紹介
フェリスと出会ってなぜ書けたのか。あの恋は本当に恋だったのか。
『判決』の、『変身』の秘密は、彼らの〈恋〉にある。
スリリングな展開でカタルシスに導く、強いカフカ!
1912年9月20日、カフカはフェリスに最初の手紙を送る。2日後、一晩で一気に『判決』を書く。数日後、長編『失踪者』に取りかかる。約1ヶ月半で第6章まで書き進む。11月下旬、中断して『変身』を書き始める。虫になった男の話は2週間で書き終えられる。
おそるべき集中力で創作を続けた晩秋の2ヶ月半。
29歳の彼は、同時にその夏に出会った女性フェリスにも大量の手紙を書いていた。
カフカは恋に落ちた。だから、書けた――。人々はこう理解してきた。しかし、それは本当に恋だったのか。甘い熱い感情の高ぶりだったのか。なぜ、そのとき書けたのか。なぜ、書いたのか。
『判決』の、『変身』の謎を解く鍵は、彼らの〈恋〉にある。作品の秘密は、彼と彼女の秘密である。
スリリングな展開でカタルシスに導く
強いカフカ!
目次
プロローグ
第1章 手紙と嘘
手紙とタイプライター
不信な手紙
嘘のうまい男
大胆な男と商売上手な娘
カネッティの解釈
暴力のような手紙
「あなたの物語」
『変身』 と誕生日
第2章 〈弱い〉父とビジネス好きの息子
手紙としての作品
『父への手紙』 と 『判決』
〈弱い〉父
頼りになる息子
ビジネスへの関心
ブロートの理解
経営者カフカ
ビジネスマンの親戚たち
『商人』 の世界
『観察』 と 『ある戦いの記録』
『詐欺師の正体を暴く』
第3章 結婚と詐欺
〈性〉の 「実存」
結婚と打算
「資産家の娘」
『独身者の不幸』
妹たちの結婚
日曜日の事件
語りの視点
『判決』
欺くことと文学
『失踪者』
誠実と不実
『変身』
エピローグ
あとがきらしくないあとがき
註
本書で使用したカフカ・テクスト