紹介
日本統治下、台湾・南方の<日本語>によるクレオール文学論。▼植民地化によって、標準中国語、台湾語、日本語などの複数の言語が混在し、文化的・言語的クレオール化(文化・言語の接触、複合)が進んだ大日本帝国統治下の台湾・南方における日本語文学を検証。「内地」の作家、台湾育ちの「外地」の作家、日本語で教育された台湾人作家。この3つの視点を併せることで、間文化の複合・言語接触の中、というべき空間となった植民地体験の実相を浮上させる。▼文芸批評と歴史社会学を往還し、またポストコロニアル批評を相対化しながら、当時の作品の中に台湾人独自の強靭なクレオール的アイデンティティ戦略を読み込む。日本文学史の空隙を衝く、渾身の力作。
目次
日本語版に寄せて 序 ポストコロニアルの屈折——台湾第1部 日本人が描いた〈帝国〉 第1章 「南方」の系譜 第2章 「土人」の懐柔 第3章 南方の作家たち第2部 在留日本人のアンビヴァレンス——西川満 第4章 西川満と『文芸台湾』 第5章 ジェンダー、修史、ロマンティシズムへの関心第3部 台湾人が描いた〈帝国〉 第6章 言語政策と文化的アイデンティティ 第7章 郷土文学派の対応——楊逵と呂赫若 第8章 皇民文学派——周金波と陳火泉 結 日本語文学としての植民地文学の回復