紹介
現世に生きる、神ならぬ人びとへのまなざし
徳川家康から福澤諭吉へ。日本の公共哲学、その淵源と持続を歴史に読む
▼本書は、戦国時代の混乱を武力を以て終わらせた徳川家康の統治思想が、日本の公共哲学の原型であるという意表を突く主張から始まる。そして、家康に淵源し、以後250年に及ぶ平和と安定を支えた公共哲学を、鈴木正三、『葉隠』、太宰春台、海保青陵、そして福澤諭吉の思想に探ってゆくのである。
西欧のヒューマニズムが基づく軍事と土地所有ではなく、軍事と商業。すなわち、武士と商人の相互性と、両者のバランス感覚としてのヒューマニズム、そしてそれが育んだ自生的秩序が日本の公共性の核心にあることを、「慈悲」と「正直」を鍵語に解き明かす。現代の公共哲学に歴史からの再考を迫る、知的冒険の書である。
目次
はじめに
第1章 日本のヒューマニズムはどこから来たか
第1節 はじめに
第2節 マキァヴェリアン・モーメントと君主的ヒューマニズム
第3節 君主的ヒューマニズムという着想を得たきっかけ
第4節 徳川社会について
第2章 君主的ヒューマニズムと徳川期の公共思想
第1節 はじめに
第2節 君主的ヒューマニズムと市民的ヒューマニズム
第3節 エートスとイデオロギー
第4節 丸山眞男『日本政治思想史研究』について
第5節 ヘルマン・オームス『徳川イデオロギー』について
第6節 おわりに
第3章 武士道について
第1節 はじめに
第2節 新渡戸稲造『武士道』について
第3節 山本常朝『葉隠』について
第4節 おわりに
第4章 武士道と慈悲の観念
第1節 はじめに
第2節 『甲陽軍鑑』と『家康の武士道』
第3節 『東照宮御遺訓』について
第4節 慈悲と平等主義(あるいは現場主義)について
第5節 覇道の文脈における慈悲の観念
第6節 鈴木久三郎の死を賭した諫言
第7節 夏目次郎左衛門吉信と「死習い」の奉公
第8節 家康の慈悲と鳥居氏三代の奉公
第9節 おわりに
第5章 商人道における正直、その思想的系譜
第1節 はじめに
第2節 公共哲学的問題関心
第3節 世俗倫理としての正直=庶民の自由の観念
第4節 おわりに
第6章 富国強兵と枢密賞
第1節 はじめに
第2節 横井小楠の富国論
第3節 太宰春台と海保青陵
第4節 海保青陵の富国論
第5節 枢密賞の概念
第6節 おわりに
第7章 福澤諭吉とマシュー・ペリー
第1節 はじめに
第2節 「幕末英字新聞訳稿」と「ペルリ紀行抜粋訳」
第3節 外国人が日本をみる視点
第4節 日本文明を再認識するという視点
第5節 おわりに
第8章 福澤諭吉の公共思想
第1節 はじめに
第2節 福澤諭吉と帝国議会
第3節 『文明論之概略』、『分権論』、『丁丑公論』、『帝室論』
第4節 「国会の前途」と日本の公共秩序
第5節 おわりに
おわりに
参考文献
索引