紹介
「雇用ポートフォリオ」はなぜ生まれたのか?
雇用流動化の契機とされてきた日経連報告書『新時代の「日本的経営」』刊行に至る証言をまとめたオーラルヒストリー。
1990年代、グローバル化に伴い経営環境が激変する中で、日本企業はいかに生まれ変わろうとしたか。
1995年に日経連が刊行した報告書『新時代の「日本的経営」』について当事者が語る初めての単行本。報告書作成に携わった5名と、被雇用者側である連合関係者1名の計6名を対象としたオーラルヒストリー研究である。
報告書は、雇用形態の流動化を肯定し、これを促進した契機と位置づけられて批判の対象となってきたが、インタビューからは、報告書作成側の意図、反響への対処などを通して、当時の社会で何が議論されたかだけでなく、何が議論されず日本の雇用政策において積み残された課題となったかがあぶり出される。報告書発表から20年を迎えるにあたり、注目すべき1冊である。
目次
はじめに
解題 ―― 本書の概要とその意義
第一章 「新日プロ」の起源と背景 ―― 成瀬健生氏(第一回)
日経連での業務を振り返って
日経連設立の経緯
日経連主要部局の役割
本部と地方の経営者協会の関係
職務分析センターと能力主義管理研究会
『新時代の「日本的経営」』プロジェクト
第二章 ポスト「年功賃金」を考える ―― 小柳勝二郎氏
プロジェクト参画までのキャリア
『新時代の「日本的経営」』プロジェクト始動
報告書の執筆過程
報告書刊行後の反響
第三章 「人間尊重」の継承と改革 ―― 福岡道生氏
『新時代の「日本的経営」』プロジェクトの起源
プロジェクトの発足
プロジェクトの推進
報告書の提言内容について
第四章 「終身雇用」の脱神話化 ―― 荒川春氏
日経連での略歴
『新時代の「日本的経営」』プロジェクト
「雇用ポートフォリオ」について
第五章 報告書の作成とフォローアップ調査 ―― 樋渡智子氏
日経連での経歴
『新時代の「日本的経営」』プロジェクト
第六章 雇用ポートフォリオとは何だったのか ―― 成瀬健生氏(第二回)
『新時代の「日本的経営」』執筆者の構成
「雇用ポートフォリオ」の誕生
報告書のとりまとめ過程
報告書の反響
第七章 労使関係から財務の論理へ:労働組合の視点 ―― 鈴木不二一氏
連合総研での略歴
連合と日経連の関係
『新時代の「日本的経営」』について
「雇用ポートフォリオ」について
日経連と経団連の統合について
参考文献
索引