紹介
無形文化遺産条約は、みんなでつくるD.I.Y.感覚の条約である
「無形文化遺産条約」(無形文化遺産の保護に関する条約)は2003年にユネスコ(国際連合教育科学文化機関)で採択され、「無形版・世界遺産」として知られている。しかし実際はどのような内容なのか。世界遺産の本は多いが無形文化遺産の解説書はほとんどない。無形文化遺産の「一覧表」には例えば、スペインの「フラメンコ」、「インドネシアのバティック」、「グルジアの多声歌唱」、マリの漁業儀礼「サンケ・モン」が、日本からは「能楽」「アイヌ古式舞踊」「早池峰神楽」などがある。「世界遺産」の成功の要因に、条約がスケルトン構造だったことが挙げられる。スケルトンである条文には、概念や定義、条約のコアの制度について、最小限度の事項しか記載されていない。無形文化遺産条約も、モデルとなった世界遺産条約と同じく一覧表制度を採用しているが、その意義と形には違いがある。無形文化遺産には単に世界遺産の無形版とはいえない独特の性質がある。それが「伝承者であるコミュニティの役割」「セーフガーディングの保護」である。本書は、無形文化遺産が生まれた背景、条約のしくみ、リストについて、世界遺産と比べながら解説する。
目次
(1章)条約ができるまで
(2章)条約の仕組み
(3章)2つのリストと登録簿
(4章)無形文化遺産の課題