紹介
日本のメディアは、言論表現の自由が脅威にさらされるなか、
権力監視の役割で機能不全を起こしている。
この現状は、世界から見ても異様である(報道の自由度
ランキングで日本は67位、国境なき記者団、2018年)。
日本でジャーナリストが、
表現の自由とメディアの独立のために闘うには、
どうすればいいのか。
日本のポジティブな実践を確認しつつ、
韓国、台湾、フィリピンなどアジア各国で近年立ち上がった、
社会変革を目指すニュース組織の
先鋭的な新モデルの実践を学ぶ。
早稲田大学での国際シンポジウム記録と書き下ろし論文を収録。
探査ジャーナリズムとは徹頭徹尾、
「権力の監視」を使命とする。
尊厳が傷つけられ、侵され、
奪われている人々の状況を発掘し、直視し、
事実によってその現実をパブリックに
向かって暴露していくのである。
目次
―突破口としての探査ジャーナリズム 花田達朗
第Ⅰ部 アジアで探査ジャーナリズムの台頭が意味するもの―背景・現状・展望―
1 韓国探査ジャーナリズムセンター「ニュース打破」 鄭寿泳
2 台湾の「報導者(The Reporter)」 林怡蕿
3 日本の「ワセダクロニクル」 木村英昭
4 はばまれた朝日新聞のウォッチドッグ・ジャーナリズムへの挑戦 マーティン・ファクラー
5 ジャーナリズムと市民社会の再接続 花田達朗
6 パブリックをめぐる空間の生産 田中裕
第Ⅱ部 アジア地域における探査ジャーナリズム/調査報道
1 アジアにおいて調査報道ジャーナリズムを支える新モデル
キム・ヨンジン(ニュース打破)/ジェンマ・バガヤウア=メンドーサ(ラプラ)/シェリー・リー(報導者)
渡辺周(ワセダクロニクル)/キャサリン・キャロル(CPJ、元AP通信)
2 国内の「マスコミ」より海外の同志 渡辺周
3 討論「日本における調査報道ジャーナリズムの経験」発言概要
依光隆明(朝日新聞) /石丸次郎(アジアプレス) /
熊田安伸(NHK) /マーティン・ファクラー(元ニューヨークタイムズ)
4 三つの挨拶
開会挨拶◉日本のジャーナリストに発せられた国連人権理事会ケイ勧告を受けて 花田達朗
世界探査ジャーナリズムネットワークからの挨拶 アレッシア・チェラントラ
閉会挨拶◉「プレスの自由」を守るために団結し、脅威にさらされている僚友たちに支援を提供する
―それがジャーナリストではないのか? ジョエル・サイモン
あとがき―国際シンポジウムを6項目で振り返る スティーブン・バトラー