・高村光太郎・草野心平・石原莞爾の戦後
3 戦後教育の出発
4 「日本国憲法」と「教育基本法」―教育の目的は「人格の完成」
5 六・三・三・四制
6 「新教育」ヘのとりくみ
注
あとがき
図版出典
関連年表
事項索引
人名・著作索引
装幀―虎尾 隆