紹介
本書は,関係精神分析の大家ミッチェルの技術論的集大成であり,さらに現代精神分析思想の諸潮流(対象関係論,自我心理学,自己心理学,関係論的精神分析)を概観するための優れた入門書ともなっている。 対人関係学派の精神分析は,文化や社会が人のこころに及ぼす影響を重要視する。ミッチェルは,関係精神分析という視座に基づき,新しい精神分析の姿を描き出した。本書のテーマは,精神分析の分析過程のなかでは,治療技法はどのように考えられるのだろうかという問いにある。 治療作用,相互交流という鍵概念を多学派と比較しながらわかりやすく解説し,究極の目標と言うべき,臨床の豊かさを生みだすための適切な治療技法を探る。読者は本書を読むことで,精神分析へのミッチェルの貢献をより深く理解し,臨床に役立てることができるであろう。 巻末には,理論と実践の応用に結びつくであろう,監訳者二人によるミッチェルと対人関係学派についての詳細な解題を付す。
目次
プロローグ:相互交流と技法の問題
第1章 序論:異端から改革へ
第2章 治療作用:新しい見方
第3章 対人関係学派における相互交流
第4章 クライン派における相互交流
第5章 相互交流の多様性
第6章 分析者の意図
第7章 分析者の知識と権威
第8章 ポストモダニズムの時代におけるジェンダーと性的指向:困惑する臨床家の苦境
エピローグ:私的な総合に向けて
解説とあとがき/横井公一,辻河昌登