紹介
▼科学と社会の未来を見通す珠玉の講演録!
▼文系・理系双方から日本を代表する研究者らが結集。トランス・サイエンス時代を迎え、科学技術開発の方向や、科学と社会との関係を問い直す。
▼自然科学系の大学生はもちろん、科学技術と社会のイノベーションに取り組むすべての人々に贈る金言集。
▼人類の命運を握るのは、峻厳な自然ではなく、人間自身の価値観です。今や、自らの倫理観や人生観、文明観を糺し、「あるべき人間社会」を設計するための「価値観のイノベーション」そして「自然と人間性への回帰」こそが決定的に大切だと思います。
100年後の後継世代まで確実に「生存の条件」を引き渡すべく、若い世代の新鮮な知性と感性が人類に大きな飛躍をもたらすことを期待して、本書をお届け致します。(「はじめに」より抜粋)
野依 良治
目次
はじめに―― 科学をめざす君たちへ 野依 良治
イントロダクション 科学技術と社会の新たな対話を求めて
黒田 昌裕
第Ⅰ部 越境せよ
第1章 臨床医学の起源と精神
―― 科学の背後にある歴史・文化・思想 永井 良三
はじめに
1 日本の近代医学事始め
2 西洋医学の起源と近代科学
3 統計学を医学に導入する
4 近代日本の夜明け、再び
5 日本の自然観と自然科学
おわりに
第2章 越境し、融合する科学
―― ある認知科学者の若き日の体験 安西 祐一郎
はじめに
1 越境と融合
2 認知科学への挑戦
3 熟達と問題理解の研究へ
おわりに
第3章 言葉の壁に挑むコンピュータ
―― 機械翻訳から人間と対話するロボットへ 長尾 真
はじめに
1 翻訳とは何か?
2 翻訳の難関ポイント
3 機械翻訳の方法と課題
4 言語は分割統治できない
おわりに―― 言語産業の未来
第Ⅱ部 思索せよ
第4章 科学の成り立ちと知の変貌
―― トランス・サイエンス時代のリテラシー 野家 啓一
はじめに
1 「科学」は「サイエンス」ではない?!
2 知のヘゲモニー争い
3 科学の変貌と知の市場化
4 スローサイエンスとしての人文学
おわりに
第5章 諸学問と倫理・哲学
―― 「ポスト専門化」時代の知の統合 山脇 直司
はじめに
1 19世紀以降の学問観の変遷
2 「ポスト専門化」の時代
3 「知の統合学」の方法
4 社会科学の分断状況
5 ポスト専門化時代の倫理・哲学
おわりに―― 民主主義社会の中の科学者
第6章 「役に立つ」とはどういうことか?
―― モンゴルで見つけた「スローサイエンス」の力 小長谷 有紀
はじめに
1 有用性とは何か?
2 人文学は有用か?―― 自分を検証してみると
3 牧畜業から文化が見える
4 トランス・サイエンスにおける人文学
おわりに―― 未来への宿題
第Ⅲ部 創造せよ
第7章 大切なのは価値のイノベーション
―― 経済成長の仕組みとブランド力 吉川 洋
はじめに
1 経済的「価値」とは何か?
2 イノベーションと経済成長
3 日本は新たな価値を生み出せるか?!
おわりに
第8章 IT革命はなぜアメリカで起こったか?
―― イノベーションを生み出す知的土壌 宇野 重規
はじめに
1 人間は合理的ではない
2 アメリカの知的土壌に着目せよ
3 アメリカン・デモクラシー
4 己を信じ、実験せよ
5 プラグマティズムの伝道師たち
おわりに
第9章 日本型イノベーション・システムの再発見
―― フランス人は日本文化に何を見つけたか? 竹内 佐和子
はじめに
1 東西文明の中で日本を眺める
2 日本文化のアヴァンギャルドたち
3 文化的基盤から科学技術への展開
おわりに―― ヒューマニティという価値
第10章 イノベーションは誰のものか?
―― 科学の資金調達と日本の知識戦略 上山 隆大
はじめに
1 科学の成果は公共財か、私有財か?
2 「科学の共和国」アメリカの誕生
3 アカデミアの研究開発戦略
4 科学知識の大転換
おわりに―― 日本の知識戦略を考える
第Ⅳ部 設計せよ
第11章 科学を生かすも殺すも人である
―― イノベーションと労働・組織・社会制度 猪木 武徳
はじめに
1 科学知識はイノベーションをもたらすのか?
2 科学技術は経済を成長させるのか?
3 特許は科学技術開発を促進するか?
4 イノベーションを起こすのは大組織か、小組織か?
おわりに
第12章 科学は市場で社会と対話する
―― 技術を活かす「高質な市場」のつくり方 矢野 誠
はじめに
1 「市場の質」とは何か?
2 日本経済の長期停滞と市場の質
3 市場の質と科学技術開発
4 エビデンス・ベース・ポリシーの時代へ
おわりに―― 技術の「使い手の責任」を考える
第13章 人口減少を乗り越える社会づくり
―― 成長理論から考えるイノベーションと人材活用 青木 昌彦
はじめに
1 経済成長をどのように測るか?
2 経済成長率の日中韓比較
3 人口要因の中期的なインパクト
4 21世紀日本の課題
おわりに―― 科学技術と女性、若者、外国人との新結合
第14章 定常型社会を迎え、日本は何をめざすのか?
―― 成熟と幸福のための科学技術考 広井 良典
はじめに
1 現在という時代をどう捉えるか?
2 「持続可能な福祉社会」をめざす
3 ポスト成長時代の世代間配分
4 ポスト成長時代の科学・技術像
おわりに
座談会 転換期の社会と科学のゆくえ
黒田昌裕・吉川弘之・有本建男・岩野和生・藤山知彦
はじめに
1 時代―― 「グローバル時代」の揺らぎ
2 科学―― 「分析」から「設計」へ
3 政策―― 科学と社会の対話を促す
4 社会―― ITが変える、ITが変わる
5 教養―― 専門を超えて世界/社会を考えるために
おわりに
政策セミナー「21世紀の科学的知識と科学技術イノベーション政策」開催一覧