紹介
▼近世ドイツ・プロイセンの農場領主制(グーツヘルシャフト)の歴史を、森林の役割にも注目しながら、数多くの原史料により濃密に描き出す。
▼ヨーロッパ経済史の伝統あるテーマに新たな光を当てる国際水準の研究。
近世ドイツ・プロイセンでは、領主の直営農場を農民の賦役労働を用いて経営する農場領主制(グーツヘルシャフト)が普及していたことが知られている。一方で、賦役に従事する農民は御領林の木材を安価(または無料)で得る権利をもっていた。
グーツヘルシャフトの経営はこの義務と権利のあり方と密接に関わっており、19世紀の農民解放への道もその中にあったことを、16~19世紀にかけての御領林経営に関する緻密な史料分析によって明らかにする。
目次
序章 農場と森林の支配としてのグーツヘルシャフト
1 「普魯士(プロイス)国」の森――明治の留学生たちの眼差し
2 「調整令」に見るグーツヘルシャフトの構造――農場と森林の支配
3 研究史と本書の課題――グーツヘルシャフト研究の弁証法的発展の
中で
4 対象地域の概要と史料
第1章 農場領主制の成立と森林条令(一六世紀)
はじめに
1 東方植民による農地開発と中世後期の農地荒廃
2 農場領主制の成立と人口増加
3 森林資源の逼迫と森林条令の制定
小 括
第2章 荒廃農場の復旧と森林への依存(三十年戦争~一八世紀半ば)
はじめに
1 長期にわたる農場復旧過程
2 入植者の誘致と四直営農場の廃止(分割)
3 地代の減免と建築減免
4 御領林からの建築用木材供給条件の緩和
5 統一的な世襲権付与計画の挫折
6 ラッシーテン(非世襲農民)の経営実態――その多様性
小 括
第3章 人口成長・農場経営発展・森林経営改革(一八世紀後半)
はじめに
1 人口・植民・森林
2 農場経営の発展
3 「有能な」農民のリクルート――領主による農民農場維持費用の節
約
4 御領林経営の改革と森林賦役・林役権
小 括
第4章 プロイセン改革と森林賦役・林役権の持続(一九世紀)
はじめに
1 人口・森林・農業の動向
2 直営農場の譲渡・解体と農場賦役の廃止
3 御領林経営の発展と森林賦役
4 「調整」「償却」のための交渉――農民たちの建築用木材受給権へ
の固執
5 粗朶拾集の継続と下層民への配慮
6 林内放牧・落葉拾集の継続と森林への負荷
7 林役権の償却――下層民・困窮民の受け入れ
小 括
終章 結論
あとがき
付録史料
貨幣・度量衡単位
図表一覧
史料・文献リスト
索引