目次
はじめに 浜 日出夫
第1章 戦後被爆者調査の社会調査史 有末 賢
はじめに
一 戦後社会科学と社会調査
二 被爆者調査の戦後史
三 慶應義塾大学と原爆調査――米山桂三・中鉢正美・川合隆男・
原田勝弘
四 厚生省昭和40年調査――中鉢正美グループと石田忠グループ
1 中鉢正美グループ
2 石田忠グループ
五 R. J. リフトンによる心理学的分析
六 90年代以降の記憶をめぐるポリティックス
七 記憶の表象と場所性
おわりに―――社会調査と被爆者の声
第2章 中鉢正美「生活構造論」の展開と二つの「被爆者生活史調査」
竹村 英樹
はじめに
一 被爆者調査以前──生活構造論の形成まで
1 生物学から経済学へ
2 家計研究から生活構造論へ
二 二つの「事例調査」―─被爆者調査における「生活史調査」の試み
1 「66年事例調査」実施の経緯
2 出発点としての「66年事例調査」
3 被爆者生活の構造と社会階層
――「66年事例調査」から「75年事例調査」へ
三 「中鉢正美原爆関係資料」から「事例調査」を読み直す
1 「中鉢資料」の概要
2 「66年事例調査」および「75年事例調査」の関係資料
3 生活史調査の作品化――未公表原稿「広島のある町、その被爆
三〇年」
4 証言活動や復元運動への応答――未公表原稿「被爆文化」
四 中鉢正美の研究活動と被爆者調査の展開
おわりに
1 まとめ――各節の振り返り
2 中鉢による「被爆者調査」の今日的意義
第3章 「長崎」をめぐる記憶の回路
「企業と原爆」調査の検討を中心に 高山 真
はじめに
一 長崎原爆調査における「企業と原爆」の位置と意義
1 「長崎」を語ることの困難
2 「浦上」、「三菱」そして「死者」という3つの問題領域
二 被爆者カテゴリーの無効化
三 『原爆前後』をめぐって
結びにかえて
第4章 爆心地復元調査が描いたコミュニティ
湯崎稔と集団参与評価法 松尾 浩一郎
一 社会踏査の系譜と湯崎稔
1 社会調査の1960年代
2 湯崎稔と原爆研究・被爆者研究
3 中山町での追跡調査
4 中山町調査から爆心地復元調査へ
二 地図上にまちを復元する――調査者としての市民
1 NHKとの連携の成立
2 復元地図づくりと死者とのつながり
3 集団参与評価法
4 『原爆爆心地』への結実
三 爆心地復元調査の拡大と挫折
1 市民運動としての高揚
2 NHKとの連携関係の解消
3 行政事業化と調査の変質
四 考察――社会踏査の可能性
1 市民的立場と社会調査
2 点から面へ――時間・空間・場所
第5章 慰霊行為としての原爆被災復元調査
長崎市民・行政による爆心地復元調査活動のはじまりとその展開
深谷 直弘
はじめに
一 爆心地復元運動から原爆被災復元調査へ
二 原爆被災復元調査の概要と調査プロセス
1 問題意識と目的
2 調査項目と調査の進め方
3 調査プロセスと爆心地復元の困難――活動初期の取り組みから
三 慰霊行為としての爆心地復元調査活動
四 被爆者調査史の中の長崎爆心復元調査
――広島復元調査・一橋大原爆被害調査との比較から
1 長崎方式と広島方式
2 一橋大学グループの調査との比較
おわりに
第6章 原爆問題と被爆者の人生に関する研究の可能性
R.J.リフトンのヒロシマ研究とそれに対するさまざまな反応を
めぐって 八木 良広
はじめに
一 R. J. リフトンのDeath in Life
1 被爆者の「心の傷」研究としてのDeath in Life
2 リフトンの広島との出会い
3 Death in Life の概要
二 リフトンは被爆者の現実を無視したのか
1 Death in Life に対する様々な反応
2 被爆者は「生きる屍」か
三 リフトンのヒロシマ研究からの示唆
1 Death in Life のその後
2 「ヒロシマ博士」と「われわれ意識」
おわりに
第7章 広島修道大学「被爆体験」調査における〈生者と死者〉
死者と向き合う二つのあり方 木村 豊
はじめに――問題の所在
一 『生者と死者』 再考
1 メモリアル・デーの〈生者と死者〉
2 メモリアル・デーの〈時間―空間〉関係
3 『生者と死者』へのある書評
二 広島の〈生者と死者〉
1 ヒロシマの〈生者と死者〉
2 ヒロシマの〈時間―空間〉関係
3 二つの〈生者と死者〉
三 東京から広島へ
1 東京の〈生者と死者〉
2 広島の〈生者と死者〉再考
おわりに
第8章 被爆体験をめぐる調査表現とポジショナリティ
なんのために、どのように表現するのか 小倉 康嗣
一 被爆者調査のむずかしさ
二 被爆体験の構築と表象をめぐる格闘
1 被爆者の立場に立って飛躍する――石田忠・一橋大学グループ
2 生活構造として表現することの葛藤――中鉢正美・慶應義塾大学
グループ
3 被爆者市民の協働を媒介する――爆心復元調査
三 陳腐化・風化への抗い
1 知の性質への着目による脱構築――米山リサ
2 身体に生起する亡霊=トラウマの感染との対話――直野章子
四 関わりの構築へ
1 体験することの生成と連鎖――高校生が描く原爆の絵
2 社会科学者はどこに立ち、なにをすべきなのか
結びにかえて――「われわれはすべてヒロシマの生存者である」
浜 日出夫
被爆者調査史年表
被爆者調査史文献リスト
事項索引
人名索引
執筆者紹介