紹介
ヴァチカンの儀典長をあられもない姿に加筆したのは誰か?
英語文献を駆使して、ミケランジェロ芸術のミステリーを解く。
ミケランジェロ89年の生涯は信仰と美の追求であり、
そこに横たわる感動と罪の意識の葛藤であった。
その救いはアウグスチヌスの神学の人文主義的闊達さの内にあった。
アウグスチヌスは人は美の感動から神に到るとし、
また神が創造を終えられた時、“すべてよし” とされたことを
神学の根底においた。
神は人間を神ご自身の似姿につくられた。
これが美の基準である。
ミケランジェロが描いた「最後の審判」で
キリストは裁いていない。ヨハネは言った、
“キリストを信ずる者は、裁かれることは無い”と。
死の直前まで手を入れ続けていた「ピエタ」は……。
目次
序 章
第1章 愉悦と懲罰の芸術
第2章 メディチ家のフィレンツェ
第3章 神はご自身の似姿に人間を創られたのだから
第4章 血脈の誇り
第5章 木彫の磔像
第6章 ローマへの道
第7章 説教師サヴォナローラの終末論
第8章 二十代で彫刻家として名声確立
そしてレオナルドとの確執
第9章 割礼の無いダヴィデ像とダヴィデの血脈
第10章 アダムに見るミケランジェロの男気
第11章 教皇ユリウス二世の霊廟
第12章 システィーナ礼拝堂のフレスコ画
第13章 異様な自画像と
美丈夫トンマーゾ・デ・カヴァリエーリとの邂逅
第14章 システィーナ礼拝堂のフレスコ画の
修復工事が完了して
第15章 鼻つぶれのミケランジェロと
ノアの次男ハムとその裔
第16章 ヴィットリアの愛に浸り
第17章 老いの知と老いる哀しみ
第18章 ミケランジェロ芸術の手段とかたち
第19章 思いつくままに
終 章
あとがき
文献案内
註