紹介
すばらしい芸をするロボットや、自動運転する自動車の研究開発が進んでいます。機械が知能をもつようになれば、私たちの生活は快適になるでしょうか。トーストにバターを塗ろうと冷蔵庫を開けると、知能冷蔵庫が、「あなたは脂肪の取りすぎです」と言って、出してくれないかもしれません。機械と人間と、主導権はどちらに? 機械と人間は、仲良くやっていけるのか? とかく新技術のすばらしさが宣伝されますが、人間と機械の共生のありかたにこそ、デザインの目を向ける必要があります。『誰のためのデザイン?』で使いにくさの原因がデザインにあることを指摘し、大きな影響を与え続けているノーマン博士が、間近に迫る知的機械と人間との共生社会を深く考察し、新しいデザインの原理を示します。ユーモアを交えたノーマン節も健在です。
目次
◆目次
日本語版への序文
第1章 用心深い車、口うるさいキッチン
――機械はいかに支配権を握るか
第2章 人間と機械の心理学
第3章 自然なインタラクション
第4章 機械のしもべ
第5章 自動化の役割
第6章 機械とコミュニケーションする
第7章 日常のモノの未来
追記 機械の言い分
デザインルールのまとめ
謝辞
注
訳者あとがき
推奨文献
参考文献
索引
前書きなど
日本語版への序文
「この本を書き始めたのは、ちょうど日本を訪れていた時だった。日本は、その先進的な自動車、電子機器、ロボット装置をもって未来を描きつつある。この本のスタートにふさわしい地だ。滞在中私は、自動車の最先端の研究者たちと、自動運転するようになるであろう将来の自動車について議論した。また、自律的クルーズコントロール、車線保持、自動駐車など、かなり自動運転に近い現在の自動車で培った彼らの経験が今後どうなるかについて話し合った。
私は愛知でのエキスポ2005にも行った。そこには自動的、知的装置の可能性を示すたくさんの例があった。バスは運転手なしで走り、ロボットはエキスポの客とインタラクションしていた。さらに、日本の研究者たちが最新の研究成果を披露していた。愛知万博は将来のテクノロジーの可能性を示すことを意図したもので、とても印象的だった。
その後数年間、私はこれらテクノロジーが日常生活にどう入ってくるかを研究した。アジア、ヨーロッパ、そしてアメリカ中の科学者や技術者を訪ね、話をした。そして、技術の力と精巧さについては皆が信頼を寄せているが、これらの新しい機械がインタラクションしなければならない人間については、ほとんど注意が払われていないことが分かった。
科学者や技術者、企業のトップと話をしていて、私は困惑してしまった。話の中心はいつも技術の驚異にあって、人々とのインタラクションは無視されていたのだ。機械は完璧なものであると見做されていた。問題が起こったら非難されるのはいつも人間の方だ。このことについてはもっと研究し、もっと究明しなければならない、と判断した。その成果がこの本である。・・・・・・・」