紹介
・20世紀を代表する哲学者、バーナード・ウィリアムズによるカリフォルニア大学の名講義。
・西洋哲学が見落としていた「倫理」をギリシア古典に発見し、近代道徳の呪縛から解放する〈反道徳的な倫理学〉。
・解説=納富信留(東京大学大学院教授)
近代以降の進歩主義的な見方では、古代ギリシア人は未開の心性をもち、より洗練された道徳が人間性を陶冶してきたと捉えられてきた。
ウィリアムズはこのような道徳哲学の提示する人間が、生きられた経験から切り離された、無性格な道徳的自己であるとして批判する。それとは対照的に、具体的な性格と来歴をもつ人々を描く、ホメロスの叙事詩やアイスキュロス、ソポクレスらの悲劇作品を読み解き、そこに流れる豊かな倫理的思考を明らかにする。
道徳哲学やプラトン、アリストテレスらの哲学を批判的に参照しながら、恥と罪、必然性(運命)と義務、運命と自由意思、責任と行為者性といった概念をめぐる議論を通して、古代と現代を通じてこの現実を生きる人間の生の姿を描き出す、カリフォルニア大学の名講義。
目次
はじめに
二〇〇八年版への序文 A. A. ロング
第一章 古代の解放
第二章 行為者性のいくつかの中心
第三章 責任を認識すること
第四章 恥と自律
第五章 いくつかの必然的なアイデンティティ
第六章 可能性・自由・力
解説 古代ギリシアから私たちが学ぶこと 納富信留
訳者あとがき
古典文献一覧
参考文献一覧
附録1/附録2
注
索引