sugarさんの書評 2020/10/17
NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘
マーカス・バッキンガム(著)アシュリー・グッドール(著)櫻井祐子(翻訳)
よくある啓発本、ビジネス本かと思ったらうれしい意味で大きく裏切られた。
内容は刺激的でかつ、的を射ており、まさに実感に沿っている。
これまで読んでいた啓発本、ビジネス本とは一線を画す内容で、非常に面白かった。まさに良書である。
まず最初にビジネスにおける常識に疑問を呈し、それらを過去の膨大なアンケート結果と照らし合わせて結論を導く。過去、読んだビジネス本のようにあれも出来なければならない、これも考えなければならないなど完璧なビジネスマンを求めては一切ない。
個人個人の特性に合わせた働き方、考え方を示している。
いうなれば、過去のビジネス本は理想を提示し、目標とする。それに向けて過不足を指摘し、それらを埋めるべくステップアップを描く。
一方、この本では個人にスポットを当て、そこからスタートし、足りないものは得意な人にやらせるべきであると説く。
そのため、リーダーシップっというスキルはないとまで言い切る。
リーダーシップは人によって異なり、つまるところ、リーダーシップとはフォロワーがいることであると再定義し、そしてフォロワーは尖りに着いていくとしている。
ウソ#1 「どの会社」で働くかが大事 → 「どのチーム」で働くかが大事:そこが実際の仕事が行われている場所だから
ウソ#2 「最高の計画」があれば勝てる → 「最高の情報」があれば勝てる:計画は世界の動きについていけないから
ウソ#3 最高の企業は「目標」を連鎖させる → 最高の企業は「意味」を連鎖させる:集団としての価値観を誰もが知りたがっているから
ウソ#4 最高の人材は「オールラウンダー」である → 最高の人材は「尖っている」:個性は仕様であってバグではない
ウソ#5 人は「フィードバック」を求めている → 人は「注目」を求めている:最高の自分を認識してほしいから
ウソ#6 人は「他人」を正しく評価できる → 人は「自分の経験」なら正しく評価できる:それしか頼れるものがないから
ウソ#7 人には「ポテンシャル」がある → 人には「モメンタム」がある:それぞれの人が違う方法で世界を渡っていくから
ウソ#8 「ワークライフバランス」が何より大切だ → 「仕事への愛」が一番大切:それが仕事の本当の目的だから
ウソ#9 「リーダーシップ」というものがある → 我々は「尖り」についていく:尖りは確実性をくれるから
最高の計画はすぐに役に立たなくなる。
では、どうすれば良いのか
1.できる限りの多くの情報を解放する
2.チームメンバーを注意深く観察し、彼らがどのデータを役立つと感じるか知る。
どうやってデータを正確にするか、つまりどうやってノイズからシグナルを抽出するか
3.データの意味づけはチームメンバーに任せよう
つまり、最高の計画ではなく、「最高の情報」が必要である。
目標も同様で(3.最高の企業は「目標」を連鎖させる)
企業にはたくさんの目標がある。
目標設定法だけでも、SMART、BHAG、KPI、OKR。
新しい目標設定を作っては、連鎖させようとがんばっている。
大事なことは、目標が役に立つかどうか、
あなたがより大きな貢献をする助けになるかどうかを
判断する唯一の基準は、あなたが自発的に設定したかどうか?
意味と目的がわかれば人は動く
最高の企業は「意味」を連鎖させる
4.最高の人材は「尖っている」:個性は仕様であってバグではない
会社間よりも同じ会社内のほうが、経験のばらつきが大きい
業種にかかわらず、最もエンゲージメントが高いのは、5つのチームで仕事をしている人である
「目標が生産性を上げた」エビデンスはない
何かを測る場合には、適切な測定方法を選ぶために、まず測ろうとしている対象が状態なのか、特性なのかを知っていなくてはならない
5.人は「注目」を求めている:最高の自分を認識してほしいから
人は「フィードバック」を求めていると思われているが、
実際、人は「注目」を求めている。
最近では疫学や計量心理学、統計学などの分野で、
心臓病と鬱、自殺のずば抜けて強力な予測因子として、孤独が特定されている。
人間は他人から注目されないと弱る生き物なのだ。
安心でき、批判を受けない環境で注目を注がれれば、
人は自然とそこにとどまり、楽しんで働こうとする。
チームの好業績を生み出すうえで、ポジティブな注目はネガティブな注目の30倍も効果がある。
ポジティブ対ネガティブの理想的な比率は3対1から5対1程度、つまりネガティブなフィードバック1回につき、強みに注目するフィードバックを3回から5回。
それでも、人はいくら指摘されても、助言されても伸びない。
人は、誰かにアドバイスをすることを好むが、実際にそのアドバイスは無駄になることが多い。
人は自らひらめき、考えないと結局成長しないのだ。
ひらめきが、意味づけを助け、目の前の課題を見るレンズとなり、前進を導く指針になる。
このひらめきこそが学習であり、それは外側から促すことはできても、内側からしか生み出すことはできない。
相談を受けたら、次の三つを一緒にやろう
1.「今、うまくいっていること」を3つ挙げさせる
2.「過去」に同じようなことがあったか探す
3.「何をやる必要があるだろう?」と確認する
これから上位職で働くもの、現在も働いているもの、もちろん新人も
つまり、全社員必読の内容となっている。
この書評がいいと思ったら、押そう! »
いいね!